猫が水を飲まないのは何かの病気?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年03月27日

愛猫が水を飲まなくて心配に思うことはありませんか。猫が水を飲まない原因や対処法、病院に連れて行くタイミングなどを獣医師の三宅先生に監修いただきました。

水を飲まないまま長く過ごすと、それが原因で病気を発症してしまう場合があります。愛猫の普段と異なる行動やしぐさに気になることがあれば、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

猫が何日も水を飲まない!原因と対処法を獣医師が解説

猫が水を飲まない原因とは?

―うちの猫はあまり水を飲みません。何かの病気なのでしょうか?

猫は犬と比べるとあまり水を飲まない動物です。特に気温が低い場合はほとんど水を飲みません。もともと水に乏しい砂漠地帯で暮らしてきた猫たちは、あまり水を飲まなくても生きていけるように、腎臓の機能が発達していると言われています。

猫が一日に必要な水の量

猫が一日に必要な水の量

―猫は一日にどれくらいの水を飲めばいいのですか?

健康な猫が一日に必要とする水の量は、体重1kgあたり約30~50mlとされています。例えば、3kgの猫であれば一日あたり約90~150mlが必要です。

ところで、動物は猫に限らず、飲水以外にも食事から水分を摂取します。ウェットフードは水分が多く、75~90%を含みます。そうした食事をしていれば、実は十分な水分量を摂取していると考えられるのです。

例えば、1缶150gの缶詰の水分含有量が80%だった場合、これだけで120mlの水分を摂取していることになります。このように食事から十分な水分を摂取していれば、個体差や環境により違いはありますが、猫がさほど飲水をしなかったとしても、あまり気にしなくていいということになります。

飲水量の測り方

―猫の飲む水の量は、どうやって測ればいいのですか?

お皿に入れる水の量を決め、新しく水を替えるときにどのくらい減っているか、蒸発分を加味して計量カップで測ってみるといいでしょう。

食事から摂取する水分の計算方法

―食事から水分量を測るにはどうすればいいですか?

キャットフードの多くがパッケージに、水分量を表示しています。これを基に水分量を計算してみましょう。

例えば、85gのウェットフードで水分が82.5%と表示されている場合には、85g×0.825=70.125gとなり、約70gが水分です。水は1gあたり1mlですから、およそ70mlの水分を摂取したことになります。

猫が水を飲まずにこんな症状が見られる場合は病院へ

心配のいらないケース

―水を飲まない期間が何日間くらいなら、様子を見ていても大丈夫ですか?

猫が食事からの水分摂取が期待できないうえに水を飲まないとなると脱水が心配ですので、あまり長い間様子を見ないほうがいいでしょう。

しかし、受診前に猫の飲水状況や脱水のサインを確認してみてください。

  • 食事はウェットフードか(フードの含水量が多ければ、飲水量は少なくてもあまり問題になりません)
  • 皿以外の場所から飲水をしている素振りはあるか

さらに、脱水のサインも見てあげましょう。

  • 排尿量が減ったり尿が濃くなったりという変化はないか
  • 口の中が乾いていないか、首の後ろを軽くつまんだときにすぐに戻るか、毛づやが悪くなりパサついていないか

受診を強く勧めるケース

―水分不足が原因で緊急を要する猫の症状について詳しく教えてください。

以下の場合には速やかな受診をお勧めします。

  • 元気や食欲がない
  • 排尿をした形跡がない
  • 嘔吐や下痢をしている

水分不足に限らず、猫の様子がいつもと違う場合には、かかりつけの先生に相談しましょう。

猫が水を飲まないことで起こる病気は?

猫が水を飲まないことで起こる病気は?

―猫が水を飲まないことで起こりうる病気について教えてください。

尿石症

尿石症とは、尿路(尿道や膀胱など)に作られた石により、炎症や尿路閉塞を起こす病気です。主な症状として、排尿姿勢をとるが排尿できない、血尿、頻尿などが挙げられます。

水の摂取量が減ると尿の濃度が濃くなり、また、長い間尿が尿路にとどまると、尿路結石を形成してしまう場合があるのです。また、オスはメスに比べ、尿道が細いため、尿道閉塞のリスクが高まります。外科的な処置が必要となったり、命にかかわったりする場合もあるので、早期にかかりつけの先生に相談してください。

尿路疾患

膀胱炎や尿道炎は、猫の泌尿器系疾患の中でも頻発する病気です。通常、動物の体には自浄作用のような自らの体を守る防御機構が存在しています。しかし、さまざまな理由によってこれが破綻してしまうと、細菌感染が起きてしまいます。その原因のひとつが水分摂取量の不足による尿量減少です。

症状として、少量頻回の排尿、排尿時の痛み(痛みによって排尿を我慢し、さらに悪化することもある)、トイレへ行っても排尿しない、血尿などが挙げられます。このような場合には様子を見ずに、早めに動物病院を受診してください。尿検査を行ったうえで、注射や内服薬による治療を開始します。

猫の水分不足を防ぐ方法

―普段水を飲まない猫に水を飲ませる方法はありますか?

猫の性質上、すべてのものに対して好き嫌いがはっきりしていると考えていいと思います。つまり、猫は気分次第で食事も水も取らないという状態に陥りかねないのです。

猫が気に入る器で、どこでも水を飲めるように

食器を替えてみるといいかもしれません。陶器やステンレスのような材質を選び、サイズや深さも検討します。お皿を置く高さも猫の好みがあるようなので、床に置いたり、台の上に置いたりなど気に入るものを探してみてください。

また、水飲み場は1か所にする必要はありません。食事をする場所だけに限定せず、キャットタワーにも置くなど、複数用意してあげるといいでしょう。

猫の気に入る水の状態を探してみましょう

すべての猫が食器から飲水するわけではありません。蛇口からチョロチョロ流れている水しか飲まない猫、お風呂に少しだけたまった水を好む猫などさまざまです。また、温かい水を好む猫もいるため、温度を変えてみるといいかもしれません。愛猫がどんな水なら飲んでくれるのかをいろいろ試してみてください。

猫がどうしても水を飲んでくれないときの対処法

猫がどうしても水を飲んでくれないときの対処法

―猫が何をしても水を飲んでくれないときはどうすればいいですか?

ウェットフード

まずはウェットフードを試してみてください。ウェットフードの多くは、およそ8割の水分が含まれているため、猫が簡単に水分を摂取できます。また、ウェットフードはドライフードに比べ、猫が自然界で食べている小動物などに成分が近いことが知られています。

スポイト

中にはドライフードしか好まない子もいます。猫自身で飲水をしない場合には、スポイトや注射器で少しずつ水をあげてみてください。猫に水を強制的に飲ませることは大変なので、まずは口の脇を濡らす程度から始めるといいでしょう。無理やり与えると、トラウマになることがあるため注意が必要です。

おやつ

水分量の多いおやつも発売されています。食事や飲水のみで必要水分量の摂取が難しい場合には、おやつに頼るのもいいと思います。ただ、水分摂取を目的とするあまり、おやつに偏った食生活にならないように十分気を付けてください。

まとめ

猫はもともと砂漠の生き物であると言われていて、少ない水分を上手に活用する達人です。そのため、あまりたくさん水を飲まずに、濃い尿を排泄します。ですが、積極的に水分を取り排尿をすることは、泌尿器系のトラブルを予防する効果があるため、できれば猫にも水分をとってほしいものです。ウェットフードを上手に利用して、無理なく水分補給を行えるといいですね。

記事の監修者:獣医師 三宅亜希

監修者:三宅 亜希

獣医師。日本で唯一の電話相談専門病院である「電話どうぶつ病院Anicli24」院長。電話による24時間365日の相談、健康診断や未病予防の啓発、獣医師向けのホスピタリティ講演などを中心に活動。

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