猫がご飯を食べない理由とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年02月22日

猫がご飯を食べない、食欲不振になってしまう原因としてどんな病気が考えられるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミングや対処法などを獣医師の三宅先生に監修いただきました。

猫も人と同じように、ストレスが原因で食欲がなくなってしまうことがあります。また、さまざまな病気が原因で食べられなくなってしまうこともあります。

猫の動作の異常や症状の変化は、何かの病気のサインかもしれません。気になることがあれば、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

猫がご飯を食べない理由とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

猫がご飯を食べない原因とは?

―猫がご飯を食べなくなる理由として、どんなものが考えられますか?

まず、猫は非常にグルメであり、たとえお腹が空いていても、好みのもの以外はなかなか口にしなかったり、警戒心から食べなれたもの以外を食べなかったりすることがあります。そのため、急に餌の種類を変えると、ご飯を食べなくなる場合があります。また、矛盾するようですが、大好物だったご飯を突然口にしなくなるときもよくあります。おやつは食べるのにご飯を食べない場合は、フードの内容を見直すといいかもしれません。

なお、猫はご飯を少ない量で、数回に分けて食べる習性があります。そのため、与える餌の量が普段より多い場合には、食べ過ぎによって次のご飯が食べられなくなることもあるのです。

続いて、年代ごとに考えられる原因について解説していきます。

子猫がご飯を食べない原因

フードそのものやストレス、感染症や異物誤飲の可能性も

離乳後間もない子猫であれば、ドライフードが硬すぎたり粒が大きすぎたりすると、ご飯を食べない場合があります。また、家に迎え入れてすぐの子猫は、環境変化のストレスによる食欲低下もあるでしょう。

一方、ご飯を食べない原因として考えられる病気には、ウイルス感染症やお腹の虫(寄生虫感染)、異物誤飲などがあります。

成猫がご飯を食べない原因

感情やストレス、疲労や繁殖期など一時的な場合

成猫の場合、興奮しているときや恐怖を感じているとき、ストレスや疲労を感じているときなどに、一時的に食欲が落ちる場合があります。また、避妊や去勢手術をしていない成猫であれば、繁殖期を迎えるとご飯を食べなくなることも珍しくありません

病気による猫の食欲不振は、胃腸炎や感染症、心臓病や腎臓病など多岐にわたります。

老猫がご飯を食べない原因

老化による消化機能や嗅覚の衰え

猫も年を取ると、運動量が低下して寝てばかりになります。また、消化機能が衰えたり、食欲と密接な関係がある嗅覚が低下したりします。すると必然的に食が細くなります。加えて、高齢の猫は口内炎や慢性腎臓病などにかかりやすく、これらが原因で食欲が落ちる場合もあります。

猫がご飯を食べない原因となる病気とは?

猫がご飯を食べない原因となる病気とは?

―猫の食欲がなくなる原因として、どんな病気が考えられますか?

猫がご飯を食べなくなる原因としては、口腔内の病気や内臓の病気、泌尿器の病気など、さまざまな病気が考えられます。

口腔内の病気

下記のような症状が見られる場合は口腔内の病気を疑ってみましょう。

  • よだれが出る
  • 口臭がきつくなった
  • くしゃみが増えた

猫は歯周病や口内炎のような口腔内の病気になりやすく、特に歯周病は、3歳以上の猫の80%以上がかかると言われている病気です。口腔内の病気があると、口の中が痛むため、ご飯を食べなくなります。

内臓の病気

消化器系疾患や、腎臓病、心臓病などにかかると、ご飯を食べなくなる場合があります。

消化器系疾患

嘔吐や下痢のような消化器症状がある場合は、胃腸炎や感染症、異物誤飲が疑われます。

慢性腎臓病

特に高齢猫で、水をよく飲んで薄いおしっこをたくさんしている、あるいはよく吐いている場合には慢性腎臓病の可能性があります。

肥大型心筋症

下記のような症状がある場合は、肥大型心筋症が考えられます。

  • 開口呼吸
  • 活動性の低下
  • 突然の後ろ足の麻痺(まひ)

泌尿器の病気

猫は泌尿器の病気が多く見られ、特に膀胱や尿道に起こる病気をまとめて「下部尿路疾患(FLUTD)」と呼んでいます。代表的な症状は以下のようなものです。

  • 頻尿
  • 血尿
  • 排尿痛(おしっこをするときに痛がって鳴く)

そのほか

猫白血病ウイルスによるウイルス感染症や悪性腫瘍(がん)などにかかり、食欲が落ちる場合もあります。また、痛みや神経症状によってもご飯を食べなくなることがあります。

猫がご飯を食べないだけでなく、こんな症状ならすぐ病院へ

猫がご飯を食べないだけでなく、こんな症状ならすぐ病院へ

猫がご飯を食べなくても様子を見てもいい場合

―猫がご飯を食べなくても、様子を見ていて大丈夫な場合について教えてください。

猫に元気があって、うんちやおしっこなどにまったく問題がなければ、様子を見ても大丈夫と考えられます。後述している対処法を試してみてください。

猫がご飯を食べなくなり受診をしたほうがいい場合

―猫がご飯を食べなくなった場合、受診すべきかどうかの見分け方や、併発するそのほかの症状を教えてください。

ご飯を食べない状態が続くと危険な期間

猫に何も症状がなくても、ご飯を食べない状態が以下のように続く場合は、病気を疑い、動物病院を受診してください。

  • 生後3か月以下の場合、8時間
  • 生後4~6か月の場合、16時間
  • 成猫の場合、24時間

特に猫が肥満気味である場合は、何も食べない状態が2~3日続くと、脂肪肝(肝リピドーシス)という病気になるおそれがあります。脂肪肝とは、エネルギー不足を体内に蓄えられた脂肪で補うため、過剰な脂肪が肝臓に動員されて起こる病気です。嘔吐や黄疸などの症状が見られ、重度の場合は意識障害を引き起こし、死に至ることもあります。肥満気味の猫がご飯を食べないときは、早めに動物病院を受診しましょう。

病気が疑われる症状

ご飯を食べない以外に下記のような症状がある場合は、何かしらの病気が疑われます。これらのような場合にも動物病院を受診するようにしましょう。

  • 嘔吐
  • 下痢
  • よだれ
  • 元気消失
  • 頻尿、血尿
  • 多飲多尿

緊急性が高く、早期に動物病院を受診するべき症状

以下の症状が見られる場合は、早急な治療が必要です。命にかかわる場合もあるので、様子を見ず、すぐに動物病院を受診してください。

  • 呼吸が苦しそう
  • ぐったりしている
  • 排尿が確認できていない

猫が食欲不振を起こしたときの対処法

猫が食欲不振を起こしたときの対処法

―猫が食欲不振になったら、どう対処すればいいのでしょうか?

まず、ストレスに起因する場合は、原因を取り除き、落ち着ける場所を確保するなどして、猫が安心できる環境作りに努めましょう

ご飯の種類を変えた場合は、元に戻し、子猫や老猫の場合は食べやすいように、ドライフードをふやかしたり、ウェットフードに切り替えたりしてください。

原因がわからない場合でも、ご飯の匂いや温度を工夫すると、食欲を促せます。例えば、電子レンジでご飯を少し温めてみてください。また、普段ドライフードを与えている場合には、より匂いが強いウェットフードを混ぜたり、ウェットフードそのものに切り替えたりするといいでしょう。

さらに、猫は鮮度の悪いご飯を避ける傾向があります。そのため、封を開けていない新鮮なご飯を与えたり、食べ切りサイズのドライフードに変更したりしてください。

以上のようなことを試しても、食欲不振が改善されない場合は、何らかの病気が原因であるおそれがあります。

まとめ

猫はとても敏感な生き物です。そのため、環境の変化で食欲が落ちてしまうこともあります。特に、新しく猫を迎えた場合などに先住猫が食欲不振に陥ることは少なくありません。できるだけ猫がひとりでくつろげる場所を用意し、邪魔されずに安心して食事ができるようにしてあげてください

また、フードを変更するときは、今までのフードに気付かれない程度に新しいフードを混ぜていき、徐々に新しいフードの量を増やすと、うまくいくことが多いようです。猫の健康のためにもぜひ心がけてみてください。

記事の監修者:獣医師 三宅亜希

監修者:三宅 亜希

獣医師。日本で唯一の電話相談専門病院である「電話どうぶつ病院Anicli24」院長。電話による24時間365日の相談、健康診断や未病予防の啓発、獣医師向けのホスピタリティ講演などを中心に活動。

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そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

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