犬の脳炎(髄膜脳炎)の症状と原因、治療法について

最終更新日:2024年03月26日

犬の脳炎(髄膜脳炎)の症状

犬の脳炎(髄膜脳炎)の症状と原因

脳炎とは、脳に炎症が起こっている状態で、髄膜にも炎症を生じている状態を髄膜脳炎と言います。脳炎を発症すると、けいれんや震え、視覚障害などの神経症状を引き起こす原因になります。

  • てんかん発作
  • 意識レベルの低下
  • 失明
  • 捻転斜頸(ねんてんしゃけい:首をかしげる姿勢をとること)
  • 旋回
  • 運動失調
  • 頸部痛(けいぶつう)
  • 吐き気
  • 食欲不振
  • けいれん
  • 震え
  • 視覚障害

てんかん発作が連続すると、多臓器不全に陥るケースもあり、犬の命にかかわるため注意が必要です。

犬の脳炎(髄膜脳炎)の原因

感染性脳炎の原因

ウイルスや細菌、真菌、寄生虫などの感染が原因で、脳炎を発症する場合があります。

犬ジステンパー脳炎

パラミクソウイルス科モルビリウイルス属犬ジステンパーウイルスの感染によって引き起こされます。犬の感染性脳炎の原因として最も一般的な疾患で、混合ワクチン接種前の子犬に多く見られます。感染力が強く、感染犬の鼻水や唾液、尿などに接触すると感染します。

初期には鼻水やくしゃみ、発熱などの症状が見られ、悪化すると血が混じった下痢といった消化器症状が現れます。中枢神経にウイルスが移行すると、脳炎を引き起こします。

狂犬病

ラブドウイルス科リッサウイルス属狂犬病ウイルスによって引き起こされます。犬が狂犬病を発症すると凶暴化や興奮、元気消失と全身の麻痺(まひ)による運動失調、嚥下困難(えんげこんなん:水や食べ物を飲み込みにくくなること)、流涎(りゅうぜん:よだれを流すこと)などが見られます。

ただし、日本では狂犬病ワクチンの接種が義務化されているため、近年の発生例はほとんどありません。

細菌性髄膜炎

スタフィロコッカス属やストレプトコッカス属、パスツレラ属などの細菌によって引き起こされます。犬が細菌性髄膜炎を発症すると、発熱や知覚過敏、疼痛(とうつう)、食欲不振、嘔吐(おうと)、運動失調などが現れます。

クリプトコッカス症

クリプトコッカス・ネオフォルマンスという真菌の感染によって引き起こされます。犬の呼吸器から感染し、脳に広がって脳炎を発症するケースが多く見られます。発作や失明などが症状として現れます。

ネオスポラ症

ネオスポラという原虫(寄生虫の一種)が、脳炎や神経炎を引き起こします。

非感染性脳炎の原因

非感染性脳炎とは、病原体を原因としない炎症性の疾患です。

壊死性髄膜脳炎(パグ脳炎)

数種類の小型犬が発症する脳炎で、パグで多く見られるためパグ脳炎とも呼ばれます。 壊死性髄膜脳炎の原因は明らかになっていませんが、自己免疫メカニズムの異常が関連していると考えられています。症状として、てんかん発作がよく見られます。

肉芽腫性髄膜脳炎

壊死性髄膜脳炎と同様、発症する仕組みは明確になっていないものの、自己免疫メカニズムの異常が関連していると考えられています。発症すると、発作や失明、捻転斜頸、旋回などの症状が見られます。

特発性振戦症候群

小脳の炎症が特徴の疾患で、原因は明らかになっていません。発症すると、震えやぎこちなく歩くなどの症状が見られます。

ステロイド反応性髄膜炎・動脈炎

犬の髄膜と動脈における化膿性炎症(かのうせいえんしょう)が特徴で、発熱、頸部痛、知覚過敏などの症状がよく見られます。感染症の可能性が指摘されていますが、詳しい原因は明らかになっていません。

脳炎(髄膜脳炎)にかかりやすい犬の特徴は?

脳炎の種類ごとの発症しやすい犬の特徴は、次のとおりです。

壊死性髄膜脳炎(パグ脳炎)

パグ、シー・ズー、ペキニーズ、マルチーズ、チワワ、ポメラニアン、パピヨンなどの一部の小型犬。特にパグで多く発症し、1~3歳の小ぶりなメス犬に多く見られます。

ジステンパー脳炎

ワクチン未接種の子犬

肉芽腫性髄膜脳炎

若~中年齢の小型犬

特発性振戦症候群

マルチーズやプードルなど毛が白い犬

ステロイド反応性髄膜炎・動脈炎

3歳以下のビーグルやバーニーズ・マウンテンドッグ、ボクサー

犬の脳炎(髄膜脳炎)の治療法

犬の脳炎(髄膜脳炎)の治療法と予防法

検査内容

神経学的検査

足の動きや刺激に対する反応、目の反射などを確認し、神経に異常が出ていないか確認します。

血液検査

内臓の状態や炎症のマーカーなどを確認し、全身状態を評価します。

MRI

必要に応じて、脳に炎症や腫瘍などがないか確認します。

治療法

脳症の原因疾患に合わせた治療薬を投与します。

  • 細菌感染性の場合:抗菌薬
  • 寄生虫性の場合:抗原虫薬
  • クリプトコッカス症の場合:抗真菌薬

非感染性の脳炎の場合は、ステロイド製剤や免疫抑制剤、抗てんかん薬などを病気に合わせて使用します。神経症状以外の症状が犬に見られる場合には、症状に合わせた治療を行います。

無治療の場合

無治療の場合、病気が進行し、発作や麻痺がより重度になって命を落とす可能性があります。

犬の脳炎(髄膜脳炎)の予防法

感染症の予防法

次の感染症は、ワクチン接種で予防ができるため、毎年1回のワクチン接種を忘れずに行ってください。ワクチンをまだ打てない子犬は、なるべくほかの犬との接触を避け、散歩の際は抱っこをして地面に触れないように工夫しましょう。

  • 犬ジステンパー脳炎
  • 狂犬病

細菌性髄膜炎

残念ながら、予防法はありません。

クリプトコッカス症

鼻水やくしゃみなどの呼吸器症状が犬に現れるケースが多く、感染が疑われる犬や猫との接触を避けると、感染のリスクを低減できます。また、ハトの糞(ふん)にクリプトコッカスが含まれている可能性があるため、外出時には触れないように注意しましょう。

ネオスポラ症

感染が疑われる犬との接触を避けることが挙げられますが、予防はあまり期待できません。

非感染症の予防法

非感染性の脳炎は、残念ながら予防法がありません。そのため、少しでも気になる症状が見られた場合は、すぐに動物病院を受診し、悪化する前に治療を受けましょう。

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犬の脳・神経系の病気

犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

PS保険

記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。