猫のグルーミング
最終更新日:2024年08月06日
本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。
猫は自分で被毛をなめて毛繕いするのは有名な話です。
猫は一日のほとんどを寝て過ごすといわれていますが、活動時間の4分の1ほどをグルーミングに費やしているといわれています。
このグルーミングは様々な理由があると言われています。
猫のグルーミングの理由などについて紹介します。
舌を使う猫のグルーミング
猫が被毛のグルーミングをする際は舐めるのが一般的です。
例えるならば、舌は猫がグルーミングに使用する道具になります。
猫に舐められたことのある人はわかるとおもいますが、猫の舌はまるでおろし金のようにザラザラしています。
このザラザラの正体は猫の舌に生えている「糸状乳頭」と呼ばれるとても小さい突起物で、舌の先端から口の奥に向かうように生えています。
この構造は口に入れたものを外に逃がさないようにするのにとても役立ちます。
また、元来は獲物の肉を骨からキレイにそぎ落としたりするために有効に使用されていました。猫がごはんのお皿などをきれいになめとるのもこれと同じ原理です。
グルーミングをするときも「糸状乳頭」はとても活躍します。
まず、体毛についたごみや抜け毛などをチャッチして取りのぞいてくれます。また唾液を皮膚に行き渡らせる働きも担っています。
また水を飲むときは舌先を使って、器の水の表面を刺激して持ち上げることで水柱を作りその水柱を口に入れて水を飲んでいます。
猫が自らグルーミングする理由
そもそも猫がグルーミングをするのは本能的なものといわれています。
野生で暮らしていたころは狩りをする時に、獲物に気づかれないように体を舐めることで自分の匂いを消していました。
人に飼育されるようになってからも猫がグルーミングを行うのには様々な理由があります。
まずは体温調節です。
猫は犬と同じように汗腺がほとんどありません。
犬はパンティングを行うことで体温調節を行っていますが猫は毛を舐めることで皮膚に付着した唾液を気化させ、その気化熱を利用して体温を下げているという説もあります。
また、冬は舐めることで体毛の間に空気を含めさせ、ふっくらさせることによって保温をして体温を内に閉じ込める効果も期待できると言われています。
もちろん、きれいにするための意味もあります。
体毛についたホコリやゴミなどを取り除いたり、不要な毛を取ることで毛玉の予防にもなったりします。さらには猫の唾液には殺菌作用があるため皮膚炎の予防の意味もあると言われています。
他にもコミュニケーション方法として行います。一人で行うグルーミングは『セルフグルーミング』というのに対して『アログルーミング』と呼ばれる仲の良い猫同士のみが行うコミュニケーションがあります。
アログルーミングは基本的にセルフグルーミングでは舐められない箇所を舐めあうことが多く、基本はメス同士かオスとメスです。
オス同士で行うことはほとんどありません。
オス同士で行うアログルーミングは珍しいのでとても仲が良い証拠になりますね。
他にもちょっとびっくりした時や滑って転んだ、着地に失敗したなどのかわいらしい失敗をした時にも何事もなかったかのようにペロペロし始めることもあると思います。
これは転位行動で、一時的に感じたストレスを発散させる、あるいはびっくりした気持ちを落ち着かせるリラックス目的で行っているといわれています。
過剰なグルーミングは猫からの危険信号
猫がグルーミングを行うのは普通の行為なのですが、頻度には注意してあげてください。
グルーミングをしすぎて一部が脱毛してしまっている場合はストレス過剰な場合が考えられます。
特に多いのは環境の変化です。
引っ越しや周りの騒音がひどくなったなど、また猫は鼻がよくきくので芳香剤の匂いが変わったなどの微細な環境の変化が原因なことも考えられます。
もちろん、皮膚病の場合もあり、痒みから舐めているという可能性があります。
関節の違和感や痛みがある場合も過剰にその場所だけを舐めるという行動をとる場合もあります。
よく舐めている場所に何かしらの異常(赤くなっている、脱毛しているなど)がある場合は獣医師に相談してみることをおすすめします。
グルーミングのしすぎが原因の病気『毛球症』
またグルーミングが原因で毛球症になることもありますので注意してください。
猫がグルーミングの際に毛を一緒に飲み込んでいます。通常であればうんちとして排出されたり、定期的に吐き戻したりして体外に排出します。
毛球症は毛が上手く排出されるまえに胃の中で毛と胃液が混ざり合い、毛球(毛の塊)が作られます。その毛玉が原因でごはんを食べなくなったり嘔吐下痢をおこしたり、最悪の場合腸閉塞を発症させてしまうことがあります。
毛球症には症状が出てから気づくことが多いですが長毛の猫の方がなりやすいです。
またシニア期には吐き戻す体力がなく、内臓の機能も衰えてきているので毛球症になりやすいです。
日常的に毛球症にならないように気を付けることが大切です。
- ストレスを軽減し過剰なグルーミングを行わないようにする
- 猫草と呼ばれる草や高繊維の餌をあげる(猫には有毒な植物もあるのでその辺の草などはあげないようにしましょう。)
- 定期的なグルーミング
この3つが大切になります。3の定期的なグルーミングとはいままでの猫による猫のための「セルフグルーミング」ではなく人の手によるグルーミングを指します。
人間が猫にしてあげるグルーミング方法
一般的に飼い猫のケアとは『ブラッシング・爪切り・歯磨き』になります。
すべて大切ですが、毛球症予防のためのケアはブラッシングになります。
今回はブラッシングの方法について紹介します。
長毛の猫はもちろんのこと短毛の猫においても、ブラッシングは必須になります。
もちろん毛球症予防の目的もありますが毛玉ができると皮膚炎にもなりやすくなり、悪循環です。
ブラッシングは子猫のころから慣れさせておくのがポイントです。
あまり力を入れずに毛並みに沿って手首を軽く動かして優しく梳かすようにしましょう。
力を入れすぎたり無理やり引っ張ったりすると猫が痛がりブラシを見るだけで嫌がってしまうようになってしまいます。
猫のブラシには様々な種類があるので飼っている猫にあったものを選びましょう。
また、ブラッシングという行為は猫とのコミュニケーションの方法として、さらには病気予防のためにもとても大切なものになります。
換毛期などは抜け毛が多いのでブラッシングの回数を増やすなど猫の状態によって頻度などを調節してあげるといいでしょう。
触れられること自体が苦手な猫も多いため、いきなりブラッシングをするのではなく、徐々に体に触れることから慣らしていくとスムーズに行える可能性が高いです。
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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社
動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。