犬の鼻水の原因とは?気になる病気の症状や治療法を獣医師が解説

最終更新日:2024年07月09日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

犬の鼻はおおよそ湿っているものですが、通常であれば鼻水を垂らすことは案外ないのです。犬が鼻水を垂らす原因としてどんな病気が考えられるのでしょうか。また、処法や予防法などを獣医師さんに伺ってみました。

たかが鼻水と思っていても、実は何かの病気のサインかもしれません。愛犬のいつもと違う様子を感じたら、獣医師さんに相談しましょう。

犬の鼻水の原因とは?気なる病気の症状や治療法を獣医師が解説

犬が鼻水を垂らす原因は?

犬が鼻水を垂らしていたら注意!

犬の鼻が湿っているのは、みなさんご存じでしょう。これは湿らせた鼻で空気中の匂いの分子を吸着しやすくして、嗅覚に役立てているのです。しかし、犬の鼻水となると案外見たことがないかもしれませんね。犬は少量の鼻水であれば鼻を湿らせる際に、なめとってしまうからです。

飼い主さんが愛犬を見て、「鼻水が垂れてるな」と思ったら、相当量の鼻水が出ていることが考えられます。そして、その背景には何らかの病気が原因になっている可能性がありますので注意が必要です。

生理的な鼻水は心配いらない

犬が鼻水を垂らしたからといって、必ずしも病気が原因ではなく、生理的な反応の場合もあります。例えば、鼻の中に入ったごみを洗い流そうとして鼻水が増える場合があります。また、冷気が肺に入らないように鼻の中で空気を温める際、鼻水の量が増えることもあります。

鼻水が透明でさらさら、呼吸や全身の状態がいつもどおりであれば、生理的な鼻水である可能性が高いため、様子を見ていいでしょう。

犬の鼻水を引き起こす病気とは?

犬の鼻水を引き起こす病気とは

犬の鼻水が生理的な反応であれば、症状は一時的です。しかし、それが継続したり、ほかの症状を併発するようであれば、何らかの病気が考えられます。

ケンネルコフ

生後6週から6か月の子犬の場合は、ウイルスや細菌などによる感染症で、ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)が代表的です。鼻水のほかに乾いた咳の発作や発熱、食欲不振などの症状が現れます。すぐに治療を始めれば1週間程度で完治しますが、治療が遅れると重症化して命にかかわる危険性があります。

ケンネルコフは、接触感染や飛沫感染をするため、ほかの犬にうつる可能性があります。原因となるウイルスや細菌は、主に犬ジステンパーウイルスや犬ヘルペスウイルス、パラインフルエンザウイルス、気管支敗血症菌(ボルデテラ菌)、マイコプラズマ属菌などです。これらは、人にうつることはありません。

成犬や老犬の場合は、鼻腔内腫瘍や歯周病、肺水腫などが挙げられます。

鼻腔内腫瘍

鼻腔内腫瘍は、鼻水のほかに、くしゃみや鼻血などの症状が見られます。多くが悪性であり、進行が早いため、早期発見・早期治療が重要です。

犬の鼻腔内腫瘍の原因と症状、治療法について

歯周病

重度の歯周病では、炎症によって犬の口と鼻を隔てている骨に穴が開き、鼻の中にも炎症が起こります。これによって鼻水が出ますが、最初はさらさらとしていますが、徐々に膿(うみ)が混ざりネバネバとした鼻水に変わり、鼻血やくしゃみなども出ます。

犬の歯周病の原因と症状、治療法について

肺水腫

犬の肺水腫は、心臓病や肺炎などが原因で発症し、呼吸困難、口や目の粘膜が白っぽくなる(チアノーゼ)といった症状が現れます。進行すると血の混じった泡状の鼻水が出ます。

犬の肺水腫の原因と症状、治療法について

ほかに年齢に関係なく花粉症のようなアレルギーによるものも挙げられます。

犬が鼻水を垂らし、こんな症状を併発したらすぐ病院へ

犬が鼻水を垂らし、こんな症状を併発したらすぐ病院へ

病気が疑われ、受診すべき犬の鼻水

次第に鼻水に色や臭いがつくようになる、呼吸の状態がおかしくなるなど、鼻水のほかに併発する症状が見られれば、以下に挙げるような病気が疑われるため、様子を見ようとせずに動物病院を受診してください。

  • 鼻水が垂れるほどたくさん出る場合は、アレルギーの可能性
  • 膿が混じる、黄色や白・黄緑のネバネバした臭いのある鼻水が出る場合は、感染症の可能性
  • 鼻血(鼻水に茶色い血・血が混じる)と、くしゃみが出る場合は、鼻腔内腫瘍や歯周病の可能性
  • 呼吸がいつもと違い、苦しそうにしている場合は、肺水腫の可能性

特に、子犬が感染症によって緑色の鼻水を出す、元気消沈や食欲不振の場合や、老犬が鼻血を出し、鼻腔内腫瘍が疑われる場合は、命にかかわる危険性があるため、すぐに動物病院を受診してください。

犬の鼻水の対処法

犬の鼻水の治療法と拭き取り方

治療法

犬の鼻水の治療方法は、原因となる病気によって異なります。

  • 感染症、細菌やマイコプラズマ属菌の場合は、抗生物質を投与する
  • ウイルスが原因の場合は、特効薬がないため、咳止めの投与する(対症療法)
  • 鼻腔内腫瘍の場合は、放射線治療が最も効果的だが、病院が限定され、費用がかさむ。そのため、症状を緩和させる目的で腫瘍を取り除く場合がある
  • 歯周病の場合は、全身麻酔下で抜歯や歯石除去の手術を行う
  • 肺水腫の場合は、原因となる病気の治療を行いながら、酸素濃度や温度、湿度が管理されたICU(集中治療室)に入院する
  • アレルギーの場合は、ステロイドや抗生物質の投与のほか、アレルギーを引き起こす抗原を少しずつ体に投与して体質を改善する減感作療法(げんかんさりょうほう)を行う

治療中の食事や注意点

愛犬に食欲があるようであれば、普段どおりで問題ありません。ただし、鼻が詰まっていると匂いがわからず食欲が落ちる場合があるため、フードを電子レンジで軽く温め、匂いを強めたり、より匂いが強いフードに変えてみたりしてください。

また、重度の歯周病の場合は、痛みでドライフードを食べられない可能性があるため、ぬるま湯でふやかしたり、ウェットフードに変えたりするといいでしょう。

鼻腔内腫瘍で全身状態が悪く、食欲が落ちている場合は、少量でも栄養豊富な療法食がお勧めです。動物病院で獣医師に相談してください。

感染症の場合は、ほかの犬との接触を避けましょう。また、症状が治まっても再発や慢性化のおそれがあるため、必ず獣医の指示どおりに投薬を続けてください。

犬の鼻水の拭き取り方

家庭内で犬の鼻水は拭う場合は、ティッシュやガーゼなどでやさしく拭き取ってください。固まっている場合はゴシゴシこすらず、40℃くらいに温めた蒸しタオルでふやかしながら拭き取るようにするといいでしょう。多頭飼いの場合は、ほかの犬が鼻水の拭き取りに使用した物に触れないよう十分注意してください。

犬の鼻水の予防

生理的な鼻水は、ほこりや冷気が原因なので、部屋の中をきれいにし、寒い日は部屋を加湿して暖かくしましょう。

感染症の場合は、感染している犬に接触しないようにしてください。感染症を引き起こす一部のウイルスは混合ワクチンで予防できるので、予防接種も大切です。さらに、免疫力が落ちていると感染しやすいため、適度な運動やバランスの取れた食事を心がけ、犬にストレスがかからないようにしましょう。

歯周病は、歯磨きによってある程度予防できます。できれば毎日食後に歯磨きをして、高齢犬の場合は、定期的に歯の状態を病院で確認してもらうと安心です。

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犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
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サ行
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ハ行
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ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。