猫が煮干しを食べ続けると発症する病気を獣医が解説

最終更新日:2024年03月27日

猫は煮干し好きというイメージがありますが、煮干しを与えるのはおすすめできません。ここでは、猫が煮干しを食べ続けると引き起こされる病気や危険性について、獣医師が詳しく解説します。

猫が煮干しを食べ続けると発症する病気を獣医が解説

猫が煮干しを食べ続けると引き起こされる病気

猫が煮干しを食べ続けると引き起こされる病気

煮干しに含まれる「ミネラル成分」が猫に腎臓病や尿石症を引き起こす

煮干しは、ナトリウム・カルシウム・マグネシウム・リンなどのミネラル成分や、健康維持に役立つタウリンなど、猫に有益な栄養素が豊富な食べ物です。また、猫に中毒症状を引き起こす物質は含まれていないため、おやつとして与えても問題ありません。

しかし、ミネラルは一度に大量、もしくは継続的に摂取すると、猫の腎臓に負担がかかって腎臓病になったり、尿石症(尿路に結石ができる病気)を引き起こしたりすることもあります。そのため、猫に煮干しを与える場合は量や頻度に注意が必要です。

猫が煮干しを食べすぎたかも!? こんな症状が見られたら病院へ

猫が煮干しを一度に食べすぎた場合と継続して食べ続けた場合とでは、現れる症状が異なります。ここではそれぞれ分けて説明します。

まず、煮干しを一度に食べすぎた場合、以下のような症状が現れます。

  • 嘔吐(おうと)
  • 下痢
  • 食欲や元気がなくなる

 

次に、煮干しを食べ続けてミネラルの過剰摂取が慢性化すると、尿石症や腎臓病になり、以下のような症状が現れます。

尿石症の場合

  • 頻尿
  • 尿が出なくなる(結石が詰まった場合)
  • 陰部を気にしてなめる
  • 尿の色が変わる(赤色やピンク色)
  • 元気や食欲がなくなる

腎臓病の場合

  • 尿の量が増える(尿の色がうすくなる)
  • 元気や食欲がなくなる
  • 痩せてくる
  • 被毛がパサついて見える

 

煮干しは硬いため、口腔(こうくう)内を傷つけたり、喉や食道などに詰まったり、うまく消化できずに消化管を傷つけたりすることがあります。また、尿石症になって尿路に結石が詰まった場合には、速やかに処置が必要です。いずれの場合も、愛猫の普段と違う様子に気が付いたら、早めに動物病院を受診しましょう。

猫が煮干しをどのくらい食べると危険なのか

猫が煮干しをどのくらい食べると危険なのか

キャットフードに含まれるミネラル量から考える

―猫が摂取するミネラル量について、一般的なキャットフード一日分と煮干しに含まれる量とでは、どのくらい違うのでしょうか?

体重4kgの猫が、猫用の一般的なドライフードを一日に60g食べた場合で計算すると、猫が摂取する各ミネラル量はおよそ以下のとおりです。

  • カルシウム:498mg
  • リン:360mg
  • マグネシウム:66mg

※各社ホームページなどにより筆者算出。
※各商品の保証分析値より含有率の平均値を算出(カルシウム:0.83%、リン:0.6%、マグネシウム:0.11%)し、成分量に換算したもの。

また、ナトリウムの養分要求量(最低必要量)は68mgであり、与える量の安全上限は1.8gとされています。

一方で、煮干し60gには、以下のミネラル成分が含まれています。

  • カルシウム:1320mg
  • リン:900mg
  • マグネシウム:138mg
  • ナトリウム:1020mg

※日本食品標準成分表2020年版(八訂)より筆者算出。

同量の猫用ドライフードと煮干しを比較すると、煮干しはミネラル成分が2倍以上含まれていることがわかります。つまり、煮干しを猫に与えるとミネラルの取りすぎになり、腎臓病や尿石症の原因になります。

なお、尿石症のなりやすさは猫の体質に左右されるため、同じものを同じように食べていたとしても、結石ができる猫もいれば、まったく問題ない猫もいます。しかし、一般的に乾物量(※)あたりマグネシウムの含有量が0.25%を超えると、「ストラバイト結石」が作られ、尿石症を引き起こすリスクが高まると言われています。

また、ミネラル成分において絶対量は大切ですが、比率も重要で、例えば、カルシウムとリンの比率は1:1が成長のために最も良いとされています。煮干しを与えすぎると、ミネラルのバランスが崩れる可能性があるため、注意が必要です。

さらには、長期的に高ナトリウム食を猫に与えると、見た目は健康そうに見えても、腎臓病が進行していることがあります。キャットフードには、飲水を促すためにナトリウムを多めに添加しているタイプもありますので、ナトリウムを多く含む煮干しを大量に与えるのは避けましょう。

※乾物量とは、フードから水分量を引いた値のことです。フードのパッケージには保証分析値が記載されていますが、その中には水分も含まれているため、水分を差し引いて計算する必要があります。保証分析値のマグネシウムの含有量はフードに対しての数値のため、注意しましょう。

キャットフードに含まれるミネラル量から考える

猫に煮干しを与えるときの注意点

人間用ではなく猫用の煮干しを与える

―与える量を加減すれば、猫に煮干しを与えても大丈夫ですか?

煮干しにはさまざまな大きさや硬さがあり、ものによっては猫が上手に飲み込めず、歯ぐきに刺さったり、消化できずに嘔吐や下痢の原因となったりすることがあります。食事は総合栄養食を基本とし、煮干しを与えるのは控えたほうがいいでしょう。与える場合には、塩分が多く含まれている人間用の煮干しではなく、猫用の煮干しにしてください。また、猫用でも与えすぎには注意しましょう。

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まとめ「猫に煮干しを食べさせてはいけない」

「猫には魚」という日本人ならではの考えから、愛猫に煮干しを与える人が多くいます。煮干し自体に害はありませんが、量や与え方を間違えるとミネラルの過剰摂取となり、尿石症や腎臓病のリスクが高まるため注意が必要です。

病気になると、食餌内容を見直し、療法食が必要となる場合がほとんどです。おやつを含めた食餌が制限されるため、愛猫にあげたいものを与えられなくなってしまいます。まずは総合栄養食を基本とし、一日分の食事の量をしっかりと把握してください。煮干しを与える場合は、食生活が偏らないよう、猫用の煮干しを少量与えるようにしましょう。

愛猫に食べさせていいかを迷ったり、何かを食べて具合が悪くなったかもしれないと思ったりしたら、獣医師監修の「猫が食べてはいけない危険な食べ物」「猫が食べても大丈夫なもの」を併せてご覧ください。

関連リンク

猫種別の保険料

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また、「ペット保険取扱の猫種分類表」に契約実績のある猫種をまとめていますが、未記載の猫種であっても保険料は同じです。

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