猫の歯が抜ける病気とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年07月09日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

猫の歯が抜けそう、抜けてしまう原因として、どんな病気が考えられるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。

猫にも歯の生え変わり時期がありますが、それ以外で抜けるのは病気によるものかもしれません。気になる症状があればすぐに獣医師さんに相談しましょう。

猫の歯が抜ける病気とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

猫の歯が抜ける原因とは?

―猫の歯が抜けるのはなぜですか?

猫の歯が抜ける主な原因は、猫の成長の時期によって次のように異なります。

幼少期

個体差はありますが、おおよそ4~6か月齢の子猫の場合、歯が抜ける主な原因は、歯の生え変わりです。この時期は、子猫が口の中に違和感を覚えるため、飼い主さんの手や服、おもちゃをかむといった行動が多くなります。また、よだれが多くなったり、口を気にしたりすることもあります。

成猫期

一番多い原因は歯周病、歯頚部吸収病巣などの病気です。

老猫期

老猫期の多くは、成猫期と同様に歯周病や歯頚部吸収病巣に加え、口腔内の腫瘍が原因です。また、老齢猫では、高齢になるにしたがい、人間と同様に痛みや腫れを伴わず自然に歯が抜ける場合もあります。

猫の歯が抜ける原因として考えられる病気

猫の歯が抜ける原因として考えられる病気

―猫の歯が抜けてしまう病気について教えてください。

成猫期以降で何らかの症状を伴い、歯が抜ける場合、以下のような病気が疑われます。

歯周病

歯周病は、歯垢に潜む細菌が歯ぐきの溝で繁殖し、その細菌が出す毒素によって歯肉に炎症を起こす病気です。歯周病になると、次のような症状が見られます。

  • 口臭がきつくなる
  • 餌の食べ方が変になる
  • よだれが多くなる

さらに進行すると、歯肉と歯の間に隙間ができ、結果として歯が抜けてしまうのです。

歯頚(しけい)部吸収病巣

歯頚部吸収病巣は、猫に多く見られ、破歯細胞(歯を壊す働きをもつ細胞)が何らかの原因で永久歯を溶かしてしまう病気です。

主な症状は、次のようなものです。

  • よだれの量が増える
  • ご飯を食べにくそうにする
  • 痛みで食欲が低下する
  • 口臭
  • 歯肉の腫れ

口腔内腫瘍

腫瘍ができると口内の構造を破壊し、歯が抜けることがあります。高齢の猫で見られる口腔内の腫瘍には、線維肉腫や扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)が挙げられ、転移することもあるため注意が必要です。そのほか、次のような症状が見られます。

  • 口の中から出血している
  • 口内炎がある
  • 口臭がきつい
  • できものができている
  • 食事を食べたがらない など

猫の歯が抜けてこんな症状なら病院へ

猫の歯が抜けても様子を見ていいケース

―猫の歯が抜けても、病院に連れてかなくていい場合はありますか?

子猫で歯の生え変わりだと考えられる場合は、様子を見ていて大丈夫です。また、高齢の猫では、歯を支える土台が緩くなって自然に抜ける場合があります。口内や口元を痛がる、フードを食べたがらないなどの症状がなければ様子を見ていいでしょう。

受診を強く勧めるケース

―病院を受診すべきタイミングや見分け方について教えてください。

下記のような症状が見られる場合は、歯周病、口腔腫瘍、歯頚部吸収病巣などが疑われるので、詳しく検査してもらいましょう。

  • 餌の食べ方がいつもと違う
  • 餌を口の片側で食べている
  • 口を触れたくなさそう
  • よだれが多くなる
  • いつもと違う口臭がする

また、歯の生え変わりをしている子猫を除き、歯が抜けそうな場合も一度受診されることをおすすめします。

猫の歯が抜けたのを放置するリスク

猫の歯が抜けたのを放置するリスク

歯周病は、歯が抜ける原因となるだけでなく、放置すると体の中に細菌が侵入し、心臓や腎臓といった臓器にも影響を及ぼします。また、口腔内腫瘍は放置すると、転移する可能性があります。進行すると重篤な症状を引き起こすことがあるので注意が必要です。

猫の歯が抜けたときの対処法

―猫の歯が抜けてしまったときは何をすればいいですか?

子猫の場合

ドライフードを基本に、状況に応じてウェットフードを

すでにドライフードを食べられる子猫の場合は、歯が抜けても、ドライフードを与えて問題ありません。食べにくそうであれば、少しふやかす、ウェットフードを混ぜて、少しやわらかくしてあげましょう。

成猫の場合

食欲があればドライフードを、食べたがらない場合はやわらかいものを

―猫の歯は何本あるのが普通ですか?

猫の永久歯は、通常30本で、犬歯が4本、切歯が12本、前臼歯が10本、後臼歯が4本です。

成猫の歯が抜けても食欲があれば、ドライフードは歯垢を落とす役割があるので、ドライフードを与えてください。

歯肉炎の痛みによって、食べたがらない場合は、何らかの口腔内疾患である可能性が考えられます。そこで、子猫の場合と同様に、やわらかくするといった工夫が必要です。このような症状の場合は、一度受診されることをおすすめします。

老猫の場合

老猫用のフードや食べやすくやわらかいものを

老猫の場合は、かむ力が少しずつ低下し、歯周病といった口腔内の問題が増えてきます。それに伴い、食べやすい老猫用のキャットフードに変更したり、ふやかしたり、ウェットフードを混ぜたりして、ご飯をやわらかくする必要が出てくるでしょう。

フードの変更は、焦らずゆっくりと

フードを変更する場合は、少しずつ変更するようにしてください。一度にフードを変更してしまうと、嫌がって食べなくなってしまう場合があるからです。初日は、通常のフード9割に新しいフードを1割、食べれば次の日は、通常フード8割、新しいフード2割といった具合に変更してください。食べなければ、前の日の割合に戻し、焦らずゆっくり変更していきましょう。

猫の歯を抜けさせないための対策

猫の歯を抜けさせないための対策

日ごろの口内ケアと動物病院での定期的なチェック

小さなころから口を開ける習慣付けを

―猫の歯を抜けさないための予防方法や、日ごろのケアについて教えてください。

予防には、家庭内での日ごろのケアと動物病院での定期的な口腔内チェックが大切です。しかし、口の中のケアに慣れていない猫の口内を見ることはとても大変なので、小さいころから口を開ける習慣付けを行いましょう。

家庭内の予防法

家庭内でできる予防方法としては、まずガーゼを指に巻き、猫の口を触ることから始めます。口を触らせてくれるようになったら、次は歯を触る、次に歯をこする、といったように少しずつ慣らしてください。そして、動物用の歯磨きグッズでケアできるようにしましょう。

年に1回は動物病院を受診

このように、歯磨きの習慣がある猫は、口の中を見せてくれやすくなります。また、1歳を過ぎたころから、年に1回は動物病院で見てもらうと、口腔内の病気の早期発見につながります。

まとめ

幼少期を除き、猫の歯が抜ける主な原因は、口腔内疾患の可能性が高いと考えられます。口腔内の治療は全身麻酔が必要で、高齢の猫や病気で体力が落ちている猫には体の負担が大きくなります。ですから、病気の早期発見と予防が大切であり、小さいころから歯のケアを行い、定期的に動物病院で口腔内を見てもらうようにしましょう。まずは、お家でできる歯磨きの練習から始めてみてください。

そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。