猫が生のイカを食べたときの症状と応急処置を獣医が解説

最終更新日:2024年07月17日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

イカは、疲労回復を始め、健康効果が高い食べ物として知られていますが、生のイカは猫にとってはビタミンB1欠乏症を引き起こす危険なものです。愛猫が生のイカをなめてしまった、食べてしまった場合、どんな症状が起こり、どう対処すべきかを獣医師が詳しく解説します。

猫が生のイカを食べたときの症状と応急処置を獣医が解説

猫に加熱したイカやスルメを与える場合の問題点

猫に加熱したイカやスルメを与える場合、いくつか問題点があります。

まず、ひとつ目は、消化に良くない点です。うまく消化できないことで、嘔吐や下痢を引き起こしてしまう可能性があります。

ふたつ目は塩分が多い点です。人間の食用に加工されたスルメなどの場合、猫にとっては塩分が過多になることがあります。また、スルメは胃の中で水分を吸収して膨張しますので、それにより胃や腸に負担がかかり、ひどいときには閉塞の原因になってしまうこともあります。

猫が生のイカを食べると引き起こされる症状

猫が生のイカを食べると引き起こされる症状

生のイカの成分「チアミナーゼ」が猫にビタミンB1欠乏症を引き起こす

生のイカにはチアミナーゼ(アノイリナーゼ)という酵素が含まれています。チアミナーゼはビタミンB1(チアミン)を分解する作用がありますので、チアミナーゼを多くとりすぎるとビタミンB1が不足してしまうことがあります。ビタミンB1が欠乏すると、食欲不振、多発性神経炎、脳炎、心機能障害などが現れる可能性があります。

また、生のイカにはチアミナーゼのほかにも細菌やアニサキスなどの寄生虫が含まれている可能性があります。発生頻度は低いのですが、特にアニサキスには注意が必要です。人間に感染した場合、猛烈な腹痛を引き起こします。これは猫でも同様で、食欲不振や元気消失、嘔吐などの症状が現れることがあります。

猫が生のイカを食べたかも!? こんな症状が見られたら病院へ

  • 食欲不振
  • 運動失調
  • 行動異常
  • 嘔吐
  • 体重減少

―生のイカの危険な成分が含まれる食品について教えてください。

チアミナーゼは生のイカのほかにも、生の魚(マグロ、カツオ、ニシン、コイなど)、貝類、ワラビやゼンマイに含まれます。ただし、チアミナーゼは熱に弱く、基本的には加熱処理をすれば問題ありません。

アニサキスは生のイカ以外には、サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケなどに寄生していることが多くあります。アニサキスは加熱処理や冷凍処理によって死滅しますので、食べさせる前にきちんと加熱や冷凍処理をすることが感染予防に有効です。

猫が生のイカをどのくらい食べると危険なのか

猫が生のイカをどのくらい食べると危険なのか

猫が生のイカをなめた、少量を食べてしまったらどうなるの?

―愛猫が生のイカをなめたり、少量を食べてしまったりしたら、どうなってしまうのでしょうか? 様子を見ていても大丈夫ですか?

なめた程度や、食べたとしても少量の場合はあまり問題にはなりません。しばらく様子を見ても大丈夫でしょう。ただし、食欲不振や神経症状が出ていないか、少しの間は注意して見ていてあげてください。心配な場合には、症状が出ていなくても動物病院を受診するようにしましょう。

危険な量

―どのくらいの量を食べると中毒症状が出るのですか?

どのくらい与えると中毒症状が出るといった基準はありません。できるだけ猫が生のイカを食べないように注意しましょう。

猫の保険について

猫が生のイカを食べてしまったときの応急処置

家庭内ですべき応急処置、対処法

もし猫が生のイカを食べてしまった場合、まだ口の中に入っているときは指などですぐに口から出してください。飲み込んでしまっている場合は、背中を叩くなどして無理に吐き出させるのはやめましょう。

もし飲み込んだのが少量であれば症状が出る可能性は低いのですが、念のため動物病院の受診をお勧めします。家庭で様子を見る場合には、食欲不振やふらつきなどの神経症状が出ていないか、注意深く観察してあげてください。

多量のイカを食べてしまった場合には、すぐに動物病院を受診しましょう。いつ、どのくらいの量を食べてしまったのかをメモしておき、受診の際に担当の獣医師に伝えるとスムーズに診察が進むでしょう。獣医師はそれらの情報を基に必要な検査を実施してくれるはずです。

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病院での対処法

猫が生のイカを食べてしまったときの応急処置

下記のような検査や治療が実施されることがあります。

  • 血液検査
  • 神経学的検査
  • 経口、または点滴によるビタミンB1(チアミン)の投与

症状が見られてもすぐにビタミンB1を投与できれば、多くの場合、改善しますが、対処が遅れてしまうと、昏睡(こんすい)状態になり、そのまま死に至ることもあります。そのため、生のイカを食べてしまったことが判明したらすぐに、もしくは症状が現れたらすぐに動物病院を受診しましょう。

まとめ「猫に生のイカを食べさせてはいけない」

生のイカは猫にビタミンB1欠乏症を引き起こす可能性があるため、なるべく与えないようにしましょう。通常のキャットフードには猫が生活するために十分な量の栄養が含まれているため、そのほかの食品を与える必要性はあまりありません。

もし猫が生イカを食べてしまっても少量であれば問題になることは少ないのですが、心配な場合や症状(食欲不振、神経症状など)が現れている場合には、すぐに動物病院を受診しましょう。チアミナーゼの過剰摂取によるビタミンB1欠乏症は命にかかわることもありますので、なるべく早い受診をお勧めします。

チアミナーゼのほかにも、発生頻度は低いのですがアニサキスの感染にも注意しましょう。イカのほかにもサバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケなどにも寄生しています。予防法としては、これらの食品を猫に与えないことが一番ですが、やむを得ず与える場合にはきちんと加熱や冷凍処理をしてから与えるようにしましょう。

愛猫に食べさせていいかを迷ったり、何かを食べて具合が悪くなったかもしれないと思ったりしたら、獣医師監修の「猫が食べてはいけない危険な食べ物」「猫が食べても大丈夫なもの」を併せてご覧ください。

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関連リンク

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