猫が足を引きずる原因とは?気になる病気やケガと対処法

最終更新日:2024年09月09日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

猫が後ろ足を引きずったり、足をかばうようにして歩いていたりしていたら、どんな病気やケガが考えられるのでしょうか。また、予防や対処法、飼い主さんが心がけたいことなどを獣医師さんに伺ってみました。

猫の足の異常や行動の変化は、何かの病気やケガのサインかもしれません。すぐに獣医師さんに相談しましょう。

猫が足を引きずる原因とは?気になる病気やケガと対処法

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猫が足を引きずるようにして歩く原因は?

―猫が足を引きずる、かばうようにして歩くといった異常の原因として、どんなものが考えられますか?

猫の跛行(はこう:足に均等に荷重できずに脚を引きずる、ひょこひょこと特定の脚をかばって歩くこと)の原因は、大きく分けて、「外傷性」「骨・関節の異常」「筋肉の異常」「神経系の異常」に分類できます。

外傷によって足に痛みや違和感がある場合は、それをかばうために跛行を示します。骨・関節の異常では、関節がうまく機能しないことや骨が荷重に耐えられないことが原因です。筋肉・神経系の異常では、痛みを生じるといった何らかの原因により筋肉を正常に稼働できないことにより跛行を示します。

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―猫が足を引きずる病気やけがとして、どんなものが考えられますか?

外傷性

爪のケアがうまくできておらず、爪が剥離したり割れたりしている場合や、足にトゲのようなものが刺さっていたり、粘着性の物が引っ付いていたりすることによる痛みや違和感が原因の軽度のものから、捻挫や脱臼骨折などが原因のものまでさまざまです。

痛みがあるので特定の脚をよく舐めたり、気にしたりといった素振りを見せます。また、腫れや熱感、出血を認める場合もあります。

骨・関節の異常

軟骨異形成症、骨軟化症、膝蓋骨脱臼、関節炎、変形性関節症、骨肉腫など骨にできる腫瘍が原因で跛行を示す場合があります。

そのほか気になる猫の骨・間接の病気については、獣医師監修の「猫の疾患 骨・間接の病気」をご覧ください。

筋肉の異常

筋炎、重症筋無力症、筋肉に影響する場所にできた腫瘍によるものなどがあります。

神経系の異常

神経系の異常によるものとして、椎間板ヘルニア、脳炎、髄膜炎などが考えられます。また、動脈血栓症と呼ばれる血栓が動脈に詰まり血液が流れなくなってしまう病気では、四肢の動脈に血栓が塞栓(そくせん:血管が塞がれ、血流を遮断してしまうこと)した場合、筋肉や神経が障害され跛行を示す場合があります。動脈血栓症は、心肥大症を始め循環器系の疾患を抱えている猫でよく見られます。

そのほか気になる猫の神経系の病気については、獣医師監修の「猫の疾患 神経系の病気」をご覧ください。

猫が足を引きずるようにして歩く原因は、外傷性、骨・関節の異常、筋肉の異常、神経系の異常

―どのような場合に受診すべきでしょうか?

飼い猫に跛行が認められた場合、元気や食欲が通常どおりある場合は様子を見てもいいかもしれません。しかし、先に述べたように跛行の原因となる病気には、早急に処置する必要のある疾患も含まれていますので獣医師さんを受診してください。

特に、元気や食欲がない場合、出血や腫れが認められる場合、足を地面にまったく着けることができない場合などは、至急病院に行くことをお勧めします。

―診断方法について教えてください。

跛行の原因が外傷にある場合は、診察や触診によって発見できることがありますし、骨折といった骨の異常が疑われる場合は、X線検査を実施します。

靭帯や筋肉などの軟部組織の異常が疑われる場合は、MRI検査を行う場合もあります。

神経系の異常が疑われる場合は、神経学的な検査を実施した後にMRIやCT検査を行う場合もあります。また、一部の疾患では特別な検査をする場合もあります(重症筋無力症に対するテンシロンテストなど)。

足を引きずる、足に異常が出やすい猫種や猫の特徴は?

―足に異常が出やすい猫種はありますか?

次のような猫種が病気の好発(発症する度合いが高いこと)品種として知られています。

先天性膝蓋骨脱臼にかかりやすい猫種

軟骨異形成症にかかりやすい猫種

先天性膝蓋骨脱臼や軟骨異形成症にかかりやすい猫種は足に異常が出やすい

重症筋無力症にかかりやすい猫種

重症筋無力症は、猫では非常にまれですが、下記の猫種は好発品種とされています。

関節の異常が出やすい老猫

高齢の猫では、人と同じように関節炎や変形性膝関節症などの関節の異常が出やすくなります。

―足の異常は、ほかの猫にうつることはありますか?

脚の異常は基本的に伝播することはありません。例外として、猫伝染性腹膜炎ウイルスによる脳炎の場合は、伝播する可能性がありますがまれです。

ただ、複数猫を飼っている場合や外に出している場合は、けんかによってケガをする場合があるので注意してください。また、多頭飼いの場合は、各猫にパーソナルスペースを準備して、争いを避けられる状況を作ってあげてください。猫を外に出している場合は、交通事故の危険性がありますので完全室内飼いにすることをお勧めします。

猫の足の異常の対処法・応急処置

―動物病院では、猫の足の異常をどのように治療するのですか?

外傷の場合

脚の異常の原因が外傷にある場合は、その治療を行います。

骨折や脱臼の場合

骨折や重度の脱臼の場合は、手術が必要になる場合もあります。投薬は、抗炎症剤や開放創の場合は抗生物質を投与する場合があります。

骨・関節異常の場合

骨・関節異常の場合は手術によって整復できる場合もありますが、基本的系には対症療法が中心となります。

筋肉や神経系の異常

筋肉や神経系の異常でも対症療法が中心となります。椎間板ヘルニアの場合は手術で神経を圧迫している椎間板を取り除いたり、神経にかかっている圧力を逃がしたりする処理を手術によって行うことで治療できます。

動脈血栓症の場合

動脈血栓症の場合は、血栓を溶かす薬を投与することで症状が緩和できる場合もあります。

猫が足を引きずるといった足の異常の対処法・応急処置

―家庭でできる対処法・応急処置を教えてください。

家庭で猫の跛行が見られた場合は、毛布やブランケットなどを用意して猫が安静にできる環境を整えてあげてください。その後、様子を見て病院に連れて行きましょう。

―受診に際し、記録やメモなどしたほうがいい事柄はありますか?

いつから跛行が見られたのか、ほかに何か認められる症状があった場合、病院に連れて行ったときに獣医さんに伝えてください。これらの情報は、診断の手助けになる場合があります。

―治療中の食事や生活環境は、どのようにしたらいいですか?

行っている治療にもよりますが、猫が安心して安静にできる環境を整えてあげてください。重症筋無力症の場合は、巨大食道症を併発することが多いので、立位(立った状態)で食事を取らせ、食後も数分間は立位を維持するようにしてください。

―予防法や日ごろからどんなことに気を付けたらいいのかを教えてください。

猫の跛行の原因はさまざまですので、一般的に効果的な予防法はありません。しかし、外傷は動物同士のけんかや交通事故が原因となるものが多いので、猫は外に出さないほうが良いでしょう。また、多頭飼いの場合は、猫のパーソナルスペースを確保しストレスがたまらないように工夫してください。

まとめ

猫の跛行は気付きにくいものですが、重大な疾患のサインとなっている場合がありますので、気になることがあれば病院に連れて行って獣医さんに相談してください。

そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。