猫が生のカニを食べたときの症状と応急処置を獣医が解説
最終更新日:2024年07月18日
本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。
生のカニは、猫が食べると中毒を引き起こしてしまう危険なものです。愛猫が生のカニをなめてしまった、食べてしまった場合、どのような症状が起こり、どのように対処すべきかを獣医師が詳しく解説します。
- 加熱処理をしたカニなら猫に与えても大丈夫
- 猫が生のカニを食べると引き起こされる症状
- 猫が生のカニをどのくらい食べると危険なのか
- 猫が生のカニを食べてしまったときの応急処置
- まとめ「猫に生のカニを食べさせてはいけない」
加熱処理をしたカニなら猫に与えても大丈夫
―猫にカニを食べさせても大丈夫ですか?
安易に猫にカニを食べさせることはとても危険です。しかし、加熱処理をしたカニなら猫に与えても大きな問題はありません。
ただし、加熱処理をしっかりしていても、甲羅や筋などの硬い部分が混入してしまった場合、猫が飲み込むと消化器に傷を負ってしまったり、喉を詰まらせてしまったりする危険性があります。また、皮膚症状や消化器症状などのアレルギーを起こしてしまうリスクもあるため、注意が必要です。
加熱処理の過程で、調味料で味付けをした場合は、猫にとって塩分過多になってしまうリスクもあります。カニを与える際は十分に注意しましょう。塩分過多の点でいえば、カニの成分は入っていないものの、「かにかま」も同様です。かまぼこで作られている「かにかま」は、塩分が多く使用されている場合があります。
したがって、加熱調理をしてしっかりとほぐされたカニの身で、味付けもまったくしていないものであれば猫に与えても問題はありません。
しかし、加熱処理をしていない生のカニを与えると、ふらつきのような神経症状を起こしてしまう危険性があります。この神経症状を起こす原因は、カニに含まれているチアミナーゼにあります。チアミナーゼは熱に弱い性質をもっており、ゆでたり焼いたりすれば失活(反応を起こさなくなること。不活性化)させられるのです。
次に、問題となるチアミナーゼについて説明します。
猫が生のカニを食べると引き起こされる症状
生のカニの成分「チアミナーゼ」が猫にビタミンB1欠乏症を引き起こす
―猫が生のカニを食べると、どのような症状が現れるのですか?
猫が生のカニを食べてしまうと、ふらつきといった神経症状や食欲不振、嘔吐(おうと)などが発症します。
症状の原因は生のカニに含まれるチアミナーゼという酵素にあります。チアミナーゼはチアミン(ビタミンB1のこと)を分解する酵素です。ビタミンB1は摂取した糖質の代謝を促す働きをもっており、脳や筋肉にエネルギーを補充する役割を担っています。
また、ビタミンB1には神経系の正常な働きを助ける効果があります。ビタミンB1は肉食系の猫にとって非常に大切なビタミンであり、多くの量が必要です。しかし、チアミナーゼはこのビタミンB1を分解し、摂取したビタミンB1を欠乏させてしまう危険性があります。
猫が生のカニを食べたかも!? このような症状が見られたら病院へ
猫が生のカニを食べてしまった場合、中毒症状やアレルギー症状が出ていないかをしっかりと確認しましょう。
猫が生のカニを食べると、以下のような症状が引き起こされる可能性があります。
神経症状
- ふらつき
- けいれん
- 昏睡(こんすい)
消化器症状
- 嘔吐
- 下痢
整形外科疾患
- 骨の変形
- 歩行異常
昏睡状態にある場合は命の危険があるため、すぐに動物病院に連れて行くようにしましょう。そのほかの症状が出ている場合も、様子を見続けるのではなく獣医師に相談することをお勧めします。
猫が生のカニをどのくらい食べると危険なのか
猫が生のカニをなめた、少量を食べてしまったらどうなるの?
―猫が生のカニをなめたり、少量を食べてしまったりしたら、どうなってしまうのでしょうか? 様子を見ていても大丈夫ですか?
猫が生のカニを少量とはいえ、口にした場合も注意が必要です。猫が生のカニをなめたり食べたりしているのを見た際に、飼い主さんが驚いて大きな声をかけてしまうと、猫は急いですべてのカニを食べてしまう危険性があります。おもちゃやほかの安全なおやつで猫の気をそらし、可能な限り猫が口にしてしまうカニの量を抑えるように注意しましょう。
猫がすぐに吐き出したり、加熱調理をしたカニであったりすれば、危険性は低くなります。一度、獣医師にしっかり状況を説明し、相談しましょう。
猫が生のカニを食べてしまったときの応急処置
家庭内ですべき応急処置、対処法
―猫が生のカニを食べてしまったら、家庭でどのように対処したらいいのでしょうか?
万が一、猫が生のカニを食べてしまった場合は、無理やり吐かせようとせず、すぐに動物病院を受診するようにしてください。動物病院にかかる際は、いつ生のカニを食べたのか、どれぐらいの量を食べたのか、普段と違った様子はあるかなどの情報をまとめたメモを持参するようにしましょう。
けいれんのような症状が起きた場合も、いつ生じたのか、症状の時間はどれくらいなのかを把握するようにしましょう。嘔吐や下痢が認められた場合は、吐しゃ物や排泄物を持ち込むと診断の手助けになります。
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病院での対処法
―猫が生のカニを食べてしまったら、病院ではどのような処置をするのですか?
猫が生のカニを食べてから長い時間がたっていない場合、また確実に甲羅や筋などの硬いものを食べていない場合は、猫に注射を打って吐かせる処置をします。食べてから数時間以上たってしまっている場合は、吐かせる注射をしても効果が少ないため、そういった処置はせず、解毒剤といわれる活性炭を処方する場合があります。
これらのほか猫の症状に合わせて、体の状態を把握するために血液検査やレントゲン検査、エコー検査をする場合もあります。
まとめ「猫に生のカニを食べさせてはいけない」
カニはとてもおいしい食べ物ですが、生のカニを猫に与えないようにしてください。加熱処理をしたカニであれば、問題になる可能性は低いでしょう。しかし、特段カニを与える必要がなければ、ほかのおやつを与えるほうが賢明です。
もし猫が生のカニを食べてしまった場合でも、慌てず動物病院に連絡しましょう。
愛猫に食べさせていいかを迷ったり、何かを食べて具合が悪くなったかもしれないと思ったりしたら、獣医師監修の「猫が食べてはいけない危険な食べ物」「猫が食べても大丈夫なもの」を併せてご覧ください。