猫が食べてはいけない危険な植物とは?気になる症状と対処法を獣医が解説

最終更新日:2024年03月25日

猫は猫草を食べて、毛玉を吐きやすくするという話を聞いたことがあるかと思います。しかし、肉食である猫は、植物の成分を分解するのが得意ではなく、身の回りのありふれた植物の中に食べてはいけない危険なものがあるのです。

ここでは、猫に有害な植物と、誤食によってどのような症状が起こり、どう対処すべきかを獣医師が詳しく解説します。

猫が食べてはいけない危険な植物とは?気になる症状と応急処置を獣医が解説

猫が中毒を起こす危険な植物とは?

―猫が食べると危険な植物を教えてください。

猫は本来肉食性の動物です。そのため、猫は植物の成分を分解するのが苦手で、猫にとって危険な植物は何百種類もあると言われています。本稿では、その中でも身近な植物について紹介します。

ユリ科の植物(危険度大)

ユリ科の植物は可憐な花が咲き、観葉植物として人気ですが、猫にとっては猛毒です。ユリのどの成分が、猫に中毒を引き起こすかは判明していません。ユリを挿していた花瓶の水を摂取するだけでも、重篤なケースに陥るおそれがあります。

植物名

  • ユリ
  • ヤマユリ
  • オニユリ
  • カノコユリ
  • テッポウユリ
  • カサブランカ
  • チューリップ
  • カタクリ
  • ヒヤシンス

危険な部位

  • 花弁
  • 花粉

症状

猫がユリ科の植物を摂取すると、嘔吐や急性腎不全を引き起こし、最悪の場合は死に至ります。詳しくは「猫がユリを食べたときの症状」をご覧ください。

ナス科の植物(危険度大)

ナス科の植物は料理で使うことも多く、とても身近な植物です。しかし、猫にとっては毒物でもあり、とても危険です。これは、アルカロイドと呼ばれる成分がナス科の植物に含まれているためです。

植物名

  • ナス
  • チョウセンアサガオ
  • ホオズキ
  • ニオイバンマツリ
  • トマト
  • ベラドンナ

危険な部位

症状

猫がナス科の植物を食べると、嘔吐(おうと)や下痢などの消化器症状や、呼吸困難、麻痺(まひ)、痙攣(けいれん)などを起こすおそれがあります。実に含まれているアルカロイドは比較的少量ですが、葉や茎、根には多く含まれているため、これらの部位を食べると重症化しやすくなります。

ツツジ科の植物(危険度大)

ツツジ科の植物は、日本では昔から親しまれています。栽培も簡単で、ガーデニングで楽しまれることも多い植物です。山にも自生しています。このように、とても身近な植物ですが、ツツジ科の植物には、グラヤノトキシンという毒性物質が含まれており、猫にとっては危険です。

植物名

  • レンゲツツジ
  • サツキ
  • シャクナゲ

危険な部位

症状

猫がツツジ科の植物を食べてしまうと、嘔吐や下痢、流涎(りゅうぜん:よだれを流すこと)、不整脈、けいれん、昏睡(こんすい)などを起こす場合があります。

猫が中毒を起こす危険な植物とは?

スミレ科の植物(危険度中から大)

スミレ科の植物は大きな花を付け、かわいらしい見た目をしており、ガーデニングなどで植えている人が多いかと思います。しかし、スミレ科の植物は、ビオリンやサポニン、ビオラルチン、グリコサイドなど毒性物質を有しており、猫にとっては毒になるおそれがあります。

植物名

  • パンジー
  • ビオラ

危険な部位

  • 種子
  • 根茎

症状

猫がスミレ科の植物を食べると、嘔吐や神経麻痺、心臓麻痺を起こすおそれがあります。これは、スミレ科の植物は種子や根茎に含まれているビオリンやサポニン、ビオラルチン、グリコサイドなどによるものです。

サトイモ科の植物(危険度低)

サトイモ科の植物は気温の変化に強く、丈夫で育てやすいため、観葉植物として人気です。家庭で育てている人が多いサトイモ科の植物ですが、猫にとっては危険なシュウ酸カルシウムという物質を多く含んでいます。

植物名

  • ポトス
  • カラジューム
  • ディフェンバキア
  • モンステラ

危険な部位

  • 根茎

症状

猫がサトイモ科の植物を食べると、口内炎や皮膚炎、嘔吐などの症状を示す場合があります。シュウ酸カルシウムが口腔内の粘膜や皮膚に対して刺激を与えると、これらのような症状を引き起こします。

キク科の植物(危険度低)

キク科の植物は、日本でも古くから園芸植物として栽培されている人気な花のひとつです。仏花としても定番で、日本人にとっては、とても身近な品種のひとつですが、猫にとっては毒となるセスキテルペンやラクトンといった物質を含んでいます。

植物名

  • マーガレット
  • ダンゴギク
  • デージー
  • フジバカマ

危険な部位

症状

猫がキク科の植物の葉や葉の汁に触れると、皮膚炎を起こすおそれがあります。また、葉を食べると嘔吐や下痢をする場合があります。

多肉植物(危険度低)

多肉植物は、その特徴的な見た目から観葉植物として人気です。多肉植物は、丈夫で栽培の仕方が簡単です。しかし、多肉植物の中には、バーバロインという毒性物質や、とげを持っているため、猫にとっては危険です。

植物名

  • アロエ
  • サボテン

危険な部位

  • とげ

症状

猫がアロエを食べてしまうと、アロエに含まれているバーバロインという成分により、下痢や腎炎を起こしてしまう場合があります。

また、サボテンのようにとげのある植物に触れてしまうと、触れた部分の皮膚を傷つけてしまうおそれがあります。

そのほか身近な植物では、季節の花であるアジサイ、アサガオ、ヒガンバナや、観葉植物として人気の高いドラセナ(幸福の木)、ポインセチア、アイビーなども猫にとって危険です。

上記以外にも、猫にとって危険な植物は多数あります。猫と暮らす空間に植物を置く際は、危険性がないかを必ず事前に調べましょう。

猫が危険な植物を食べてしまったときの対処法

猫が危険な植物を食べてしまったときの対処法

家庭内でできる応急処置はないので、すぐ病院へ

―愛猫が有毒な植物を誤食した場合、自宅でできる応急処置について教えてください。

基本的に家庭内でできる応急処置はありません。そのため、誤食の疑いがある場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。受診の際にはいつ、何を、どれくらい食べたのか、また、どのような症状がどのくらいの頻度でいつから現れているのかをメモしておき、獣医師に伝えると問診や診断がスムーズに進みます。

病院での対処法

―病院ではどのような処置をするのですか?

植物がまだ胃の中にある場合

誤食後すぐで、まだ植物が胃の中にあると思われるケースでは、薬を投与して吐かせる処置を行う場合があります。1回の処置で終わる場合もあれば、なかなか吐かないと何度も繰り返し処置をする場合もあります。

植物が吸収されてしまった場合

植物が吸収され、症状が特に現れない場合は経過観察になることがあります。

症状が現れている場合は、症状に合わせて治療します。下痢や嘔吐で脱水がある場合は、点滴により水分を補います。下痢や吐き気が止まらない場合は、薬を使うこともあります。

※こちらの診療は参考例です。平均や水準を示すものではありません。診療費は病院によって異なります。

猫にとって安全な植物とは?

猫にとって安全な植物とは?

―猫に無害な植物を教えてください。

ASPCA(アメリカ動物虐待防止協会のデータベース)のウェブサイトで猫に無害な植物を確認できます。自宅に新しく植物を置く場合や、すでに置いている場合は、こちらで確認しておくと安心です。

ASPCA(アメリカ動物虐待防止協会のデータベース)
https://www.aspca.org/pet-care/animal-poison-control/toxic-and-non-toxic-plants

以下に、猫にとって無害な代表的な植物を紹介します。

猫草

猫草という種類の草はありませんが、一般的に猫草と呼ばれている植物には下記のようなものがあります。

  • エン麦
  • ライグラス
  • 燕麦

猫が猫草を好む理由は正確には解明されていませんが、毛玉を吐きやすくしたり、便秘を予防したりなどの効果があると考えられています。

猫に無害な観葉植物

  • ガジュマル
  • アレカヤシ
  • サンスベリア など

猫に無害な花やハーブ

  • バラ
  • ホウセンカ
  • ツバキ
  • ガーベラ
  • カモミール
  • 大葉 など

猫の観葉植物や花の誤食を予防するには?

―猫が観葉植物の草や花を誤って食べないようにするには、どんな対策をすればいいのでしょうか?

木酢液を吹きかける

猫は木酢液の匂いを嫌がります。そのため、植物に吹きかけておけば近寄りにくくなります。

高い位置に置く

猫が登りづらい高い位置に置くと誤食を防げます。

風が当たらないようにする

風が当たって葉が揺れると、猫の興味を引いてしまう場合があるため、植物は風が当たらないような所に置きましょう。

キャットフードを変更する

猫がお腹を空かせると植物を食べてしまうおそれがあるため、空腹にならないように食いつきのいいフードに変更すると効果がある場合があります。

まとめ「猫に有害な植物を把握し、近づけないようにしましょう」

ユリやナス、ツツジなど身近な植物でも、中には猫にとって有害で、中毒症状や重篤な症状を引き起こしかないものもあります。猫に健康被害をもたらす植物を把握し、猫と暮らす空間にそれらを置かないように注意してください。もし猫が有害な植物を誤食したら、すぐに動物病院を受診しましょう。

愛猫に食べさせていいかを迷ったり、何かを食べて具合が悪くなったかもしれないと思ったりしたら、獣医師監修の「猫が食べてはいけない危険な食べ物」を併せてご覧ください。

猫種別の保険料

当社のペット保険は、猫種による保険料の違いがありません。

また、「ペット保険取扱の猫種分類表」に契約実績のある猫種をまとめていますが、未記載の猫種であっても保険料は同じです。

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