猫のおしりが臭い原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年07月09日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

猫のおしりが、うんちの後でもないのに臭うことはありませんか? きつい臭いが続くようなら、どのような病気が考えられるのでしょうか。また、病院に連れて行くべき症状や対処法などを獣医師さんに伺いました。

猫のおしりが臭い原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

猫のおしりが臭い原因とは?

猫の肛門腺から出る分泌液は臭い

―猫のおしりが臭います。下痢もなく、うんちが付いているようには見えませんし、健康そうですが。

猫のおしりから臭いがする場合、主な原因として次の3つが考えられます。

  • 肛門腺液や便などの付着
  • 膀胱炎などの泌尿器系疾患
  • 子宮蓄膿症などの生殖器系疾患

下痢もなく、うんちの付着もない、そして泌尿器や生殖器に問題がない場合、肛門腺液が原因で臭っている可能性が疑われます。ここでは、健康な猫でも分泌する「肛門腺液」について詳しく説明します。

肛門腺液は、肛門の4時と8時方向に位置する一対の肛門嚢(こうもんのう)という器官にたまり、肛門腺から分泌されます。茶色っぽく、ドロドロしている場合もあれば、サラサラしている場合もあります。臭いは独特で、とても臭いことが多い液体です。

肛門腺液は猫のコミュニケーションツール

―肛門腺液にはどんな役割があるのですか? また、どんなときに出されるのですか?

肛門腺液には、猫たちのコミュニケーションツールとしての役割があり、自分の縄張りを示したり、相手を識別したりするのに必要です。肛門腺液は、通常うんちをするときに自然に絞り出されて分泌されます。

肛門腺液は個体差はありますが、健康な猫でも強烈に臭うのが普通です。しかし、多くの場合は一時的で持続するものではありません。

猫のおしりが異様に臭い場合に考えられる病気

猫のおしりが異様に臭い場合に考えられる病気

―猫の肛門腺液が臭いのはわかりました。でも、強烈に臭うときやずっと続く場合があるのですが、何かの病気でしょうか?

うんちなどの際に肛門腺液が分泌され、おしりに付着すると、その直後であれば異様に臭いと感じる場合があるかもしれません。これは一時的なもので、問題ない場合がほとんどです。しかし、悪臭が数日間続き、改善しない場合は、次に挙げるような肛門腺に起因する病気が考えられます。

肛門腺炎

肛門腺炎は、肛門腺液が正常に分泌されず肛門嚢の中に貯留してしまい、細菌が異常に増殖して炎症を引き起こす病気です。犬に多い病気ですが、猫が発症するケースもあります。発生要因としては、感染やアレルギー、下痢、便秘、肥満などが考えられます。

肛門腺炎の主な症状

  • 肛門を異常に気にしてなめまわしたり、床に擦り付けたりする
  • 悪臭がする
  • 肛門腺の周りが腫れる

肛門腺炎が悪化すると、肛門嚢膿瘍(こうもんのうのうよう)という状態を形成する場合もあります。肛門嚢膿瘍を形成すると、膿が出てきたり肛門腺のあたりが赤くなったり、痛みや発熱を伴う場合もあります。

肛門腺破裂

肛門腺炎が重症化し、膿が過剰に貯留すると、肛門腺が破裂する可能性があります。肛門の周囲からの出血や膿の流出が見られる場合があります。

猫のおしりが臭う! 肛門腺液が原因でこんな症状ならすぐ病院へ

猫のおしりが臭う! 肛門腺液が原因でこんな症状ならすぐ病院へ

猫のおしりが臭くても心配いらない場合

臭いの原因が肛門腺液であり、臭いが一時的であれば問題ありません。

受診を強く勧める症状

―病院に連れて行くべき症状を教えてください。

以下の症状が見られる場合は、炎症を起こしている可能性が高いため、すぐに動物病院を受診してください。

  • 肛門腺液が膿っぽい
  • 肛門腺液の臭いが以前よりもきつくなった
  • 肛門の周囲から出血している
  • 肛門の周囲から膿があふれ出ている

日ごろから猫の全身の状態を五感でよく観察し、これらの症状が出てきた場合にすぐに気付けるようにしましょう。どんな病気でも言えることですが、早期発見・早期治療が大切です。

―病院ではどのような治療を行いますか?

肛門腺炎の場合

肛門腺炎の治療は、その多くが抗生剤の投与といった内科的なものです。治療費は、抗生剤が一日あたり200円とすると、2週間で3,000円程度になります。診察代を合わせると、合計で6,000円以上必要になることもあります。

肛門腺破裂の場合

肛門腺破裂の治療は、抗生剤の投与や患部の消毒、必要に応じて縫合も行います。さらに、再発を何度も繰り返す猫には、外科手術によって肛門腺の摘出が必要になる場合があります。手術は全身麻酔下で行い、入院やその後の投薬なども必要になるので、治療費は総額5万円以上かかる場合があります。また、外科手術後には、排便異常や下痢、便失禁などを併発する可能性もありますので、リスクも踏まえたうえで選択してください。

肛門腺液で猫のおしりが臭い場合の対策

肛門腺液で猫のおしりが臭い場合の対策

猫の肛門腺絞りのやり方

―肛門腺液が猫のおしりの臭い原因である場合、その対処法や予防法について教えてください。

肛門腺を定期的に絞ることが有効です。まず、猫の尻尾を持ち上げ、肛門を露出させます。肛門膿は肛門の4時と8時の方向に一対ありますので、その辺りを指で挟みます。奥のほうから手前に向かって揉むようにすると、比較的簡単に絞れます。

猫の肛門腺絞りの頻度

―肛門絞りは、どんな猫にもしたほうがいいのでしょうか? また、頻度についておしえてください。

猫は、犬のように肛門腺が詰まってしまうことは少ないため、日ごろから絞る必要はありません。しかし、猫がおしりを気にしたり、頻繁になめたりするようなら、肛門腺がうまく排出できずにたまっている可能性があります。その都度で絞るといいでしょう。

肛門腺絞りは自宅で無理せず、動物病院やトリミングサロンで

肛門腺絞りは自宅で行えます。しかし、猫は怒りっぽい子が多いため、無理に絞ろうとするとかまれたり、引っかかれたりしてケガをする可能性もあります。また、猫との信頼関係に傷をつけてしまうかもしれません。そのため、自宅での肛門腺絞りが難しそうと感じた場合は、無理をせずに動物病院やトリミングサロンでやってもらうようにしましょう。費用は、だいたい500円程度です。肛門腺絞りのために動物病院を定期的に受診することで、爪切りや健康状態のチェックも同時にできるため、愛猫の健康維持にもつながります。

まとめ

猫の肛門周りが臭い場合、もともと臭い肛門腺液が原因であることが多く、一時的な場合は問題ありません。

しかし、おしり周りが臭い状態が数日間続く場合や、以前よりも明らかに臭くなった場合、炎症のおそれがありますので、すぐに動物病院を受診しましょう。肛門腺の炎症で起こる病気は、肛門腺炎や肛門腺破裂が考えられます。抗生剤の投与や消毒などの治療を行い、場合によっては縫合や肛門嚢の切除も必要になります。

肛門腺をうまく排出できない猫の場合は、定期的に肛門腺を絞る必要があります。飼い主さん自身で対処が難しい場合は、動物病院やトリミングサロンで絞ってもらいましょう。

そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

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