犬の狂犬病の症状と原因、治療法について

最終更新日:2024年07月09日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

狂犬病とは

犬の狂犬病の症状と原因

狂犬病は、狂犬病ウイルスに感染することが原因のウイルス感染症です。病名から犬だけが感染すると思われがちですが、犬だけでなく人間を含むあらゆる哺乳類が感染します。

発症すると、動物も人間もすさまじい神経症状を引き起こし、高い確率で死に至るとても恐ろしい病気です。

世界における狂犬病の発生状況

現在、日本やイギリスなど一部の地域を除いて全世界で発生が見られ、狂犬病による死亡者数は年間でおよそ59,000人にものぼります。

一方、日本は狂犬病の清浄化に成功した数少ない国のひとつで、1957年の感染を最後に、撲滅に成功しました。なお、輸入症例として人間への感染が1970年に1件、2006年に2件、2020年に1件確認されています。

狂犬病の症状

犬の狂犬病の症状

犬が狂犬病ウイルスに感染後、発症するまでの潜伏期間は、2週間~2か月間程度と言われています。発症してからは、前駆期・狂躁期(きょうそうき)・麻痺期(まひき)と症状の進行状況によって3期に分けられています。

前駆期

犬に、性格の変化と行動の異常が見られます。元気がなく不安感を示したり、興奮しやすくなったりする場合もあります。

狂躁期(きょうそうき)

狂犬病特有の興奮性と凶暴化を示します。光や音などの刺激に対して過敏に反応し、少しの刺激でも攻撃してくるようになります。

麻痺期(まひき)

犬の場合、麻痺期の状態になるのはまれですが、元気消失と全身の麻痺による運動失調や嚥下困難(えんげこんなん)、流涎(りゅうぜん:よだれを流すこと)などが見られます。最終的には昏睡状態(こんすいじょうたい)になり、呼吸麻痺により死に至ります。

人間の狂犬病の症状

人間が狂犬病に感染後、発症するまでの潜伏期間は1~3か月程度と言われています。発症してからは、前駆期・急性神経症状期・昏睡期の3期に分けられています。

前駆期

発熱や咬傷部(かまれた傷)の痛み、かゆみ、食欲不振などの症状が犬に見られます。

急性神経症状期

不安感や恐水症状、麻痺、興奮状態になる、幻覚を見るなどの精神症状が犬に見られます。

昏睡期

昏睡状態に陥り、最終的には呼吸障害により犬は命を落とします。

人間の場合、感染しても発症前であれば、潜伏期間中にワクチンを5~6回接種すると発症の予防ができます(暴露後免疫)。また、感染前にワクチンを接種して予防するのも有効です。

犬の狂犬病の原因

狂犬病は、ラブドウイルス科リッサウイルス属の狂犬病ウイルスによる感染症です。

狂犬病に感染している哺乳類にかまれると、狂犬病ウイルスを含む唾液を介して感染します。犬のかまれた部位周囲の筋肉細胞で狂犬病ウイルスが増殖し、末梢神経に侵入します。末梢神経から脊髄や脳に達した狂犬病ウイルスは、神経組織を破壊していき、神経症状を発症します。

人間への感染は犬からのケースがほとんどです。しかし、多くの哺乳類がかかる病気のため、犬以外の動物にかまれた場合でも感染の可能性があります。海外では、犬以外にもキツネやコウモリ、アライグマ、スカンクなどが狂犬病の感染源となる動物として知られています。

犬の狂犬病の治療法

犬の狂犬病の治療法と予防法

狂犬病に感染した犬に対しては、有効な治療はありません。症状が現れてから1週間程度で亡くなります。そのため、狂犬病は感染予防が非常に大切です。

犬の狂犬病の予防法

犬の狂犬病を予防するためには、年一回の頻度で、狂犬病予防ワクチン接種するのが最も有効です。

狂犬病予防法で定められた犬の飼い主の義務

愛犬との安全な生活を守るために、狂犬病の予防としてワクチン接種、愛犬の登録などの義務化されています。

毎年一回の狂犬病予防ワクチン接種を

狂犬病予防ワクチンの接種は狂犬病予防法に定められています。生後91日以上の犬の飼い主さんには、毎年一回、犬に予防接種を受けさせることが義務付けられています。

狂犬病予防ワクチンの接種は、動物病院のほかにも自治体が開催している集団接種でも可能です。集団接種を希望する場合は、自治体の広報やホームページなどを確認しましょう。

また、狂犬病予防ワクチン接種には安全性の高い不活化ワクチンが使用されていますが、副作用として発熱や嘔吐(おうと)、下痢、アナフィラキシー反応などが現れる場合があります。一般的に、アナフィラキシー反応はワクチン接種から30分以内に現れるため、接種後30分ほどは接種場所で様子を見ることをおすすめします。

狂犬病予防ワクチン接種の猶予について

狂犬病予防ワクチン接種は義務付けられているため、免除規定はありません。

ただし、持病があり、ワクチン接種により健康を害する可能性がある犬については、獣医師より「狂犬病予防注射猶予証明書」を発行されると、接種の猶予が認められます。

ワクチン接種以外の義務

狂犬病予防法では、狂犬病予防ワクチンの接種以外にも飼い主さんの義務として、居住している市区町村への飼い犬の登録手続きや、登録すると発行される「鑑札」と「注射済票」の飼い犬への装着も定めています。

今のところ、日本は狂犬病の清浄国ですが、今後も国内に狂犬病に感染した動物が侵入しないという保証はありません。

狂犬病ワクチンを未接種の犬が多くなると、将来的に狂犬病が蔓延する危険性があります。そのため、狂犬病の予防法として、犬への狂犬病予防ワクチン接種やそのほかの義務を守ることは極めて重要です。

厚生労働省HP

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犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。