猫に生理はない。陰部からの出血で考えられる病気を獣医師が解説
最終更新日:2024年07月09日
本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。
猫に生理はありません。そのため、メス猫の陰部から出血があった場合は、何らかの病気が疑われます。陰部からの不正出血の原因となる病気について獣医師さんに伺ってみました。
そのうち治るだろうと放置していると、重篤な事態になるかもしれません。気になる症状があれば獣医師さんに相談するようにしましょう。
猫に生理はあるのか?
猫に生理はない。その理由とは?
―猫にも生理はありますか?
猫に生理はありません。人間の女性や犬のメスには生理があり、性周期の中で一定期間、陰部からの出血が認められますが、メス猫には生理がないため出血は起こりません。実は、地球上で生理がある動物のほうが少なく、生理がない生き物は猫以外に数多く存在しており、猫は多数派と言えます。
―なぜ猫に生理はないのですか?
生理という現象が起こるのは、排卵の仕組みが関係しています。生理がある人間や犬の場合は、性周期において一定間隔で排卵がある「自然排卵」です。人間は受精卵が着床しなかった場合、子宮の内膜がはがれ落ちて出血に至ります。また、犬は人間とは少し異なり、妊娠に向けて子宮内部を良い環境を整える目的で子宮内面が充血していき、排卵直前に出血が起こります。
一方、猫の排卵メカニズムは「交尾排卵」です。交尾による刺激で排卵が起きるため、効率的に妊娠できるという特徴があります。そのため、メス猫の子宮内面から一定のサイクルで出血する、ということがそもそも起こりません。
メス猫の陰部からの出血で考えられる病気とは?
―猫に生理はないはずなのに陰部に出血が見られる場合、何かの病気でしょうか?
猫の陰部から出血が見られる場合、子宮や泌尿器系に異常が起きている可能性があり、以下のような病気が考えられます。
子宮の病気
子宮蓄膿症(しきゅうちくのうしょう)
子宮蓄膿症とは、子宮内の細菌感染が原因で膿(うみ)がたまる病気です。陰部から血膿(ちうみ)のような出血が見られたり、以下のような症状が現れたりします。
- 食欲がなくなる
- 飲水量の増加
- 腹部が膨らんだようになる(太ったと勘違いしやすい)
子宮蓄膿症は処置が遅れると死に至る可能性が高いため、すべての症状に当てはまらなくても早めに動物病院を受診してください。
泌尿器の病気
膀胱炎(ぼうこうえん)
猫が膀胱炎になると、多くの場合、血尿が見られ、陰部からの出血として認識されます。膀胱炎は性別に関係なくかかる病気で、原因は特発性(原因が不明であること)や尿結石、細菌性などさまざまです。症状は血尿だけでなく、以下のような症状も現れます。
- 頻尿(何回もトイレに行き、長く排尿姿勢をとる)
- 陰部をしきりになめる
- 食欲が落ちる
- お尻周りを触られるのを嫌がる
- 1回の排尿量が少ない
そのほか
流産
屋外に出るメス猫であれば、飼い主が知らないうちに妊娠している可能性もあります。うまく妊娠・出産できずに流産や死産になると、陰部から出血する場合があります。
肛門嚢炎(こうもんのうえん)
陰部からの出血と見誤りがちですが、実は肛門付近からの出血である場合、肛門嚢炎が考えられます。細菌感染を原因とし、肛門嚢に炎症が起きる病気で血膿が出ます。
 
陰部周囲から出血している場合は、どこから出血しているのかをよく観察することが大切です。
猫の陰部からの出血で、こんなときはすぐ病院へ
出血が止まっても早急に受診を
―陰部から出血があっても自然に治る場合はありますか?
症状が一時的に落ち着いて出血が止まる場合もありますが、治ったと安心してはいけません。陰部からの出血があった場合、猫が深刻な病気にかかっている可能性が高いため、たとえ血が止まったとしても、原因である病気は自然には治っていない場合がほとんどです。楽観視せず、できるだけ早急に動物病院を受診してください。
受診を強く勧める場合
―すぐに病院に連れて行ったほうがいい症状を教えてください。
猫の陰部に出血が見られ、次のような症状も併発している場合、すぐに動物病院を受診しましょう。
- 食欲がまったくない
- ぐったりしている
- 嘔吐(おうと)
- 呼吸が荒い
- 排尿姿勢はとるがまったく尿が出ていない
- 出血量が多い
ほとんど動かずぐったりしていたり、呼吸が荒かったりする場合、病気がかなり進行している可能性が考えられます。特に泌尿器が原因の場合、排尿姿勢はとるのにまったく尿が出なかったり、血だけがポタポタと垂れたりします。これは、膀胱炎を発症して尿道が詰まり、排尿できなくなっている状態です。この状態が続くと、急性腎不全を起こして死に至る可能性が高いため、早急に動物病院での対処が必要です。
猫の陰部からの出血を予防するには?
子宮の病気と膀胱炎の対策を
―猫の陰部からの出血を予防するにはどうしたらいいのでしょうか?
陰部からの出血を引き起こす可能性がある病気は、ほぼ子宮、または膀胱のどちらかに起因しています。そのため、子宮の病気を予防するには「避妊手術」が最も有効と言えます。また、膀胱炎を予防するには、原因によって対処が多少異なりますが、食事の見直しや生活ストレスの軽減が効果的です。
避妊手術のメリット
メス猫の避妊手術には多くのメリットがあります。望まない妊娠を避けられるだけでなく、子宮や卵巣の病気を100%予防できます。また、猫では90%以上が悪性とされる乳腺腫瘍(乳がん)の発生率を抑えられます。さらに、発情による行動の変化や鳴き声がなくなるため、飼い主のストレスも軽減できるでしょう。
避妊手術の注意点
メス猫の避妊手術は全身麻酔下で行われます。麻酔や手術にはリスクがあるため、術前検査をしっかり行い、獣医師からの説明を十分聞きましょう。飼い主が納得したうえで、猫にベストなタイミングで手術を受けさせてください。また、術後はホルモンバランスが変化する影響で太りやすくなるため、食事量の見直しが必要となります。
まとめ
メス猫には生理がありません。もし猫の陰部から出血がある場合、すぐに病気を疑いましょう。考えられる病気は深刻なケースが多く、たとえ出血が一時的に止まったとしても、様子見はせず、すぐに動物病院を受診してください。動物病院の診察時間外の場合は、夜間救急病院に問い合わせて早急に受診すべきかの判断を仰ぎましょう。
陰部からの出血は猫のお尻周りを注意して観察しなければ見つけにくいため、普段から体をくまなく観察したり、触ったりしておきましょう。猫が陰部をなめたり、気にする様子を見せたりするなど、行動の変化にも気付きやすくなります。猫の健康を守るため、猫とのスキンシップは欠かさないように心がけましょう。
そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。
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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社
動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。