猫の発情期はいつから?見られる行動や対応策を獣医師が解説

最終更新日:2024年02月22日

猫がうるさいほど大きな声で鳴いたり、トイレ以外の場所でおしっこをまき散らしたりしたら、発情期を迎えているのかもしれません。

猫の発情について、何歳から始まり、どのくらいの期間続くのか、また、発情行動を抑える方法などを獣医師さんに伺いました。

猫の発情期はいつから?見られる行動や対応策を獣医が解説

猫の発情期はいつから始まるのか?

日照時間が延びるとメス猫は発情期を迎える

―猫は発情期を迎えると大きな声で鳴くようになりますが、何月から始まっていつごろ終わるのですか?

オス猫には発情期がないため、ここではメス猫の発情期を説明します。 メス猫の発情には日照時間が関係しており、一日の日照時間が長くなると発情するようになります。

メス猫の発情期は春と夏がピーク

メス猫は一定の季節ごとに発情期が来る季節繁殖動物です。国内の自然光の下で飼育すると、1~8月が繁殖季節になります。そのため、この時期に入ると発情を繰り返すのです。

人工照明により発情期が引き起こされる場合も

―10月を過ぎても発情期が終わらない場合もあるようですが。

発情の誘発メカニズムは、自然光だけでなく人工の照明でも適用されます。メス猫を12時間以上の照明下の室内で飼育した実験があります。すると、季節に関係なく1年中発情を繰り返し、繁殖が可能という結果が得られました。

そのため、室内飼いの猫は、秋や冬になっても発情を繰り返す可能性があります。

オス猫はメス猫に誘われて発情する

―発情期のないオス猫はどのようにして発情するのでしょうか?

オス猫は、発情したメス猫の鳴き声や、フェロモンなどの匂いのアピールに誘発されて発情します。

猫が初めて発情期を迎えるのは、生後いつから?

猫が初めて発情期を迎えるのは、生後いつから?

―猫は何歳ごろから発情するようになるのでしょうか?

猫が初めて発情を迎える時期は、一般的に生後6~10か月とされています。ただし、品種や出生の季節、環境、また性別によっても異なるため一概には決められません。

メス猫の場合

一般にメス猫の性成熟は生後6~10か月で、体重が2.5kg以上になったときと考えられています。しかし、4か月齢で発情を示す早い個体もいます。

オス猫の場合

オス猫は、生後6~9か月ごろには精巣が発達し、精巣内に精子が認められます。この時期から始まるのが、マウンティングやマーキングなどです。

オス猫の性成熟はメス猫に比較してやや遅く、本格的な交尾が可能となる時期は生後9~12か月とされています。

長毛種の場合

―猫種によって、初めて発情を迎えるタイミングに違いはありますか?

ペルシャやメインクーンのような長毛種は、短毛種に比較して性成熟が遅めです。

猫の発情は生涯続く

―猫の発情は何歳まで続くのでしょうか?

猫は基本的に生涯発情し続けます。閉経のようなものはなく、発情周期はなくなりません。

メス猫の発情周期と行動について

―発情期のメス猫はどのような行動が見られますか?

メス猫の発情には「発情周期」と呼ばれるサイクルがあります。発情周期を構成するのは「発情前期」「発情期」「発情後期」「発情休止期」の4期間です。メス猫の行動は、これらの期間で異なります。

それぞれの期間の特徴は次のとおりです。ただし、いずれの期間も日数や行動を明確には区分できません。

発情前期

すり付けなどの行動が始まる時期(約1~5日間)

  • 普段よりもやや活発になる
  • 排尿の回数が増える
  • 飼い主に対して普段以上に甘えるようになる
  • この時点ではまだ交尾を受け入れない

発情期

オス猫を受け入れる時期(約4~10日間)

  • 普段聞いたことのないほどうるさく、大きな声で鳴く(calling)
  • かがんで腰を高く持ち上げ、足踏みをする(lordosis)
  • 交尾を促す姿勢を取り、床を転げ回る(rolling)
  • トイレ以外の場所でも排尿するようになる
  • 交尾を受け入れる

発情後期

排卵をして卵胞が退化する時期(約1日間)

  • 交尾を受け入れなくなる

発情休止期

次の発情期までの休憩期間(約5~16日間)

  • 妊娠した場合は次の繁殖期まで発情しない
  • 排卵しなかった場合は5~16日ほど経過すると再び発情する
  • 交尾を受け入れない
メス猫の発情周期と行動について

オス猫の発情行動

―発情したオス猫の行動を教えてください。

オス猫にはメス猫のような発情周期はありません。発情したメス猫の鳴き声やフェロモンなどのニオイのアピールに反応して発情します。

オス猫に見られる発情行動は次のとおりです。

  • 尿マーキング(スプレー行動)をする
  • 大きな声で鳴く
  • 落ち着きがなくなる
  • メス猫の発情の鳴き声や匂いで気配を察知し、その方向へ行こうとする
  • 多頭飼育の場合、ほかの猫に対して攻撃的になる

猫の発情行動を抑えるには?

―猫の発情行動を抑える方法はありますか?

避妊・去勢手術

メス猫は卵巣や子宮を摘出する避妊手術、オス猫は精巣を摘出する去勢手術を行うと、ほぼ発情しなくなります。妊娠もしないので、繁殖させる予定がなければ手術が確実でしょう。

たくさん遊ぶ

暇な時間を作らず、遊びに気持ちをもっていけば、猫の発情行動はある程度抑制されると考えられます。

掃除を徹底

尿マーキングや体をこすり付けると、匂いやフェロモンが付着します。猫の発情はこれらに刺激されて起こるため、部屋の掃除を徹底して発情を誘発させないようにします。

爪とぎを用意

爪とぎで発情のストレスを緩和させます。

外を見せない

猫に屋外の様子を見せると、外に出たい欲求が高まり、発情行動につながると考えられます。そのため、外を見せないのも発情を抑える方法のひとつです。

戸締りを厳重に

猫は、音や発情の匂いを察知すると外に出たがる欲求が高まります。そのため、普段以上に戸締りを徹底し、誤って外に逃げられないようにしましょう。

NGな対処

―綿棒を使ってメス猫の発情を抑えられると聞いたのですが。

発情期を早く終わらせるために、メス猫の会陰部(膣や尿道の出口あたり)を刺激する方法もあります。しかし、一般家庭での対処方法としてはお勧めできません。衛生面で良くありませんし、会陰部を傷つける可能性もあります。

発情は生理的な行動なので、しつけでのコントロールは困難です。叱ってやめさせようとしたり、マタタビを与えすぎたりするのはやめましょう。

発情行動を抑えるのに適した避妊・去勢手術のタイミング

発情行動を抑えるのに適した避妊・去勢手術のタイミング

初めての発情を迎える前が適期

―猫に避妊・去勢手術をするとすれば、どんなタイミングがいいのでしょうか?

メス猫の場合

メス猫は生後約6~10か月で性成熟し、初めての発情を迎えるとされています。避妊手術は、初めての発情を迎える前が適期(適した時期)です。

オス猫の場合

オス猫も体の発育と精巣の発達が認められ、かつ性成熟する前、生後6か月を越えるころが去勢手術の適期と言えるでしょう。

発情中の避妊手術はできるだけ避ける

―すでに発情を迎えてしまった、発情中の猫に避妊・去勢手術を行えますか?

発情中でも避妊手術・去勢手術は行えます。しかし、メス猫の発情時期には子宮の血流が増えたり、免疫が下がったりしているため、リスクが上がります。特に理由がない限り、避妊手術は発情時期を避けたほうがいいでしょう。猫の発情中に無理して避妊手術を行うよりも、体調が落ち着くのを待ってから手術を再検討してください。

オス猫の場合は発情していても手術に影響はありません。しかし、精神的に落ち着かず攻撃的になっている場合は、少し落ち着くのを待ってからでもいいでしょう。

避妊・去勢手術のメリット

メリットは次のとおりです。

  • 子宮や卵巣、乳腺といった生殖器系の病気を予防できる
  • 性的な欲求行動によるストレスを取り除ける
  • 望まない妊娠を避けられる
  • 外出や縄張り意識といったオス猫独特の行動を抑えられる
  • 鳴き声や臭い、排泄物による近隣トラブルを未然に防げる

避妊・去勢手術のデメリット

  • 二度と繁殖できなくなる
  • 病気ではないのに全身麻酔をかけるリスク
  • 避妊・去勢手術後に肥満になる可能性が高まる

まとめ

猫の発情は生理的・本能的なものです。飼い主が考える以上に体や行動の変化が強く、猫にとって大きなストレスになる場合もあります。猫の生活環境に合わせて発情と向き合ってあげましょう。

そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。