犬の鼻血の原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説
最終更新日:2024年07月09日
本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。
犬が鼻血を出してしまう原因としてどんな病気が考えられるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。
犬にとって鼻血を出すこと自体が異常なことであり、多くの場合、何かの病気がその背景にあります。また、急を要すること多いため、様子を見ようとせず、すぐに獣医師さんに相談しましょう。
犬の鼻血について
―人間の場合は、鼻血が出ることがあっても、多くの場合、しばらくすると治ってしまいますが、犬の場合は、どうですか?
犬は人間と違い、一過性の鼻血が見られることはあまりありません。基本的に何かしらの犬に病気があり、その結果として鼻血が出ると考えられます。
また、病気の種類や重症度によって犬に鮮血が出たり、鼻水混じりの薄いピンク色だったりと、鼻血の種類もさまざまです。血の色が濃くなるほど出血量は多いため、緊急性が高くなりますが、色の薄い鼻血であっても重大な病気の初期症状である可能性があります。
犬の鼻血の原因として考えられる病気とは?
―犬の鼻血の原因としてどんな病気が考えられますか?
鼻腔内腫瘍による鼻血
くしゃみや鼻水から始まり、鼻から鮮血が出ることも
犬の鼻の中にできる腫瘍が原因となって鼻血が出るケースです。特に、高齢犬で鼻血が出た場合には腫瘍の可能性が高くなります。鼻の中には、腺癌や扁平上皮癌、軟骨肉腫、未分化癌、骨肉腫、未分化肉腫リンパ腫といった腫瘍ができるという報告がありますが、これらはいずれも悪性腫瘍です。
鼻腔内腫瘍の症状
最初は、くしゃみや鼻水が出て、そこに鼻血が混ざる程度ですが、病気が進行すると鮮血が出るようになります。腫瘍が大きくなるとマズルという鼻の周りが腫れてくることがあります。また、初期には左右どちらかの腫瘍ができた鼻から鼻血が出ますが、腫瘍は骨を侵していくため、やがて両方の鼻から鼻血が出るようになります。レントゲンで診断できることもありますが、確定のためには多くの場合、CT検査が必要です。
鼻腔内腫瘍の治療法
鼻腔内腫瘍の治療には、手術による腫瘍摘出、放射線療法、抗がん剤治療があり、現在では放射線療法が推奨されています。また、この病気は進行が速く、生活の質が大きく低下してしまうため、早期発見と早期治療がとても大事です。
詳しくは、「犬の鼻腔内腫瘍の症状と原因、治療法について」を併せてご覧ください。
歯周病による鼻血
歯肉の炎症が鼻にまで広がり鼻血が出る
歯周病が進行すると、鼻血が出ることがあります。鼻腔内腫瘍と同じく高齢犬でしばしば見られますが、若くても歯周病が重度であれば鼻血が出る可能性はあります。
歯周病になると、歯周ポケットの中に作られた歯石の細菌が奥に進んでいき、歯の付け根にまで炎症が起こるようになります。そして、瘻管という膿の通路ができてしまい、それが鼻とつながってしまうと鼻血が出るようになるのです。
歯周病の原因
デンタルケアが十分でないと、加齢に伴って歯に歯石が付着していきます。歯石は歯垢が固まって形成されるものですが、その成分の多くは口の中の細菌です。その細菌が歯肉に入り込んで歯肉炎を起こし、それが進行して歯を支えている歯槽骨まで破壊されてしまう状態を歯周炎と呼びます。歯周病とは歯肉炎と歯周炎の総称です。
歯周病の治療法
歯周病は細菌が原因ですが、薬で抑えるのは根本的な治療にならないため、犬に全身麻酔をかけた歯石除去や、口と鼻の間が開いてしまっている場合は原因になっている歯の抜歯が必要です。そして、歯を抜いた部分をきちんと縫い合わせて閉じる処置を行います。同時に、犬の口の中全体の歯石除去も行うため、その後、自宅できちんとデンタルケアができれば再発を防止できます。
詳しくは、「犬の歯周病の症状と原因、治療法について」を併せてご覧ください。
歯科治療が補償の対象になっていないペット保険が多くありますが、 PS保険では歯科治療も補償の対象となっているので安心です。
注)予防を目的とした費用は、補償の対象外です。
凝固異常による鼻血
血液が固まりにくくなるような病気になると、犬はちょっとした刺激で出血しやすく、血が止まりにくくなります。その結果として鼻血が出るようになることがあります。
凝固異常に見られる症状
このような病気では、犬に鼻血以外にも内出血や血尿、血便も見られることがあります。また、ワクチン接種や採血をした場所から出血して止まりにくくなることもあります。血小板減少症やフォンウィルブラント病といった病気が知られています。
これらは、血液自体が固まりにくくなる病気のため、しばしば両方の鼻から出血します。治療は原因によって異なりますが、基本的には生涯にわたる内科治療が必要になります。また、出血が多く命にかかわるような貧血状態になってしまった場合は輸血を行います。
鼻炎による鼻血
ウイルスや細菌、寄生虫といった微生物による感染症や、アレルギー性の鼻炎でも犬は鼻血を出す場合があります。鼻炎では、鼻血だけが出ることはあまりなく、くしゃみや鼻水が出るようになり、重症化すると鼻血が出るようになります。
鼻炎の治療法
感染のように原因がはっきりしている場合は、細菌なら抗菌薬、寄生虫なら駆虫薬といったような原因を除去する治療を行います。また、炎症を抑えるために抗炎症剤も使用します。
詳しくは、「犬の鼻炎の症状と原因、治療法について」を併せてご覧ください。
異物による鼻血
病気ではありませんが、鼻の中に異物が入り込んでしまい、それが鼻腔粘膜を刺激して鼻血が出ることがあります。散歩中にクンクンと匂いをかいでいるときに異物を吸い込んでしてしまうというケースが多く、ノギのような植物が原因になることがあります。この場合、異物を除去できれば完治します。
犬の鼻血で、こんな症状ならすぐ病院へ
心配のいらない犬の鼻血の症状
―犬が鼻血を出しても元気そうなら、様子を見ていても大丈夫ですか?
犬にとって鼻血が出るということ自体が基本的に異常なのです。そのため、元気や食欲に問題がなくても、鼻血が出るようであれば動物病院を受診してください。
まれではありますが、遊んでいるときに鼻の周りを強くぶつけてしまい、そのあとに鼻血が出たという場合は、すぐに鼻血が止まれば様子を見ても問題ないと思われます。
受診を強く勧める犬の鼻血の症状
―併発するそのほかの症状を教えてください。
多くの場合、くしゃみや鼻水が出ます。そのほか、元気や食欲がなくなる、呼吸が苦しそうになる、鼻血以外の出血や内出血が見られるようであれば、できるだけ早く受診したほうがいいでしょう。
犬の鼻血の止め方、対処法
自宅で対処しようとせず、すぐ病院へ
―犬が鼻血を出したら、まず家庭内でどう対処すればいいのでしょうか? 鼻血の止め方を教えてください。
家で対処せずに動物病院を受診することが原則です。病院に行くまでの間、マズルを保冷剤のようなもので冷やすと、一時的に血管が収縮して鼻血が治まる可能性があります。ただし、長時間密着させていると低温やけどを起こす危険があるため、冷えてきたら離し、少ししたら、また冷やすというように対処してあげてください。
―受診に際して、飼い主がすべき準備、移動時の注意点などありましたらお願いします。
受診の際に鼻血が止まっていれば通常の移動で問題ありませんが、移動中も鼻血が止まらないようであれば、興奮させたり歩かせたりしないようにしましょう。また、家にいるときの鼻血の状態や量などがわかるように写真を撮っておくことをお勧めします。
お勧めできないNGなケア
―人間の場合は、顎を上げたり、ティッシュを鼻に詰めたりしますが......。
こういった対処は犬にやらないでください。鼻血が止まらない状態で顎を上げてしまうと、血液を誤嚥(誤って喉頭と気管に入ってしまうこと)してしまう危険があります。また、ティッシュを鼻に詰めてしまうと鼻呼吸ができなくなり、呼吸状態が悪化する危険があります。特に短頭種ではそのリスクが大きくなります。
まとめ
人間の場合は、鼻血が出たからといって、すぐに病院に行くことはあまりありません。これは、鼻をほじることや、空気の乾燥や鼻炎による鼻の粘膜のダメージが原因であり、重大な病気ではないケースが多いためです。
しかし、犬の鼻血の原因は、重大な病気であることが多いため、鼻血がすぐに治まったからといって、そのまま放置してしまうと、原因である病気が進行してしまう可能性があります。診断と治療が遅れると、命にかかわる状況になってしまうことはあるため、できるだけ早く動物病院を受診してください。
そのほか気になる犬の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「犬の症状」を併せてご覧ください。
犬の鼻の症状の関連記事
犬種別の保険料
- 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
- ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
- 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
- アーフェンピンシャー
- アイリッシュ・ウルフハウンド
- アイリッシュ・セター
- 秋田
- アフガン・ハウンド
- アメリカン・コッカー・スパニエル
- アメリカン・スタッフォードシャー・テリア
- アメリカン・ピット・ブルテリア
- アメリカン・フォックスハウンド
- アラスカン・マラミュート
- イタリアン・グレーハウンド
- イングリッシュ・コッカー・スパニエル
- イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル
- イングリッシュ・セター
- イングリッシュ・ポインター
- ウィペット
- ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
- ウェルシュ・コーギー・カーディガン
- ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
- ウェルシュ・スプリンガー・スパニエル
- ウェルシュ・テリア
- エアデール・テリア
- オーストラリアン・キャトル・ドッグ
- オーストラリアン・ケルピー
- オーストラリアン・シェパード
- オーストラリアン・シルキー・テリア
- オーストラリアン・テリア
- オールド・イングリッシュ・シープドッグ
カ行
- カーリーコーテッド・レトリーバー
- 甲斐
- カニーンヘン・ダックスフンド
- キースホンド/ジャーマン・ウルフスピッツ
- 紀州
- キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
- キング・チャールズ・スパニエル
- グレート・デーン
- グレート・ピレニーズ
- グレーハウンド
- ケアーン・テリア
- ケリー・ブルー・テリア
- コーイケルホンディエ
- コーカサス・シープドッグ
- ゴードン・セター
- ゴールデン・レトリーバー
- コリア・ジンドー・ドッグ
- コリー
サ行~ナ行
サ行
- サモエド
- サルーキ
- シー・ズー
- シーリハム・テリア
- シェットランド・シープドッグ
- 四国
- 柴(小柴・豆柴も含む)
- シベリアン・ハスキー
- シャー・ペイ
- ジャーマン・シェパード・ドッグ
- ジャーマン・ポインター
- ジャイアント・シュナウザー
- ジャック・ラッセル・テリア
- スカイ・テリア
- スキッパーキ
- スコティッシュ・テリア
- スタッフォードシャー・ブル・テリア
- スタンダード・シュナウザー
- スタンダード・ダックスフンド
- スタンダード・プードル
- セント・バーナード
タ行
- ダルメシアン
- ダンディ・ディンモント・テリア
- チェサピーク・ベイ・レトリーバー
- チベタン・スパニエル
- チベタン・テリア
- チベタン・マスティフ
- チャイニーズ・クレステッド・ドッグ
- チャウ・チャウ
- チワワ
- 狆(ちん)
- トイ・プードル
- トイ・マンチェスター・テリア
- ドーベルマン
- ドゴ・アルヘンティーノ
- 土佐
ナ行
- ナポリタン・マスティフ
- 日本スピッツ
- 日本テリア
- ニューファンドランド
- ノーフォーク・テリア
- ノーリッチ・テリア
ハ行~ワ行・その他
ハ行
- バーニーズ・マウンテン・ドッグ
- パグ
- バセット・ハウンド
- バセンジー
- パピヨン
- ハリア
- ビアデッド・コリー
- ビーグル
- ビション・フリーゼ
- ブービエ・デ・フランダース
- プーミー
- プーリー
- プチ・バセット・グリフォン・バンデーン
- プチ・バラバンソン
- フラットコーテッド・レトリーバー
- ブリタニー・スパニエル
- ブリュッセル・グリフォン
- ブル・テリア
- ブルドッグ
- ブルマスティフ
- フレンチ・ブルドッグ
- ペキニーズ
- ベドリントン・テリア
- ベルジアン・シェパード・ドッグ
- ボーダー・コリー
- ボーダー・テリア
- ポーチュギーズ・ウォーター・ドッグ
- ボクサー
- ボストン・テリア
- 北海道
- ポメラニアン
- ポリッシュ・ローランド・シープドッグ
- ボルゾイ
- ボロニーズ
- ホワイト・シェパード・ドッグ
マ行
- マスティフ
- マルチーズ
- マンチェスター・テリア
- ミディアム・プードル
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- ミニチュア・シュナウザー
- ミニチュア・ダックスフンド
- ミニチュア・ピンシャー
- ミニチュア・プードル
- ミニチュア・ブル・テリア
ヤ行
ラ行
- ラージ・ミュンスターレンダー
- ラサ・アプソ
- ラブラドール・レトリーバー
- レークランド・テリア
- レオンベルガー
- ローデシアン・リッジバック
- ロットワイラー
ワ行
ミックス犬(※1)
- 8か月未満:6kg未満
- 8か月以上:8kg未満
- 8か月未満:6kg以上~20kg未満
- 8か月以上:8kg以上~25kg未満
- 8か月未満:20kg以上
- 8か月以上:25kg以上
※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。