猫の後ろ足に力が入らない原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年02月22日

猫の後ろ足に力が入らない、よろけてしまいうまく歩けない原因としてどんな病気が考えられるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。

愛猫のいつもと違うしぐさや行動は、何かの病気のサインかもしれません。気になることがあれば、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

猫の後ろ足に力が入らない原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

猫の後ろ足に異常が現れる原因とは?

ケガや病気、年齢によるもの

―猫の後ろ足がおかしい、うまく動かない場合、原因としてどんなことが考えられますか?

猫の後ろ足の動きがおかしい、またはうまく動かない原因には、ケガや病気、年齢が挙げられます。高齢の猫では、筋肉が落ちたり、関節炎による痛みが出たりすることが多く、後ろ足がうまく動かなかったり、ふらついたりするケースがあります。しかし、猫の後ろ足の不調の原因はケガや病気がほとんどです。

猫の後ろ足に力が入らない、よろける原因として考えられるケガや病気とは?

猫の後ろ足に力が入らない、よろける原因として考えられる病気とは?

―猫の後ろ足に力が入らない、ふらついたり、よろけたりする原因としてどんな傷病が考えられますか?

骨折や足裏のケガ、膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)、脳腫瘍、心筋症などの傷病が考えられます。

骨折

高い所からの落下事故や交通事故などで大きな力が加わると、後ろ足を骨折することがあります。また、骨肉腫や骨軟骨腫(こつなんこつしゅ)など、骨の腫瘍が原因で後ろ足の骨がもろくなり、骨折を引き起こすケースもあります。症状が突然現れ、足が地面に着かないようにかばいながら歩くのが特徴です。

足裏のケガ

足裏の中でも、特に肉球は傷ができやすい場所です。皮膚炎や擦り傷、やけど、伸びすぎた爪が肉球に刺さるなどが主なケガの原因です。ケガをしているほうの足をかばうように歩いたり、足裏をしつこくなめたりします。

膝蓋骨脱臼

膝蓋骨脱臼とは、膝のお皿の骨である「膝蓋骨」が、正常な位置からずれる(脱臼する)病気です。犬に比較的よく見られる病気ですが、まれに猫でも、膝蓋骨が内側に脱臼する「内方脱臼」が起こります。軽度の場合はほとんどが無症状ですが、病状が進行すると痛みが出るため、足を引きずる様子が見られます。

脳腫瘍

脳そのものに腫瘍ができる場合と、体のほかの部位にできた腫瘍から脳に転移する場合があります。良性の場合もありますが、猫の脳腫瘍は悪性のケースが多く、歩行の異常や痙攣(けいれん)、失明、性格が変わる(例えば急に攻撃的になる)などの症状が現れます。

心筋症

心筋症は、心臓が正常に動かなくなる病気です。心臓は全身に血液を送るポンプの役割をしているため、心筋症になると血液がうまく流れなくなり、血液が固まりやすくなります。また、固まった血液が血管に詰まると、「血栓塞栓症」を引き起こすことがあります。

血栓塞栓症は後ろ足に発症しやすい特徴があり、後ろ足が急に冷たくなる、後ろ足に急に痛みが生じて麻痺(まひ)する、足を引きずるなどの症状が見られます。

後ろ足に異常が出やすい猫種とは?

―上記のような病気にかかりやすい猫種や特徴について教えてください。

骨折はどの猫種にも起こり得ます。先ほど紹介したように、後ろ足の骨折は高い所からの落下や交通事故などが原因です。そのため、屋外で飼育されている、あるいは屋外へ出入りができる環境にある猫の場合、骨折しやすいと言えます。

また、猫種によってかかりやすい病気があります。膝蓋骨脱臼は、アビシニアンやデボンレックスなど、心筋症はメインクーンやラグドール、アメリカン・ショートヘアで多く発症します。脳腫瘍は人間同様、年齢を重ねるとリスクが高まる傾向にあり、高齢の猫に多く見られます。

猫の後ろ足にこんな症状が見られたらすぐ病院へ

猫の後ろ足にこんな症状が見られたらすぐ病院へ

心配がいらない場合

―猫の後ろ足に異常が見られても、一過性で放っておくと自然に治ることはありますか?

足裏のケガについては、軽度であれば自然に治ります。膝蓋骨脱臼も軽度の場合は脱臼が自然に治まることがあるので、放っておいても症状が改善する可能性があります。

ただし、脱臼を引き起こした原因を取り除いたわけではないため、再発のリスクや、気付かないうちに症状が進行する危険もあります。そのため、緊急性は高くないものの、動物病院を一度受診しておくと安心です。

受診を強く勧める症状

―受診すべき異常の見分け方、併発するそのほかの症状を教えてください。

猫に次のような症状が見られる場合、動物病院の受診を強くお勧めします。

  • 後ろ足がうまく動かず、立ち上がれない
  • 足を引きずる
  • 足を持ち上げたまま地面に着けない
  • 後ろ足が冷たい
  • けいれんや麻痺(まひ)が見られる

また、ぐったりしている、呼吸が荒い、意識がない場合は一刻を争う事態ですので、すぐに動物病院に連れて行きましょう。

―それらの症状を放置すると何が危険なのでしょうか?

心筋症や脳腫瘍の放置は突然死を招くおそれ

心筋症や脳腫瘍は、治療が遅れると生命にかかわる重大な病気です。心筋症は進行性の病気で、治療をしても完治は難しく、症状の進行を抑えることしかできません。特に血栓塞栓症を発症している場合や、咳(せき)などの症状が出ている場合は、予後が悪く、突然命を落とすケースが多々あります。

脳腫瘍も進行性の病気であるため、一刻も早く治療を受けることが重要です。腫瘍の種類や悪性度などによっては、短期間で死に至ります。

命にかかわらない病気やケガでも治るまで猫はずっと苦しむ

事故による骨折の場合、たちまち命にかかわる可能性は低いものの、後ろ足だけでなく、内臓に損傷が及んでいる場合もあります。内臓の損傷は見た目ではわかりにくく、見逃すと命の危険もあるため、一度動物病院で検査を受けましょう。

また、命にかかわらない病気でも、痛みが強い場合があります。自然に治るからといって放置すると、猫は治癒するまでずっと苦しむはずです。早めに動物病院に連れて行ければ、早く完治できる、あるいは痛みを緩和する処置が受けられる可能性があるため、受診をお勧めします。

ケガによって猫の後ろ足に異常が現れたときの対処法

ケガによって猫の後ろ足に異常が現れたときの対処法

―猫の後ろ足に異常が見られたら、どう対処すればいいのでしょうか?

足裏のケガの対処法は、ケガによって多少異なります。

擦り傷ややけどは適切に処置し、無理せず動物病院へ

出血している擦り傷は、ぬるま湯で一度きれいに洗い流したあと、清潔なガーゼで傷口を押さえて止血しましょう。やけどの場合は、タオルで巻いた保冷剤を患部にあてて冷やしてください。

爪が肉球に刺さっているときは、可能であれば爪切りをしましょう。爪が深く刺さっている場合は自宅で無理に対処せず、そのままの状態で動物病院を受診しましょう。

ケガもなく事故にも遭っていない場合は、様子を見ずに受診を

足裏にケガがなく、事故にも遭っていないのに後ろ足に異常が見られる場合は、生命にかかわる重大な病気にかかっている可能性があります。後ろ足が少しおかしいな、と感じたら様子を見ずに、動物病院を受診してください。病院嫌いの猫も多いため、愛猫を動物病院に連れて行くのが心配であれば、まずは電話で獣医師に相談してみましょう。

高齢の猫は健康診断を兼ねて動物病院へ

高齢の猫は、単に筋力が低下しただけの場合もありますが、関節炎による痛みが原因である可能性も否定できません。そのため、健康診断も兼ねて、一度動物病院の受診をお勧めします。

お薦めできないNGなケア

猫の運動量が低下したり、足の異常によって筋肉が落ちて細くなったりすると、筋肉を鍛えようと運動をさせる飼い主さんがいます。しかし、原因によっては運動が逆効果の場合もあるため、安静を心がけましょう。

まとめ

猫の後ろ足がうまく動かない原因は、後ろ足そのものに異常がある場合と、脳腫瘍や心筋症など、思いがけない病気にかかっている場合があります。特に高齢の猫の場合、年齢のせいだと思い込んで治療が遅れ、生死にかかわるケースもあるため、注意が必要です。愛猫が一日でも長く元気で生きられるよう、後ろ足がおかしいなと感じたら、すぐに動物病院を受診してください。

そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。