猫の発情期はいつから?見られる行動や対応策を獣医師が解説

最終更新日:2024年07月09日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

猫がうるさいほど大きな声で鳴いたり、トイレ以外の場所でおしっこをまき散らしたりしたら、発情期を迎えているのかもしれません。

猫の発情について、何歳から始まり、どのくらいの期間続くのか、また、発情行動を抑える方法などを獣医師さんに伺いました。

猫の発情期はいつから?見られる行動や対応策を獣医が解説

猫の発情期はいつから始まるのか?

日照時間が延びるとメス猫は発情期を迎える

―猫は発情期を迎えると大きな声で鳴くようになりますが、何月から始まっていつごろ終わるのですか?

オス猫には発情期がないため、ここではメス猫の発情期を説明します。 メス猫の発情には日照時間が関係しており、一日の日照時間が長くなると発情するようになります。

メス猫の発情期は春と夏がピーク

メス猫は一定の季節ごとに発情期が来る季節繁殖動物です。国内の自然光の下で飼育すると、1~8月が繁殖季節になります。そのため、この時期に入ると発情を繰り返すのです。

人工照明により発情期が引き起こされる場合も

―10月を過ぎても発情期が終わらない場合もあるようですが。

発情の誘発メカニズムは、自然光だけでなく人工の照明でも適用されます。メス猫を12時間以上の照明下の室内で飼育した実験があります。すると、季節に関係なく1年中発情を繰り返し、繁殖が可能という結果が得られました。

そのため、室内飼いの猫は、秋や冬になっても発情を繰り返す可能性があります。

オス猫はメス猫に誘われて発情する

―発情期のないオス猫はどのようにして発情するのでしょうか?

オス猫は、発情したメス猫の鳴き声や、フェロモンなどの匂いのアピールに誘発されて発情します。

猫が初めて発情期を迎えるのは、生後いつから?

猫が初めて発情期を迎えるのは、生後いつから?

―猫は何歳ごろから発情するようになるのでしょうか?

猫が初めて発情を迎える時期は、一般的に生後6~10か月とされています。ただし、品種や出生の季節、環境、また性別によっても異なるため一概には決められません。

メス猫の場合

一般にメス猫の性成熟は生後6~10か月で、体重が2.5kg以上になったときと考えられています。しかし、4か月齢で発情を示す早い個体もいます。

オス猫の場合

オス猫は、生後6~9か月ごろには精巣が発達し、精巣内に精子が認められます。この時期から始まるのが、マウンティングやマーキングなどです。

オス猫の性成熟はメス猫に比較してやや遅く、本格的な交尾が可能となる時期は生後9~12か月とされています。

長毛種の場合

―猫種によって、初めて発情を迎えるタイミングに違いはありますか?

ペルシャやメインクーンのような長毛種は、短毛種に比較して性成熟が遅めです。

猫の発情は生涯続く

―猫の発情は何歳まで続くのでしょうか?

猫は基本的に生涯発情し続けます。閉経のようなものはなく、発情周期はなくなりません。

メス猫の発情周期と行動について

―発情期のメス猫はどのような行動が見られますか?

メス猫の発情には「発情周期」と呼ばれるサイクルがあります。発情周期を構成するのは「発情前期」「発情期」「発情後期」「発情休止期」の4期間です。メス猫の行動は、これらの期間で異なります。

それぞれの期間の特徴は次のとおりです。ただし、いずれの期間も日数や行動を明確には区分できません。

発情前期

すり付けなどの行動が始まる時期(約1~5日間)

  • 普段よりもやや活発になる
  • 排尿の回数が増える
  • 飼い主に対して普段以上に甘えるようになる
  • この時点ではまだ交尾を受け入れない

発情期

オス猫を受け入れる時期(約4~10日間)

  • 普段聞いたことのないほどうるさく、大きな声で鳴く(calling)
  • かがんで腰を高く持ち上げ、足踏みをする(lordosis)
  • 交尾を促す姿勢を取り、床を転げ回る(rolling)
  • トイレ以外の場所でも排尿するようになる
  • 交尾を受け入れる

発情後期

排卵をして卵胞が退化する時期(約1日間)

  • 交尾を受け入れなくなる

発情休止期

次の発情期までの休憩期間(約5~16日間)

  • 妊娠した場合は次の繁殖期まで発情しない
  • 排卵しなかった場合は5~16日ほど経過すると再び発情する
  • 交尾を受け入れない
メス猫の発情周期と行動について

オス猫の発情行動

―発情したオス猫の行動を教えてください。

オス猫にはメス猫のような発情周期はありません。発情したメス猫の鳴き声やフェロモンなどのニオイのアピールに反応して発情します。

オス猫に見られる発情行動は次のとおりです。

  • 尿マーキング(スプレー行動)をする
  • 大きな声で鳴く
  • 落ち着きがなくなる
  • メス猫の発情の鳴き声や匂いで気配を察知し、その方向へ行こうとする
  • 多頭飼育の場合、ほかの猫に対して攻撃的になる

猫の発情行動を抑えるには?

―猫の発情行動を抑える方法はありますか?

避妊・去勢手術

メス猫は卵巣や子宮を摘出する避妊手術、オス猫は精巣を摘出する去勢手術を行うと、ほぼ発情しなくなります。妊娠もしないので、繁殖させる予定がなければ手術が確実でしょう。

たくさん遊ぶ

暇な時間を作らず、遊びに気持ちをもっていけば、猫の発情行動はある程度抑制されると考えられます。

掃除を徹底

尿マーキングや体をこすり付けると、匂いやフェロモンが付着します。猫の発情はこれらに刺激されて起こるため、部屋の掃除を徹底して発情を誘発させないようにします。

爪とぎを用意

爪とぎで発情のストレスを緩和させます。

外を見せない

猫に屋外の様子を見せると、外に出たい欲求が高まり、発情行動につながると考えられます。そのため、外を見せないのも発情を抑える方法のひとつです。

戸締りを厳重に

猫は、音や発情の匂いを察知すると外に出たがる欲求が高まります。そのため、普段以上に戸締りを徹底し、誤って外に逃げられないようにしましょう。

NGな対処

―綿棒を使ってメス猫の発情を抑えられると聞いたのですが。

発情期を早く終わらせるために、メス猫の会陰部(膣や尿道の出口あたり)を刺激する方法もあります。しかし、一般家庭での対処方法としてはお勧めできません。衛生面で良くありませんし、会陰部を傷つける可能性もあります。

発情は生理的な行動なので、しつけでのコントロールは困難です。叱ってやめさせようとしたり、マタタビを与えすぎたりするのはやめましょう。

発情行動を抑えるのに適した避妊・去勢手術のタイミング

発情行動を抑えるのに適した避妊・去勢手術のタイミング

初めての発情を迎える前が適期

―猫に避妊・去勢手術をするとすれば、どんなタイミングがいいのでしょうか?

メス猫の場合

メス猫は生後約6~10か月で性成熟し、初めての発情を迎えるとされています。避妊手術は、初めての発情を迎える前が適期(適した時期)です。

オス猫の場合

オス猫も体の発育と精巣の発達が認められ、かつ性成熟する前、生後6か月を越えるころが去勢手術の適期と言えるでしょう。

発情中の避妊手術はできるだけ避ける

―すでに発情を迎えてしまった、発情中の猫に避妊・去勢手術を行えますか?

発情中でも避妊手術・去勢手術は行えます。しかし、メス猫の発情時期には子宮の血流が増えたり、免疫が下がったりしているため、リスクが上がります。特に理由がない限り、避妊手術は発情時期を避けたほうがいいでしょう。猫の発情中に無理して避妊手術を行うよりも、体調が落ち着くのを待ってから手術を再検討してください。

オス猫の場合は発情していても手術に影響はありません。しかし、精神的に落ち着かず攻撃的になっている場合は、少し落ち着くのを待ってからでもいいでしょう。

避妊・去勢手術のメリット

メリットは次のとおりです。

  • 子宮や卵巣、乳腺といった生殖器系の病気を予防できる
  • 性的な欲求行動によるストレスを取り除ける
  • 望まない妊娠を避けられる
  • 外出や縄張り意識といったオス猫独特の行動を抑えられる
  • 鳴き声や臭い、排泄物による近隣トラブルを未然に防げる

避妊・去勢手術のデメリット

  • 二度と繁殖できなくなる
  • 病気ではないのに全身麻酔をかけるリスク
  • 避妊・去勢手術後に肥満になる可能性が高まる

まとめ

猫の発情は生理的・本能的なものです。飼い主が考える以上に体や行動の変化が強く、猫にとって大きなストレスになる場合もあります。猫の生活環境に合わせて発情と向き合ってあげましょう。

そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

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