猫の耳が臭い、耳垢が多い原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

最終更新日:2024年03月25日

猫の耳が臭い原因には、どのような病気があるのでしょうか。また、いつもより耳垢が多いと、飼い主さんは心配になるでしょう。そこで、猫の耳が臭い原因や病院に連れて行ったほうがいい場合、予防や対処法などを獣医さんに伺いました。

耳はもちろん、いつもと違う愛猫の状態や動作について気になることがある場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。

猫の耳が臭い、耳垢が多い原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

猫の耳が臭い原因とは?

―愛猫の耳が臭いのですが、耳垢が原因ですか?

猫の場合、正常な状態ではほとんど耳垢は出ません。軽く拭くと少々脂っぽい汚れが付きますが、臭いはほぼしないのが正常です。そのため、耳から臭いがする場合は、外耳炎の可能性が高いでしょう。

猫の耳が臭い、耳垢が多い原因として考えられる病気

猫の耳が臭い、耳垢が多い原因として考えられる病気

通気性が悪く感染しやすい猫の耳の構造

―猫の耳が臭かったり、耳垢がひどく増えたりする原因として、どんなものが考えられますか?

私たち人間の耳は、耳道がまっすぐですが、猫の耳の構造は、耳道がL字型に曲がっています。そのため、通気性がやや悪く、細菌などに感染しやすい傾向にあるのです。猫の耳が臭かったり、耳垢がひどく増えたりする主な原因は、耳の炎症や感染症によるものです。

炎症や感染症だけでなく、アレルギーや異物混入も原因

感染症や炎症の主な原因は、マラセチア、細菌、ミミダニ、けがなどです。また、感染症以外では、アレルギーや異物混入も原因になります。

マラセチア感染

マラセチアに感染すると、茶色い耳垢が出て独特の発酵臭がします。マラセチアは、もともと皮膚に常在するカビです。しかし、抵抗力が落ちてしまうと異常に繁殖し、かゆみや臭いの原因になります。

細菌感染

細菌感染が原因の場合は、皮膚が赤くなる、ジクジクした黄色っぽい耳だれが出る、などが症状です。重症化すると皮膚がただれたようになり、耳から膿の臭いがします。

寄生虫(ミミダニ)

ミミダニが耳の中に寄生すると、耳垢が大量に増えます。ミミダニの寄生による耳垢は、乾いていて色が真っ黒いところが、ほかの感染症との違いです。

かゆみが非常に強いため、猫は頭を振ったり、かいたりします。かきすぎて、後頭部から耳の周囲にかき傷がたくさんできることもあるほどです。ミミダニは繁殖力が強く、耳の奥で卵を産むので、治療に時間がかかります。

ケガによる炎症

耳の片方だけに傷やかさぶたがあり、炎症が起きている場合は、けがによるものがほとんどです。耳の周辺が腫れていたり、化膿したりしている場合もあります。

アレルギー

アレルギーが原因の場合、耳の強いかゆみが主な症状です。耳を前足や後ろ足でかく、床などにこすりつける、頭を振るなどがよく見られます。

アレルギーの原因はさまざまですが、猫の場合、フードやおやつに含まれる食物が原因になる場合が多いでしょう。

異物混入

まれですが、耳の中に入った植物の実のような異物も原因です。耳道内で引っかかると、違和感から頭を振る、足で耳をかくなどの動作が増えます。特に尖った実などは、皮膚を傷付け、化膿を起こす場合もあるのです。

―感染症やダニが人間に移ることはありますか?

マラセチアが人間に移ることはまれです。マラセチアは、どんな猫でも常在菌として持っています。しかし、皮膚の抵抗力が落ちてしまうと、異常に繁殖してしまうのです。

猫の細菌感染は、人間に移る可能性があります。特に、抵抗力の弱い子供や高齢者、病気療養中の方は注意が必要です。猫の場合は、常在菌の異常繁殖や環境から感染します。

ミミダニも細菌感染同様、人間に移るおそれがあります。しかし、人間に定着することはまれで、一次的な症状で終わるでしょう。猫の感染経路は、環境中からです。

耳のトラブルになりやすい猫種とは?

―耳の病気になりやすい猫種について教えてください。

耳介(じかい)や、耳道の軟骨が固くなりやすい猫種、長毛、垂れ耳の猫種は注意しましょう。外耳炎のような耳の病気になりやすいのは、次の猫種です。

  • アメリカン・カール
  • 垂れ耳のスコティッシュ・フォールド
  • マンチカン

また、耳のトラブルは、猫の年齢によっても注意が必要です。例えば、1歳未満の若い猫の場合は「ミミダニ」、成猫の場合は「食物アレルギー」を原因とする耳のトラブルが増える傾向があります。

猫の耳垢がひどく耳が臭い!こんな症状ならすぐ病院へ

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心配がいらない場合

―猫の耳が臭うようになっても自然に治るものですか?

猫の耳は、正常な状態であればほぼ臭いがしません。そのため、耳から臭いがする状態は、自然に治ることはないので受診が必要です。耳の臭いが気にならなくても、猫が耳を気にしている様子があれば早めに受診しましょう。時間とともに悪化してしまうおそれがあります。

受診を強く勧める猫の耳のトラブルの症状

―受診すべき耳のトラブルの見分け方、併発するそのほかの症状を教えてください。

次に挙げるような症状が猫に見られれば受診してください。

  • 赤くなっている
  • ジクジクしている
  • 傷ができている
  • 異様な臭いがする
  • ずっと耳をかいている
  • 耳が横に寝ている
  • 耳の中に汚れがたまっている
  • 耳が汚いなど

以下のようなしぐさ、行動は、耳に現れる症状ではないので、飼い主さんが気付きにくく、特に注意が必要です。

  • 頭を振っている
  • かゆい耳がうまくかけずに首をかく
  • 頭を傾けているなど

―そうした症状を見落として、受診が遅れるとどうなってしまうのですか?

耳を気にしてかいているが、見た目に大きな問題がない状態で受診すれば、外用薬を用いて、7から10日程度の治療期間で良くなる場合がほとんどです。

しかし、症状が重くなると、注射や内服薬、外用薬など薬の種類が増え、治療の長期化が予想されます。そのため、治療費も多くかかってしまいます。また、再発もしやすく、猫にとっても飼い主さんにとっても負担です。

例えば、外耳炎が進行すると、耳をどこかにこすりつけたり、強くかきむしったりして、耳血腫が起きてしまうこともあります。

耳血腫は、耳介に血液がたまって、パンパンに膨らんでしまう病気です。重症化すると、耳介が縮むなど変形するおそれあります。非常に痛がるため、猫は食欲や元気がなくなり、耳を触らせてくれなくなります。

さらに外耳炎が重症化してしまうと、鼓膜が破れてしまったり、聴神経に炎症が及んだりするおそれもあります。鼓膜の近くには、聴神経があるためです。

その結果、猫は平衡感覚がとれなくなり、眼振(眼が一定方向に動く状態)やふらつき、旋回(一定方向にコマのようにぐるぐる回ってしまう状態)などを起こしてしまいます。

重症化を防ぐためにも、早期発見・早期治療が重要です。

猫の耳が臭くなる、耳垢が増えるのを予防するには?

猫の耳が臭くなる、耳垢が増えるのを予防するには?

―予防法や飼い主が日ごろから気を付けるべきことを教えてください。

日ごろから猫の耳のチェックを行い、洗浄液で清潔にしましょう。汚れがなければ、洗浄の頻度は1か月に1回でいいでしょう。洗浄液を猫の耳の穴に5滴程度垂らし、耳の根元を軽くマッサージしてティッシュで拭き取ってください。

しかし、洗浄液が耳に入ると、びっくりしてパニックになる猫もいます。その場合はティッシュやコットンに洗浄液を付けて、見える範囲をやさしく拭いてあげてください。

耳の機能が正常であれば、耳の奥の汚れを外へ押し出す自浄機能が働くため、耳の外側のケアだけで十分です。

特に外耳炎の治療経験のある猫の場合は、悪くならないように予防が大切です。再発しやすい猫の場合は、定期的に外耳炎の外用薬を入れるほうがいい場合もあります。

お勧めできないNGなケア

猫の耳の表皮は非常にデリケートです。硬い綿棒でゴシゴシこするように耳掃除をすると、かえって炎症を起こしてしまいます。

毎日耳掃除するなど、過度なケアもお勧めしません。

まとめ

正常な猫の耳は、ほぼ臭いがなく、耳垢もほとんど出ません。そのため、いつもと違う臭いがしたり、猫が気にして耳をかゆがったりする場合は、早目に動物病院を受診しましょう。

悪化してしまうと痛みを伴い、治療に時間がかかります。早期発見・早期治療で、猫ができるだけ快適に暮らせるようにしてあげましょう。

そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

獣医師 平松育子

執筆者:平松 育子

獣医師。『ふくふく動物病院』院長。京都市生まれ。山口大学農学部獣医学科(現 山口大学共同獣医学部)卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、2006年、山口市阿知須にて『ふくふく動物病院』を開業。

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