猫のあくびに関係する病気とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説
最終更新日:2024年07月09日
本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。
猫も、私たち人間と同じようにあくびをします。猫のあくびのほとんどは眠いときやリラックスしているときなどに出る一時的なものです。しかし、あくびをすると強い口臭がある、あくびがうまくできない場合などは、何らかの病気なのかもしれません。
猫のあくびについて、原因となる病気、その治療法や自宅での対処、注意点などを獣医師さんに伺ってみました。猫のあくびの様子がおかしいと思ったら、すぐに獣医師さんに相談しましょう。
猫のあくびとは?
―私たち人間も眠いときにあくびが出ますが、猫の場合についてはどうですか?
私たち人間が眠いときするあくびは、生理現象のひとつです。あくびが出る原因はまだはっきりとわかっていません。口を大きく開けることで脳を刺激している説や、酸素を送り込んで脳を活性化している説などがよく言われています。
猫のあくびも生理現象で、眠いときやリラックスしているときにあくびが出ます。あくびの後に鳴く場合もあるようです。
また、ストレスを感じている猫が、気分転換をするために「カーミングシグナル」として、あくびをすることがあります。カーミングシグナルとは、「カーミング(calming)=落ち着かせる」「シグナル(signal)=信号」という意味をもつボディーランゲージです。あくびによって、自分の気持ちや周囲を落ち着かせます。ほかの猫や人など、相手に対して不安や敵意がないことを示すためにも用いられます。
人間のあくびが猫にうつる説がありますが、研究はまだ進んでいないようです。そのため、愛猫にあくびがうつらなくてもがっかりする必要はありません。
一方、人間のあくびが犬にうつる研究結果はあります。ただし、あくびがうつる現象については、はっきりとした理由はわかっていません。親しい間柄でうつることが多いため、相手に対する共感から、あくびが誘発されるのではないかと言われています。
猫のあくびに関係する病気とは?
―何らかの病気が原因で猫があくびをする、あくびが増えることはありますか?
猫の場合、病気が原因であくびをしたり、増えたりすることはあまりありません。しかし、口の中の異常による痛みから、あくびが減ることがあります。あくびの回数とは関係ありませんが、あくびが臭い場合は、病気が原因である可能性が高いのです。
口内炎
口内炎は、猫免疫不全ウイルス(FIV)や猫白血病ウイルス(FeLV)などのウイルス感染による免疫力の低下や、歯垢や歯石の付着による細菌感染が原因です。あくびをしているときに口の中をのぞくと、炎症を起こし、赤くなっている部分を確認できます。病気が進行するとよく見られる症状は、口臭が強くなる、よだれが出るなどです。さらに口の痛みから食欲が落ちたり、あくびの回数が減ったりします。
歯周病
歯周病は、3歳以上の猫の8割が患っていると言われているほど、猫によく見られる病気です。原因は口内炎と同じですが、歯周病の場合は歯の根元付近に炎症が起こります。症状は、口臭やよだれ、痛みによる食欲低下、あくびの回数の減少などです。
猫風邪
猫風邪は、鼻水や咳など風邪のような症状を起こす感染症の総称で、猫カリシウイルス感染症や猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペスウイルス感染症)などが代表的です。特に、猫カリシウイルス感染症は口内炎を起こしやすいため、あくびをしたときに口臭を感じる可能性があります。
慢性腎臓病
慢性腎臓病は、老猫に多く見られます。初期はほとんどが無症状で、徐々に腎臓の機能が低下していくのが特徴です。病気が進行すると、多飲多尿や食欲の低下、体重の減少などの症状が現れます。
腎臓には、体内の老廃物を排出する働きがあります。そのため腎機能の低下が重度になると、体内に老廃物がたまる「尿毒症」を引き起こすのです。尿毒症になると激しい嘔吐(おうと)や口臭などの症状が見られ、あくびが臭います。
口腔内腫瘍
口腔内腫瘍の症状は、口臭やよだれ、口からの出血、痛みによる食欲の低下、顔の一部の腫れなどです。腫瘍ができた場所によっては、あくびで口を大きく開けたときに状態を確認できます。
車酔い
車酔いは病気ではありませんが、猫のあくびが増える原因のひとつです。あくびのほかに、よだれや鼻水が出る、落ち着きがなくなるなどの症状が現れます。食事の時間を調整したり、こまめに休憩をとったりすれば、ある程度は予防が可能です。車酔いがひどい場合は、動物病院で酔い止めを処方してもらえます。
猫のあくびで、こんな症状ならすぐ病院へ
心配のいらない猫のあくび
―どんなあくびであれば、心配いりませんか?
猫がリラックスをしている状態や、眠そうに目を細めたり閉じたりしている状態であくびをしているのであれば、心配する必要はありません。
カーミングシグナルとしてあくびをしている場合も、基本的に動物病院の受診は不要です。しかし、ストレスがかかっている状況はあまり好ましくありません。猫のストレスの原因を取り除いたり、気持ちが落ち着くような環境を作ったりして、リラックスできるようにしましょう。
受診を強く勧める猫のあくびと諸症状
―受診すべきあくびの見分け方、併発するそのほかの症状を教えてください。
あくびをしたときに口臭がする、歯ぐきや舌など口の中に赤くなっている部分がある場合は、何らかの異常が生じているサインです。次のような症状がある場合には、速やかに動物病院を受診しましょう。
- よだれが増えた
- 口元を触ると極端に嫌がる
- ご飯を食べにくそうにしている
- 食欲が低下している
- 咳や鼻水が出ている
- 激しい嘔吐がある
特に猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症や猫白血病ウイルス(FeLV)感染症、慢性腎臓病、口腔内腫瘍は放置すると命にかかわるため、疑わしい場合はすぐに動物病院を受診しましょう。
歯周病は治療が遅れると歯が抜けたり、炎症が進んで皮膚に穴が開いたりすることもあります。歯石は歯磨きをしても落とせません。口臭がない段階でも、歯石が付着している場合は、動物病院の受診をお勧めします。
猫のあくびで重い病気の徴候が見られる場合の対処法
―猫があくびをしたときに嫌な臭いがする、口臭が気になる場合、どう対処すればいいのでしょうか?
猫があくびをしたときに嫌な臭いがする、口臭が気になる場合は、自宅での対処は困難です。すぐに動物病院で治療を受けましょう。口臭は、病気によってはすでに症状が進行している可能性もあります。
口臭を起こす病気にならないように予防し、早期発見・早期治療に努めましょう。特に老猫は、歯周病や慢性腎臓病を患うリスクが高まります。定期的な健康診断をお勧めします。
まとめ
猫があくびをする姿は、非常にかわいらしいものです。しかし、日常的なあくびの観察は病気の発見につながるケースもあります。あくびをしているときに口の中をのぞき、口臭を確認して、いち早く病気に気付いてあげられるようにしましょう。
そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。
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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社
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