猫の元気がない原因とは？病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日：2024年02月22日

猫の元気がない、じっとして動かない、大好きなおやつにも興味を示さないとなると、飼い主さんとしてはとても心配でしょう。

猫が元気をなくしてしまう原因としてどんな病気が考えられるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミングや対処法などを獣医師さんに伺ってみました。

日ごろから愛猫の様子を観察し、動作の異常や状態の変化で気になることがあれば、すぐに獣医師さんに相談してください。

• 猫に元気がない原因として考えられる病気とは？
• 猫に元気がない原因とは？
• 猫に元気がなくて、こんな症状ならすぐ病院へ
• 猫に元気がないときの対処法
• 猫に元気がないと感じたらチェックすべきポイント
• まとめ

猫に元気がない原因として考えられる病気とは？

―猫の元気がなくなる病気にはどんなものが考えられますか？

元来、猫という動物は気分屋なので、些細なことでもストレスを感じて、元気がないように見える場合があります。一方で重篤な病気が隠れていることもあるため、猫の病気への正しい理解が大切です。

ここでは「普段に比べ動きが鈍く、自らあまり動こうとしない」という状況から考えられる病気の一部をご紹介します。

食欲がない

食欲不振は多くの疾病で見られる症状のひとつですが、さらになんとなく元気がない場合には膵炎が疑われます。膵炎は特徴的な症状がありませんが、嘔吐や下痢を併発することもあります。しかし、無症状のことも多いため、発見や診断が難しい病気です。

また、高齢では腎不全や糖尿病の可能性もあり、食欲不振以外に多飲多尿（水をたくさん飲み、色の薄い尿をたくさんすること）で気付く場合があります。そのほか、がんや心筋症、肝リピドーシスなどの内臓疾患、避妊をしていないメスでは子宮疾患も疑われます。

なお、猫のウイルス性疾患には猫免疫不全ウイルス感染症（FIV）と猫白血病ウイルス感染症（FeLV）が挙げられます。ただ、家に迎えるときにはウイルスチェックが済んでいることが多く、それまでにほかの猫との接触がなければ可能性は低いでしょう。

このように、食欲不振が見られる病気は多岐にわたるため、病院で適切な診断、処置を受けることが重要です。元気がなくても食欲がある場合は、大きな病気である可能性は低いでしょう。

発熱

猫コロナウイルス感染症（FIP）という病気が考えられます。すべての年齢で発症しますが、特に子猫で多いとされています。

くしゃみや鼻水

ウイルス性上部気道感染症という、いわゆる風邪のようなものが考えられます。一部のウイルスについては、ワクチンを接種することである程度の予防が可能です。

下痢や嘔吐

子猫であれば、消化管内寄生虫の可能性を疑います。また、誤食や胃腸炎、消化管内の腫瘍の可能性も考えられます。

よだれを垂らしている

猫の口腔内に痛みや違和感があることが考えられます。具体的には歯周炎や口内炎、口腔内腫瘍です。口内炎はウイルス感染症によって発症することもあるため、若齢でも発生します。

口腔内に腫瘍がある場合、多くは食欲不振を伴います。発育不全もある場合には、門脈体循環シャント（先天性のものが多い）も考えられるでしょう。

尿の変化

猫の尿の色がピンク色や赤色に変化したり、濁っていたりする場合には、膀胱炎や尿道炎など尿路感染症、あるいは尿石症の可能性があります。

動かない、寝ていることが多い

関節炎で体に痛みがあると、猫はあまり動かなくなります。また、高血圧により失明などの視覚異常がある場合には、視界不良のためあまり動かなくなることがあります。

猫に元気がない原因とは？

―猫に元気がない原因として、どんなものが考えられますか？

ここまでは、猫に元気がない原因として考えられるさまざまな病気についてご紹介しました。

猫は他人に弱みを見せない（具合が悪いのを隠す）習性があるため、タンスや押し入れなど、狭い場所から出てこなくなることがあります。そのような場合には特に注意が必要です。

病気以外の原因としては、以下のようなことが考えられます。

気分やストレス

気分屋である猫は、些細なことが原因で元気がないように見える場合もあります。なんとなく何かが気に入らなかったり、いつもより留守番の時間が長かったり、大きな音がしたりなど、原因は多数考えられます。猫がなんらかのストレスを感じて元気がなくなるのは、実はよくあることなのです。

ケガ

猫が普段より「あまり動かない」場合、体のどこかに痛みがある可能性があります。猫はできるだけ他人に弱みを見せないようにしますので、動かないで必死に痛みに耐えていることがあります。室内飼いの猫の場合、爪が伸びすぎていたり、ジャンプの着地に失敗したり、といったことが考えられます。

気候の変化

気分やストレス同様、気候に影響を受ける猫も多いのです。気圧の変動に敏感だったり、寒暖差への順応が難しかったりする子もいます。

特に季節の変わり目は朝晩の気温差が激しく、なんとなく元気がなくなる猫が多いようです。

老化

シニア期（7歳以上）に入った高齢猫は、寝る時間が増えたり、寝ているときに起こしても反応が鈍くなったりします。あまり活発に動かなくなり睡眠時間が増えることで、「あまり元気がないな」と感じるかもしれません。

病院からの帰宅後

多くの猫は病院が嫌いです。家から出ない猫たちにとっては、自分のテリトリーの外へ出ること自体が大きなストレスになるのです。

通院の理由は、ワクチン接種、体調不良などさまざまですが、理由はなんであれ猫にとってはストレスになります。中でもワクチン接種後は痛みを感じることで、元気がなくなりがちです。また、去勢・避妊手術後は、手術や入院のストレス、傷口をなめないようにするためのエリザベスカラーや術後服による動きにくさで元気がなくなることもあります。

このように、病気ではなくても元気がなくなるのは大いにあり得ることなのです。

猫に元気がなくて、こんな症状ならすぐ病院へ

猫に元気がなくても心配いらない場合

―猫に元気がなくても心配いらない場合について教えてください。

食欲や排便・排尿が普段通りであれば、まずは2～3日様子を見てもいいでしょう。猫にとっては通院自体がストレスであり、元気がなくなる場合もあるため、元気がないこと以外に異常がないかどうかを見てあげるといいと思います。

受診を強く勧める症状

―猫に元気がなくて受診するべき状態の見分け方、緊急性の高い症状を教えてください

まず、猫がぐったりしているのであれば、迷わずすぐに受診してください。次に、呼吸がいつもより速かったり、触ったときに普段と比べて熱いと感じたりした場合にも、早期に受診してください。

また、嘔吐や下痢など消化器症状が激しい場合や足元がおぼつかないような場合にも、早期の受診をおすすめします。

猫に元気がないときの対処法

―猫に元気がなく、かつ緊急性の高い症状の場合はどう対処すればいいのでしょうか？

自宅での処置

基本的に、緊急性が高い場合にはご自宅での処置よりも、動物病院への受診を優先してください。

受診の際の準備

まず、かかりつけの動物病院が診察時間内なのかを確認しましょう。中には、診療時間外や休診日でも電話がつながる動物病院もあります。

かかりつけの動物病院が診療時間外の場合には、近隣で診てもらえる動物病院を探してください。万が一のときに慌てないように、日ごろから時間外で診てもらえる病院を探しておくことをおすすめします。

受診する動物病院が決まったら、事前に猫の状態を説明しておくといいでしょう。手術中の場合やほかに急患がいた場合、待たされたり断られたりする可能性があるためです。

猫に元気がないと感じたらチェックすべきポイント

―猫がなんとなく元気がないように感じたら、まずどのようなことをチェックすべきですか？

繰り返しになりますが、猫は体調不良を隠す習性があるため、病気なのかどうかを知るには以下の点から総合的に判断する必要があります。

• 食欲の有無（食の好みの変化）
• 排便の異常（状態や回数の変化）
• 排尿の異常（色や回数の変化）
• 嘔吐の有無（ある場合には色と回数、どのようなときに嘔吐するのか）
• 睡眠時間の変化（寝起きする時間に変化はないか、睡眠環境に変化はないか）
• 運動の変化（動きがゆっくりなのか、まったく動かないのか）
• 最近ストレスはなかったか（精神的なものだけではなく、気候や環境の変化も含む）
• 心拍数や呼吸数の変化（普段に比べ極端に速かったり遅かったりしないかどうか）
• 体温（おなかや耳など皮膚の薄いところを触り、いつもより熱かったり冷たかったりしないかどうか）
• 触って嫌がるところはないか（そもそも触られることが嫌なのか、場所によるのか）

できる範囲でかまわないので、様子を記録したメモ、嘔吐物があればそれも持参することをおすすめします。

まとめ

「元気がない」という猫の症状は、ほぼすべての病気に現れるものですが、病気でなくても元気がなくなることはよくあります。

しかし、中には緊急性を要するものもあります。だからこそ、ただ様子を見るのではなく「いつから・どのように元気がないのか」をしっかり把握するようにしましょう。

元気がないことには、いつも一緒に生活をしているご家族が一番に気付くはずです。「なんとなく普段と違うな」と思ったら、どんな様子かメモをとるようにするといいでしょう。

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そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。