犬の熱中症の症状、その見分け方と対策について

犬の熱中症ってどんな病気? その原因とは

犬の熱中症の症状と原因

―暑い日でも愛犬の散歩は欠かせませんが、熱中症が心配です。

熱中症は、高温多湿な環境下で体の水分や塩分が失われたり、体温調節がうまくできなくなったりして起こるさまざまな症状の総称です。

犬は体温調節が苦手で熱中症になりやすい

犬はもともと体温調節が非常に苦手で、暑さに弱い動物です。さらに体全体が毛で覆われていて、地面との距離も近いため、夏場の散歩は人間以上に熱中症になりやすいと言えます。

―犬の体温調節がうまくいかなくなるのはどうしてですか?

私たち人間は、体の中に熱がこもると、全身に汗をかいて体温を下げています。

一方、犬は肉球にしか汗腺がないため、全身で汗をかけません。パンティング(口を開けて舌を出しハァハァと呼吸する方法)で唾液を蒸発させたり、涼しい場所に移動したりするしか体温の調節方法がないのです。

犬は効率よく体温を下げられず、体の中に熱がこもりやすいため、熱中症になりやすい傾向があります。

5月ごろから秋口まで、高温多湿な日は季節を問わず、注意が必要

―犬が熱中症になってしまう気温は、何度くらいでしょうか?

外気温が25℃を超えると、犬は熱中症のリスクが高まると言われています。しかし、犬の熱中症は気温だけでなく、湿度や輻射熱(ふくしゃねつ:暑い日差しや地面からの熱など)も大きく関係しています。

そのため、夏場だけでなく、気温が上昇し始める5月ごろから秋口まで、また高温多湿な日は季節を問わず、犬の熱中症には注意が必要です。

犬が熱中症に陥りやすい状況

―犬が熱中症になりやすい状況について教えてください。

外飼い

愛犬を外飼いしている場合は、室内と違って温度や湿度の調節が難しく、輻射熱の影響も受けやすいため、熱中症になりやすいと言えます。

高温多湿の室内

外気温が高い日にエアコンをつけていない場合や、窓を閉め切って風通しが悪い室内は高温多湿になりやすく、愛犬の熱中症のリスクが高まります。

過度な運動

人間と同じように、犬も激しい運動をすると体温が上昇します。犬は体温調節が苦手なため、過度な運動は人間以上に熱中症のリスクが高いと言えます。

炎天下での散歩

炎天下での散歩は輻射熱の影響を受けやすく、運動による体温上昇も重なって、熱中症のリスクが非常に高まります。

車での外出

車内に愛犬を留守番させるのは危険です。何らかの原因でエンジンが切れてエアコンが止まってしまうと、10~15分程度で車内の温度が一気に上昇するおそれがあり、熱中症のリスクが高まります。

熱中症になりやすい犬種と特徴

―熱中症になりやすい犬種、体質や特徴について教えてください。

短頭種の犬

特性上、短頭種の犬は呼吸がしづらいため、パンティングによる体温調節がうまくできず、熱中症になりやすい傾向があります。

北方原産、または厚い被毛の犬

寒い地方を原産とする犬種は、寒さに耐えられるように被毛が二重構造になっているため、夏場は体温が上昇しやすく、熱中症に注意が必要です。

子犬や老犬

子犬は活発に動くため、体温が上昇しやすく、体温調節機能も未熟です。一方、老犬は足腰の痛みで動きが鈍かったり、睡眠時間が長かったりして涼しい場所への避難が遅れやすく、体温調節機能も衰えている可能性があります。そのため、子犬も老犬も熱中症のリスクが高いと言えます。

肥満傾向の犬

肥満傾向の犬は、体を覆う厚い脂肪が体の熱を閉じ込めやすいため、心臓に負荷がかかり、熱中症になりやすい傾向にあります。また、脂肪が気道を圧迫してしまうため、パンティングによる体温調節がうまくいかないので注意が必要です。

心臓病、腎臓病、呼吸器疾患など既往症がある犬

持病で呼吸がしづらい、脱水しやすいなどの要因がある犬は、熱中症になりやすいと言えます。

黒い毛並みの犬

黒は熱を吸収しやすい色です。愛犬の被毛が黒色の場合、日差しが強い場所での熱中症のリスクが高まります。

犬の熱中症の見分け方。こんな症状ならすぐ病院へ

―犬の熱中症の見分け方、症状、また、動物病院に行くタイミングについて教えてください。

軽度で見られる症状

  • よだれを垂らす
  • パンティング

愛犬が、軽度の熱中症にかかると、上昇した体温を下げようと呼吸が速くなり、よだれをたくさん垂らすようになります。

犬のパンティングは日常的によく見られる行動で、熱中症かどうか見分けがつきにくいかもしれません。暑い日に愛犬が運動をしていないのにパンティングをしていたり、いつもと異なるパンティングの様子が見られたりした場合は、熱中症の疑いがあるため、動物病院を受診しましょう。

中度で見られる症状

  • 嘔吐(おうと)
  • 下痢
  • ふらつき
  • 立てない

愛犬の熱中症が進行すると、嘔吐や下痢、ふらふらして立ち上がれないなどの症状が現れます。さらに悪化する前に、すぐに動物病院を受診しましょう。

重度で見られる症状

  • 痙攣(けいれん)
  • 意識がなくなる

愛犬にけいれんや意識障害が見られる場合は、短時間で死亡してしまうおそれがあります。動物病院で処置をしても回復しなかったり、回復しても後遺症が残ったりする可能性があります。

犬が熱中症になってしまった場合の応急処置とは?

犬の熱中症の応急処置と予防法

自宅の場合

―愛犬が熱中症かもしれない場合、自宅でできることはありますか?

愛犬に熱中症が疑われる場合は、一刻も早く動物病院で治療を受けましょう。動物病院に電話をしている間や車での移動中は、次のような応急処置をして、愛犬の体を冷やしてください。

  • 保冷剤や氷などを体に当てる
  • 体全体に流水をかける
  • 飲み物(常温の水で構いません)を少しずつ飲ませる

冷やす場所は、太い血管がある脇や股などがおすすめです。応急処置で状態が回復したように見えても、念のため動物病院を受診してください。

外出時の場合

―愛犬が散歩やお出掛けときに熱中症になったら、どう対処すればいいのでしょうか?

愛犬をすぐに日陰や屋内など涼しい場所に移動させ、可能であれば体に水をかけて冷やします。かかりつけの動物病院が遠方の場合は、付近の動物病院に連絡をして判断を仰いでください。

犬の熱中症対策、予防するには?

―犬が熱中症にならないために、どんな対策をすればいいのでしょうか?

室内飼いでの熱中症を防ぐ方法

人間と犬、どちらも熱中症になりやすい条件はほとんど同じです。外気温や湿度が高い日はエアコンをつけて、室内の温度と湿度を調節してください。日当たりが良い部屋は、室温が上がりすぎないようにカーテンを閉めておきましょう。

犬用の熱中症対策グッズとして、アルミプレートやクールマットなどが市販されています。犬は暑いと感じると、自ら涼しい場所に移動して体温を調節するため、部屋にこれらのグッズをひとつ置いておくと安心です。

留守番の時間が長い場合は、愛犬がエアコンのリモコンを誤って操作して電源を切ってしまったり、エアコンが効いていない部屋に閉じ込められたりしないよう、しっかり対策しておきましょう。

外飼いでの熱中症を防ぐ方法

外飼いの場合、夏場だけは室内飼いにするのが理想です。室内飼いが難しい場合は、日陰を作ったり犬小屋の中にアルミプレートを敷いたりして、涼が取れる工夫をしましょう。また、水遊びで体をクールダウンさせるのも効果的です。

散歩時、外出時の熱中症対策

―散歩やお出かけの際の対策、持って行くと役立つ熱中症対策グッズについてご紹介ください。

夏場の散歩は日中を避け、気温がまだ上がっていない朝方に行いましょう。アスファルトが熱をもっている夕方は、直接手でアスファルトを触って、熱くないか確かめてから愛犬を外に出しましょう。

日中に出かける際は、犬用カートを使ったり、抱っこしたりしてなるべく屋外で歩かせないようにすると、体温上昇を防げます。また、ネッククーラーやクールタオルなどを首に巻いたり、こまめな水分補給をしたりするのも効果的です。

まとめ

犬は体温調節が苦手なため、人間以上に暑さに弱く、気温や湿度が高い日は熱中症のリスクが高まります。留守番の時間が長い場合や日中の外出時には、特にしっかり熱中症対策をして、愛犬と一緒に暑い時期を元気に乗り切りましょう。

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犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。