犬の息が荒い、呼吸が速い原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年02月22日

犬が口を開けてハアハアと息をするのはパンティングと呼ばれ、多くの場合、体温調節のためであり、自然なことです。しかし、犬の呼吸が荒く速い、その症状が一時的ではなく苦しそうにしていたら、どんな病気が考えられるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。

犬がいつもと違って、息が荒く、苦しそうにしているといった動作の異常や状態の変化は、何かの病気のサインかもしれません。すぐに獣医師さんに相談しましょう。

犬の呼吸が速い、息が荒い原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

犬の息が荒い、呼吸が速い原因とは?

正常時の犬の呼吸数

正常時の犬の呼吸数は1分間に10~35回とされています。安静時は口を閉じて鼻呼吸をしますが、活動時は口呼吸をすることもあります。

小型犬は大型犬に比べて肺が小さいため、呼吸数が多い傾向があります。また、フレンチ・ブルドッグ、パグやチワワといった短頭種は、鼻孔や気管が狭いため呼吸数が多くなりやすく、鼻呼吸より口呼吸のほうが多くなります。このほか、加齢により体力が落ちてくると、呼吸が荒くなりやすいという特徴が見られます。

犬の呼吸数の測り方

犬の胸やお腹が上下に動く回数を数えます。長毛種では胸やお腹の上下運動がわかりづらいかもしれません。そのときは、犬の鼻の前に手鏡を置いて、鏡が息で白く曇る回数を数えます。これらの測り方で、15秒で4倍、20秒で3倍すれば、1分間当たりの呼吸数がわかります。

また、愛犬が寝ているとき、じっとして動かないときといった安静時の呼吸数を把握しておくと、異常時に気付くやすくなります。

正常な犬の呼吸数と測り方

犬の呼吸が速くなる原因

犬は以下のような状況下で、口を大きく開けてハアハアと荒い呼吸を繰り返します。これをパンティングと呼びます。

運動後

犬に限りませんが、運動後は呼吸が速く、荒くなります。これは運動で酸素を消費した体に、体外から酸素をできるだけ早く補給するためです。

体温調節

犬は汗をかくことができず、呼吸を通して体温調節を行うため、呼吸が速く荒くなります。これは運動後や体温上昇時の生理現象であるため、多くの場合、安静にしていればパンティングは治まり、問題ありません。

ストレス

興奮、恐怖、緊張、不安などの精神的要因の場合、交感神経が優位になり、一時的に呼吸が荒くなります。時間経過や原因がある場合、その原因がなくなるとパンティングが治まり、正常に戻る場合がほとんどです。

異物誤飲

異物が喉や食道に詰まってしまうと、犬が苦しくなり、パンティングや努力性呼吸(体全体でする呼吸)をする場合があります。この場合は早急に動物病院で受診しなければなりません。

ケガ

ケガによる痛みで呼吸が速くなる場合があります。

このほか犬の呼吸が速くなる原因として、呼吸器疾患や心臓疾患といった病気が考えられます。

犬の呼吸が荒くなる原因として考えられる病気とは?

犬の呼吸が早い、息が荒い原因として考えられる病気とは?

呼吸器の疾患

気管支炎

気管支炎は、ウイルスや寄生虫、ハウスダストやタバコなどの化学物質、誤飲などが原因になり、気管支に炎症が起こる病気です。犬が気管支炎になると、咳や食欲不振、元気消失が見られ、重症化すると呼吸困難を引き起こすおそれがあります。

気管虚脱、気管支虚脱

犬の気管虚脱、気管支虚脱は、気管や気管支が潰れ、空気の通りが悪くなり、パンティングや呼吸困難を引き起こす病気です。この病気の主な原因は、気管の軟骨が先天的に弱い場合や発育異常、または、肥満・加齢によって気管の周囲の筋肉で弱まってしまうためです。犬の場合、7~8歳くらいの中高齢、ポメラニアン、ヨークシャーテリア、マルチーズ、チワワ、プードルといった小型犬での発症が多いとされています。

症状としては、咳のように見られますが、フガフガする、ヒューヒューという音がするのが特徴です。

犬の気管について獣医師が詳しく解説します。

同じような症状に「逆くしゃみ」がありますが、こちらは生理現象です。どちらも数秒から1分程度で落ち着きますが、逆くしゃみであれば、口を閉じているか、あるいは口を開いていても舌が外に出ることはありません。また、症状が治ると何事もなかったようになります。これに対して気管虚脱や気管支虚脱は呼吸が苦しくなるため、多くの場合、犬は口を大きく開けたり、舌を突き出したりするようになるのです。また、パンティングの症状が治まってもだるそうな様子が見られます。

肺炎

肺炎とは、肺の中にある肺胞と呼ばれる小さな袋やその周辺に炎症を起こす感染症です。肺炎の原因の多くは、ウイルスや細菌感染ですが、寄生虫によるもの、また、刺激性の薬物やガスを吸い込むなども原因になります。

犬が肺炎になると、咳込んだり鼻水が止まらなくなったり、また、咳が出ず、苦しくて震える場合もあります。さらに、重症化するとパンティングや呼吸困難を引き起こし、命にかかわるおそれがあります。

犬の肺炎について獣医師が詳しく解説します。

心臓の疾患

肺水腫

主に心臓病で肺の中に水がたまり、肺の機能が低下してしまう状態です。酸素と二酸化炭素を交換する肺胞という組織が水でつぶれてしまい、呼吸困難になります。

犬が肺水腫を患うと、進行とともに咳やパンティング、呼吸困難が悪化し、口を開き前足を突っ張ったような姿勢をとる場合があります。

犬の肺水腫について獣医師が詳しく解説します。

僧帽弁閉鎖不全症

僧帽弁閉鎖不全症は、犬の心臓病で最も多く見られ、心臓の左心房と左心室の間にある僧帽弁が変形してうまく閉じなくなり、血液が逆流してしまう病気です。早期は無症状ですが、進行すると運動や興奮時に咳が見られるようになります。さらに、病気が進行すると、疲れやすく、痩せてしまい、パンティングや呼吸困難が現れます。

高齢の小型犬に多く、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、マルチーズ、シー・ズー、チワワ、ポメラニアン、プードル、ペキニーズ、パピヨンといった犬種が好発(発症する頻度が高い)犬種とされています。

犬の僧帽弁閉鎖不全症について獣医師が詳しく解説します。

心筋症

心臓は筋肉からできていて、その筋肉が収縮して血液を全身に送り出すポンプのような働きをしています。心筋症とは、その筋肉=心筋に異常が起こり、心臓の機能が低下してしまう病気です。心臓の働きが悪くなると、酸素を含んだ血液が体内をうまく循環できなくなります。これにより体内に酸素が不足するため、呼吸数が増えたり、息が荒くなったりとパンティングの症状が現れるのです。なお、心筋症の明らかな原因は、まだ解明されていません。

そのほか犬の心臓病について獣医師が詳しく解説します。

熱中症

熱中症とは、体温の上昇によって循環不全(心臓から体の臓器や組織に十分な血液の循環ができない状態)や、脳、体内組織の酸欠を引き起こす病気です。犬が熱中症になると、苦しそうにパンティングをするようになります。

犬の熱中症について獣医師が詳しく解説します。

犬の息が苦しそうな場合の対処法

犬をうつ伏せにして呼吸を楽にしてあげましょう

エアコンを使用して、室温を一定に保ちましょう。そして、犬が楽な姿勢をとれるようにしてあげてください。基本的には、うつ伏せが犬にとって一番呼吸しやすい姿勢です。顎の下にタオルや枕を置くと呼吸が楽になることがあります。なお、横向きや仰向けの姿勢は、肺が圧迫されてしまうので基本的には避けるべきですが、胸の下に痛みがある場合は横向きがいいでしょう。

犬の異常なパンティング、こんな症状が見られたらすぐに病院へ

犬の異常なパンティング、こんな症状が見られたらすぐに病院へ

様子を見てもいい場合

犬の運動後や興奮時など原因が明らかで、落ち着かせて症状がなくなる場合は自宅で様子を見ても問題ないでしょう。ただし、安静にして室温を下げて5分以上が経過しても犬の呼吸状態が落ち着かない場合や、どんどんパンティングの症状が悪化するようであればすぐに受診してください。

また、呼吸が悪化する原因がわからない場合は、様子を見ずに病院に連絡しましょう。

犬の呼吸が荒く、受診を強く勧める場合の症状

愛犬がパンティングに加え、次のような状態であれば病院を受診してください。

  • 上を向いて呼吸している
  • 努力呼吸(通常時と異なり、胸郭や肩を大きく動かしながら努力的に行う呼吸)が続いている
  • 伏せることができない
  • 咳が続いている
  • 舌の色が青や紫色になっている
  • 歯ぐきや頬の内側などの粘膜が白っぽい

受診の際は、愛犬の呼吸状態を動画で撮影しておき、また服用している薬があれば、病院に持参してください。

まとめ

呼吸の異常は、さまざまな病気が背景にあることや変調の兆しであることを忘れないでください。また、病気によって治療法が大きく変わります。そのため、あまり様子を見ることはお勧めできません。対応が遅れると命にかかわることが多いため、できるだけ早く病院に連絡して、獣医師の指示に従ってください。

犬の呼吸の症状の関連記事

そのほか気になる犬の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「犬の症状」を併せてご覧ください。

犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。