猫の声が出ない原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

愛猫の声が出ていない、またかすれたような声で鳴くことはありませんか? 愛猫の声がいつもと違う場合、何かの病気の徴候かもしれません。病院に連れて行くタイミング、予防法や治療法などを獣医師さんに伺ってみました。

猫の声が出ない原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

猫の声が出ない、かすれる原因は?

―猫の声が出ない、かすれたような声で鳴く原因を教えてください。

猫の声が出ない、あるいはかすれたような声で鳴く原因には、次のようなものが考えられます。

寝起き

私たち人間同様、猫も寝起きだとうまく声を出せず、声がかすれてしまうことがあります。

鳴きすぎ

留守番中や発情などで鳴きすぎてしまうと、喉に炎症が起こり、声がかすれることがあります。

ストレス

猫はとてもデリケートな性格です。そのため、ストレスを感じた時に声がかすれる場合があります。

避妊・去勢手術

避妊手術や去勢手術は全身麻酔をかけて行います。全身麻酔は喉から「気管チューブ」と呼ばれる管を通すため、気管チューブによる刺激で喉に炎症が起こり、声が出なくなったり、かすれたりする場合があります。

子猫で鳴き慣れていない

子猫の鳴き声がかすれて聞こえる場合は、喉に炎症が起こっているわけではなく、まだ鳴き慣れていないだけの可能性があります。

「サイレントニャー」の場合も

鳴いているようなしぐさをしているのにもかかわらず、声が出ていない場合は、「サイレントニャー」の可能性があります。

サイレントニャーは母猫に甘えるときの鳴き方です。「サイレント」とは言っても、実際は人間には聞こえないくらいの高い周波数で鳴いています。

ここまで挙げた原因以外で猫の声が出ない、あるいは声がかすれている場合には、病気の可能性も考えられます。

猫の声が出ない原因として考えられる病気とは?

猫の声が出ない原因として考えられる病気とは?

―猫の声が出なくなってしまう原因として、どのような病気が考えられますか?

猫の声が出なくなる代表的な病気には、猫風邪や咽頭炎(いんとうえん)、甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)などがあります。

猫風邪

ヘルペスウイルスやカリシウイルスなどが原因で起こる感染症で、免疫力の低い子猫や高齢猫に多くみられます。

主に鼻水やくしゃみといった風邪のような症状ですが、喉に炎症が起こると声がかすれたり出なくなったりします。

咽頭炎(いんとうえん)

咽頭炎は、鼻の奥から食道へとつながる咽頭に炎症が起きた状態です。ウイルス感染や異物誤飲などが原因で起こったり、鼻炎や口内炎などから波及して発症したりします。

猫が咽頭炎になると、咳や発熱、食欲不振などの症状が見られ、声がかすれたり出なくなったりすることもあります。

甲状腺機能亢進症

甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまう病気で、高齢の猫に多く見られます。甲状腺ホルモンは代謝を活発にする役割があるため、食欲が増したにもかかわらず痩せてくる、落ち着きがなくなる、攻撃的になるなどの症状が現れます。

また、大きな声で叫ぶように鳴いたり、夜鳴きをしたりすることも多いため、声がかれてしまうことがあります。

認知症

猫も高齢になると認知症になる場合があります。部屋の中を徘徊したり、トイレを失敗するようになったり、ごはんを食べたのにすぐにまたほしがったりと、人間の認知症と同じような症状が見られます。

また、夜鳴きをしたり、大きな声で鳴き続けたりといった症状が出ると、声がかすれてしまう場合があります。

猫の声が出ない! こんな症状ならすぐ病院へ

猫の声が出ない! こんな症状ならすぐ病院へ

猫の声が出なくても心配のいらない場合

―猫の声が出なくても様子を見ていいのはどんなときですか?

まずは猫の元気や食欲、うんちやおしっこの状態などをよく確認しましょう。異常が見られず、しばらくして元の声に戻るようであれば、問題ない場合がほとんどです。

受診を強く勧める症状

―何らかの病気が疑われて、受診すべき症状の見分け方、併発するそのほかの症状を教えてください。

以下のような症状が猫に見られる場合は、病気が原因で声に異常が出ている可能性が考えられます。

  • 咳をしている
  • 鼻水が出ている
  • 食欲がない
  • 嘔吐(おうと)や下痢などの消化器症状が見られる
  • よだれを垂らしている
  • 夜鳴きをするようになった
  • 急に性格が変わった(落ち着きがない、攻撃的になった)

特に、子猫や高齢猫に食欲不振や消化器症状が見られる場合は、脱水を起こしやすく、重度になると命にかかわるおそれがあります。

また、異物誤飲が原因の場合、食べてしまったものや量によっては命にかかわるケースもあります。

そのため、声以外にも様子がいつもと違う場合や、異物誤飲が明らかな場合には、様子を見ずにすぐに動物病院を受診してください。

猫の声が出ない場合の対処法

家庭内の対処法

―猫の声が出なくなってしまったとき、どう対処すればいいのですか?

寝起きや避妊・去勢手術の後、子猫で鳴き慣れていないなど、病気が原因ではない場合は、一時的なものがほとんどです。

時間がたてばいつもどおりの声に戻りますので、特に対処をする必要はありません。

病院での対処法

―猫の声が出なくなったら、病院ではどのような対処を行うのですか?

病気が原因の場合には、原因となっている病気によって治療が異なります。

猫風邪であれば、抗生物質やインターフェロンの投与を行います。感染症やほかの部位の炎症による咽頭炎であれば抗生物質や消炎鎮痛剤の投与を、異物誤飲による咽頭炎であれば異物の除去や解毒剤の投与を行います。甲状腺機能亢進症の場合は、抗甲状腺薬の投与を行います。

猫の声が出なくなるのを予防するには?

猫の声が出なくなるのを予防するには?

猫のストレスを軽減する

猫は環境の変化や大きな音に対してとても敏感です。そのため、以下のような環境の変化でストレスを感じます。

  • 引っ越し
  • 家族構成の変化(同居ペット含む)
  • 留守番の時間が長くなった
  • ペットホテルのような普段と違う場所で過ごす
  • 家の周囲で工事が始まった

ストレスの原因を取り除くことが一番の予防方法です。難しい場合には、スキンシップを増やしたり、落ち着ける静かな場所を作ってあげたりして、猫が少しでもリラックスできる環境に整えましょう。

猫風邪はワクチンで予防できる

猫風邪の主な原因は、ヘルペスウイルスとカリシウイルスです。また、頻度はやや低いですが、クラミジアが原因となる場合あります。これら3つによる猫風邪は、混合ワクチンの接種によって予防ができます。

混合ワクチンには3種、4種、5種混合ワクチンがあります。ヘルペスウイルスとカリシウイルスによる猫風邪は、どの混合ワクチンでも予防できますが、クラミジアによる猫風邪は5種混合ワクチンでしか予防できません。

猫の混合ワクチンは義務ではありませんが、病気予防の観点から、接種をおすすめします。

ただし、混合ワクチンの接種によって、アナフィラキシーショックや発熱、消化器症状などの副反応が見られる場合もあるため、まずはかかりつけの動物病院に相談しましょう。

まとめ

猫の声が出ていないと心配になりますが、原因はさまざまで、必ずしも病気とは限りません。

まずは猫の体調や年齢、環境の変化の有無などをしっかり確認してください。症状が長く続く、声の異常以外の症状も併発しているなど、病気が疑われる場合はすぐに動物病院を受診しましょう。

そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

猫の喉の症状の関連記事

猫種別の保険料

当社のペット保険は、猫種による保険料の違いがありません。

また、「ペット保険取扱の猫種分類表」に契約実績のある猫種をまとめていますが、未記載の猫種であっても保険料は同じです。

あ行に属する猫の種類
か行に属する猫の種類
さ行に属する猫の種類
た行に属する猫の種類
な行に属する猫の種類
は行に属する猫の種類
ま行に属する猫の種類
や行に属する猫の種類
ら行に属する猫の種類
PS保険

記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。