犬の免疫介在性血小板減少症の症状と原因、治療法について

最終更新日:2024年04月18日

犬の免疫介在性血小板減少症の症状

犬の免疫介在性血小板減少症の症状と原因

血小板は血液中に含まれる成分で、出血が起きたときに出血部位に集まり、止血する働きがあります。

犬の免疫介在性血小板減少症は、異常を来した免疫機能が血小板を攻撃して破壊する病気です。血小板が著しく減少するため、出血が止まりにくく、皮下出血や鼻血などの症状が起こりやすくなります。

免疫介在性血小板減少症になると、次のような症状が現れます。

  • 外傷や採血した部位の出血が止まりにくい
  • 点状出血(毛細血管が破れてできる細かい点状の皮下出血)
  • 斑状出血(毛細血管が破れてできるあざのような皮下出血)
  • 血尿
  • 鼻血

こんな症状が見られたらすぐに動物病院を受診

犬に次のような症状が見られる場合は、止血異常(出血を止める働きに異常がある状態)の疑いがあり、放置すると出血多量で命にかかわるおそれがあります。

  • 止血をしても出血が止まらない
  • 皮下出血の範囲が広がる
  • 舌や歯ぐきの色がいつもより薄い
  • 呼吸が速い
  • 便が黒い(黒色便:腸管内で出血が起こっているときに出る便)
  • 血尿

止血異常の症状のうち、犬の体表(体の表面)や粘膜に現れる場合は点状出血や斑状出血が、犬の体内で起こる場合は血尿や黒色便が見られます。

これらのほか、犬の出血が増えて貧血になると、元気や食欲がなくなります。また、酸素を運ぶ赤血球数が減ると、酸欠状態になって呼吸が速くなりします。さらに犬の出血が続き症状が悪化すると、粘膜が健康なときに比べて白っぽく見えるようになります。

犬の止血異常の原因を調べるには、詳しい検査が必要です。気になる症状があれば、様子を見ずに動物病院を受診しましょう。

犬の免疫介在性血小板減少症の原因

免疫介在性血小板減少症は、免疫が自分の血小板を異物と誤認して抗体を作ってしまう自己免疫性疾患のひとつです。作られた抗体は血小板の表面に結びつき、血小板は破壊されます。

免疫機能が異常を来す原因ははっきりしていませんが、ウイルスや細菌などへの感染や薬剤、腫瘍などにより起こる可能性があります。

免疫介在性血小板減少症にかかりやすい犬の特徴は?

どの犬種でも免疫介在性血小板減少症になる可能性がありますが、シー・ズー、プードル、マルチーズに比較的多いとされています。また、メス犬に多いと言われています。

犬の免疫介在性血小板減少症の治療法

犬の免疫介在性血小板減少症の治療法と予防法

検査内容

視診・触診

犬の全身状態を確認するため、また、内出血を起こしている部分がないかを視診、触診して確認します。

血球計算

血球計算と呼ばれる検査で犬の血小板数を確認します。この数値に応じて、血液塗抹検査や画像検査、さらに詳細な検査が必要になる場合があります。

血液塗抹検査

 

血液塗抹検査では、血小板を始め、血液中の成分や細胞の状態を確認します。犬が免疫介在性血小板減少症になっていると、この検査で血小板が「ない」、または「きわめて少ない」状態が観察されます。

以下の検査は、犬の止血異常が免疫介在性血小板減少症によるものではないと判断(除外診断)するためのものです。

生化学検査

生化学検査では、肝酵素やCRP(体内の炎症や組織細胞の破壊が発生すると高まる、たんぱく質の数値)の測定を行います。

凝固検査

止血異常の原因は複雑で、血小板の減少以外の因子も考えられます。例えば、血液が固まる(凝固)因子と液体になる(線溶)因子もそのひとつであり、止血異常の原因を突き止めるために、さまざまな検査を行います。

X線やエコー検査

各種血液検査の結果、腫瘍や内臓疾患の疑いがある場合は、X線検査やエコー検査を行い、確認します。

治療法

犬の免疫介在性血小板減少症の治療には、次のような薬を投与します。

副腎皮質ホルモン

副腎皮質ホルモンは、犬の炎症を抑えたり、かゆみを抑えたりする薬ですが、用量を増やすと免疫反応を抑制する作用もあります。

しかし、長期間にわたり大量に投与すると、副反応として別の病気を誘発する可能性があるため、長期の使用はできるだけ避けたほうがいいでしょう。

犬の血小板数が増加して基準値内まで回復した場合は、副腎皮質ホルモンを徐々に減らしていきます。ただし、急に量を減らすと再発のおそれがあるため、軽症の場合でも3か月以上、重症の場合は6か月以上かけて減薬していきます。

免疫抑制剤

犬の症状が重い場合は、副腎皮質ホルモン剤による副作用を避ける目的で免疫抑制剤を併用します。シクロスポリンやミコフェノール酸モフェチルを投与するケースが多く見られます。

脾臓摘出

抗体が結合した血小板は、主に脾臓で破壊されます。副腎皮質ホルモンや免疫抑制剤を投与しても期待する効果が得られない場合や、何らかの理由で投与できない場合は、血小板数を減らさないために脾臓(ひぞう)を摘出します。

無治療の場合

愛犬に治療をしない場合、血小板が減少しているため出血しても止血できません。また、免疫反応が続くため血小板が破壊され続け、止血異常が重症化して貧血を起こします。体格差や個体差によりますが、半月から1か月以内に命を落とします。

犬の免疫介在性血小板減少症の予防法

免疫異常の原因が解明されていないため、犬の免疫介在性血小板減少症は予防が難しい病気です。重症化すると治療が難しくなり、命にかかわるため、早期発見・早期治療が大切になります。

愛犬に疑わしい症状が見られた場合は、できるだけ早く動物病院を受診してください。また、定期的に健康診断を受け、愛犬の体調をチェックしましょう。

免疫介在性血小板減少症は治療を続けていても再発の可能性がある病気です。途中で薬をやめると症状が悪化するだけでなく、治療に反応しなくなり、回復が見込めなくなるおそれがあります。治療は、獣医の指示に従って、しっかり続けるようにしましょう。

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犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

PS保険

記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。