犬の後ろ足に力が入らない原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年02月22日

犬の後ろ足に力が入らない、よろけてしまいうまく歩けない原因としてどんな病気が考えられるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。

愛犬のいつもと違うしぐさや行動は、何かの病気のサインかもしれません。気になることがあれば、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

犬の後ろ足に力が入らない、よろける原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

犬の後ろ足に異常が現れる原因とは?

―犬の後ろ足がおかしい、うまく動かないと原因としてどんなことが考えられますか?

ケガ

犬が散歩中やドッグラン、室内で遊んでいるときに転んだりぶつけたり、または何かを踏んだりしてケガをしてしまうと、痛めてしまった場所をかばって、歩き方や姿勢に異常が見られることがあります

遺伝性疾患

遺伝性疾患の中には、後ろ足に異常が現れる病気があります。こういった病気は比較的若い時期、特に成長期にしばしば症状が見られます。

神経系の異常

後ろ足の動きは神経による調節が重要です。そのため、神経系に異常が起こるような病気になると、よろけたり力が入らなくなったり、うまく動かなくなることがあります。

加齢

犬が歳をとって筋肉が落ちてくると、しっかり踏ん張れなくなります。そのため、立っているときや歩いているときに震えたり、ふらつきが見られたりします。

犬の後ろ足に力が入らない、よろける原因として考えられる病気とは?

犬の後ろ足に力が入らない、よろける原因として考えられる病気とは?

―犬の後ろ足がおかしい、ふらついたり、よろけたりする原因としてどんな病気が考えられますか?

突然、症状が現れる病気

脊椎・脊髄疾患

犬の後ろ足の感覚を調節している神経に異常が起こると、力が入らなくなったり、よろけてしまったりという症状が見られます。

脊椎・脊髄疾患には非常に多くの病気がありますが、代表的なものは「椎間板ヘルニア」です。背骨と背骨の間でクッションの役割をしている椎間板が飛び出してしまい、その上にある神経を圧迫すると、背中の痛みや足の麻痺(まひ)といった症状が見られます。

ほかにも、脊椎の奇形、環椎・軸椎不安定症(亜脱臼)といった病気も比較的多く遭遇する病気です。大型犬であれば、ウォブラー症候群や馬尾症候群といった病気が見られることが知られています。また、高齢、老犬であれば、この部位に腫瘍ができ、突然症状が現れることがしばしばあります。いずれも正常な神経の働きを妨げるため、後ろ足がふらついたりよろけたりといった症状が見られます。

脳疾患

犬の脳に奇形のような先天的な異常があったり、腫瘍・炎症などの後天的な異常が起こったりすると、後ろ足に力が入らない、ふらつく、よろけるといった症状が見られることがあります。その症状は、脳のどの部位にどの程度の異常が出るかによって変わります。

後ろ足の整形外科疾患

骨折や脱臼など、犬の後ろ足に整形外科的な異常があると歩き方がおかしくなります。多くの場合、痛みによってそこをかばい、跛行(はこう:正常な歩行ができな状態)や挙上(足を挙げっぱなしになる)といった症状が見られますが、中にはふらつきやよろけるといった症状が出ることもあります。

徐々に進行する病気

脊椎・脊髄疾患

「突然症状が見られる病気」の項で紹介した中でも、徐々に進行するという経過をたどることがあります。犬のウォブラー症候群は数か月から数年かけて症状が進行することがあります。

また、変性性脊髄症も徐々に進行する病気です。犬の後ろ足に発症すると、最初はたまによろける程度だったものが、やがて麻痺が出て完全に動かなくなります。

脳疾患

脳疾患の中でもゆっくり進行する場合、後ろ足の症状も徐々に進行します。脳炎や脳腫瘍は、あっという間に悪化する場合もありますが、数か月から数年かけて進行することもあります。

後ろ足の整形外科疾患

基本的に整形外科疾患は異常が現れた時点で突然症状が現れますが、加齢に伴う変形性関節症は徐々に症状が進行する病気です。

後ろ足に異常が出やすい犬種とは?

―上記のような病気にかかりやすい犬種や特徴について教えてください。

椎間板ヘルニア

ミニチュア・ダックスフンド、ペキニーズ、トイ・プードル、コッカー・スパニエル、ウェルシュ・コーギー、シーズーといった軟骨異栄養犬種での発症が多いことが知られています。

半側椎骨

脊椎の奇形のうち半側椎骨という奇形は、ブルドッグ、フレンチ・ブルドッグ、パグ、ボストン・テリアといった巻き尾の犬種でよく見られます。

環椎・軸椎不安定症(亜脱臼)

チワワ、ポメラニアン、ヨークシャー・テリア、シーズー、ミニチュア・ダックスフンド、トイ・プードルが好発犬種です。

ウォブラー症候群

グレード・デーンとドーベルマンが60~80%を占めるというデータがあります。

変性性脊髄症

近年では、ウェルシュ・コーギーで発症が多いことが注目されています。

犬の後ろ足にこんな症状が見られたらすぐ病院へ

犬の後ろ足にこんな症状が見られたらすぐ病院へ

心配がいらない場合

打撲による一時的な痛み

―後ろ足に異常が見られても、一過性で放っておくと自然に治ることはありますか?

その可能性はあります。例えば、何かに足をぶつけて一時的に痛みが出た場合、最初はその足に力が入らなくて、ふらついたりしますが、時間が経つと、けろっとして普通になることがあります。症状が続かずに再発もしなければ、特に病院を受診する必要はないでしょう。

加齢による筋力低下

加齢に伴う筋力の低下の場合も緊急性はありません。無理しない程度に愛犬の散歩をして、筋力維持やマッサージなどをしてあげるのも有効です。

受診を強く勧める症状

―受診すべき異常の見分け方、併発するそのほかの症状を教えてください。

犬の後ろ足に力が入らない、よろけるという症状は、多くの場合、神経に異常が起こっているためであり、自然に治ることはほとんどありません。そのため、その症状だけでも受診を強く勧めますが、特に以下の症状が見られた場合は、かなり重症で緊急性が高くなります。

  • 痛みが強く、動くたびに鳴く
  • 前足も動きがおかしい
  • 意識がなくなる

―それらの症状を放置すると何が危険なのでしょうか?

命にかかわる状態である可能性があります。少なくても、犬に強いストレスがかかっていることは間違いありません。

思うように動けなくなることは、犬にとって大きく生活の質を低下させてしまいます。痛みがある場合、普段はおとなしい子でもイライラして飼い主さんに噛み付いてしまうことがあります。また、ストレスは全身の免疫力も低下させてしまうため、ほかの体調にも異常が出てくることもあります。

犬の後ろ足に異常が現れたときの対処法

犬の後ろ足に異常が現れたときの対処法

ケージに入れて愛犬を動けないようにしましょう

―愛犬の後ろ足に異常が見られたら、どう対処すればいいのでしょうか?

愛犬にふらつきやよろけるといった症状が見られたら、まずはケージに入れて動けないようにしましょう。無理に動くと症状が悪化したり、倒れてしまいほかの部位を傷めてしまったりすることがあるからです。

お勧めできないNGなケア

異常が出ている愛犬の足を保護するために包帯を巻いてガードしたくなるかもしれませんが、これはやめたほうがいいでしょう。余計に動きにくくなってケガをしたり、包帯を取ろうとして無理な動きをしたりして症状が悪化する危険があります。

まとめ

紹介した「後ろ足に力が入らない、よろける」という症状が見られる病気は、「足を引きずる」という症状に比べるとより深刻であるケースが多いものです。そのため、きちんとした診断と治療をしなくてはなりません。

しかし、神経の病気の場合、ホームドクターでの身体検査や血液検査、レントゲン検査だけでは原因を特定できないことが少なくありません。その場合は、大学病院や検査センターで麻酔をかけ、CT検査やMRI検査などを行わなければならない場合があります。また、治療も大がかりな外科手術や、長期的(ときには一生にわたっての)投薬治療が必要になることもあります。

少し様子を見ようと問題を先送りにせず、できるだけ早い受診を心がけましょう。

犬の歩き方の症状の関連記事

そのほか気になる犬の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「犬の症状」を併せてご覧ください。

犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

PS保険

記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。