猫がユリを食べたときの症状と応急処置を獣医師が解説
最終更新日:2024年07月09日
ユリは人気の高い観葉植物ですが、猫にとっては猛毒の植物です。猫が誤食すると重篤な事態を引き起こす場合があります。ここでは、猫がユリを食べたときの症状と応急処置について獣医師が詳しく解説します。
猫がユリを食べると引き起こされる症状
ユリは猫にとって猛毒。中毒症状や急性腎不全を引き起こし死に至ることも
―猫がユリを食べると、何が原因で、どのような症状が現れるのですか?
実は、ユリに含まれるどの成分が、猫に対して中毒を引き起こすのかは特定されていません。ユリの種類により毒性が異なり、症状の出現時間は異なります。おおむね数時間以内に症状は現れることが多いでしょう。
猫がユリを食べたかも!? このような症状が見られたら病院へ
ユリの誤食により急性腎不全が引き起こされると考えられています。
- 急激に元気がなくなる
- 食欲がなくなる
- 嘔吐(おうと)
- 下痢
- 尿の量が減る、あるいは尿が出なくなる
嘔吐や下痢などの消化器症状から始まることがあります。消化器症状は時間の経過とともに軽減する傾向にありますが、腎障害は急激に進むでしょう。猫がユリの花や葉を誤食すると急性腎不全になり、わずか数日で死に至った事例もありますので、十分に気を付けなければなりません。いずれも早期に治療を開始することが大切です。これらの症状が見られたら、様子を見続けるのではなくすぐに獣医師に相談しましょう。
猫が食べると中毒症状を引き起こすユリの部位
―猫にとってユリのどの部位が危険なのですか?
ユリのどの部位(花、花弁、花粉、葉、茎、根など)であっても危険であると言われています。また、ユリを活けていた花瓶の水にも中毒物質が溶解するため、これを猫が飲むと中毒症状を引き起こす場合があります。
ユリ科の植物はユリ同様に危険
―ユリ科の植物はユリと同様に猫に中毒症状を引き起こすのですか?
ユリ科の植物は猫に中毒症状を引き起こします。代表的なものとしては、カサブランカやヤマユリ、オニユリ、カノコユリ、テッポウユリなどが挙げられます。名前に「ユリ」と付く花には注意が必要です。また、チューリップやカタクリ、ヒヤシンスなど、ユリ科の植物も中毒症状を引き起こすため、注意しましょう。
猫にとってユリは少量でも危険
猫がユリをなめた、少量を食べてしまったらどうなるの?
―愛猫がユリをなめたり、少量を食べてしまったりしたら、どうなってしまうのでしょうか? 様子を見ていても大丈夫ですか?
元気がなくなる、嘔吐や下痢などの消化器症状、尿が少なくなるなどの症状が現れる可能性があります。
また、ユリの毒性成分は特定されておらず、厳密な量は明確にされていません。猫が花瓶の水をなめて中毒症状を起こしたという事例があり、ごくわずかな量でも症状が現れる可能性があります。一般的に毒性の許容量は、体重に影響されます。同量のユリを誤食したとしても、体が小さければ小さいほど危険です。
猫がユリを誤食してしまったら、様子を見続けず速やかに獣医師に相談しましょう。
猫がユリを食べてしまったときの応急処置
家庭内ですべき応急処置、対処法
―愛猫がユリを食べてしまった場合、自宅でできる応急処置を教えてください。
誤食がわかっているのであれば、すぐに動物病院へ連絡しましょう。診療時間外であれば夜間救急に連絡をし、ユリを誤食した旨を伝えてください。自宅で吐かせることは危険を伴います。絶対に行わないでください。
もし、「いつ」「何を」「どのくらいの量」食べてしまったのかがわかれば、メモを取っておくと診療に役立ちます。また、嘔吐や下痢があった場合にはビニール袋に入れて、持参してください。猫がユリを誤食した場合は、一般的に腎臓に障害が出てきます。尿の量に変化はないか、元気があるか、飲水量に変わりがないかなど、猫の様子をよく見てあげましょう。
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病院での対処法
―愛猫がユリを食べてしまったら、病院ではどのような処置をするのですか?
誤食からあまり時間が経過しておらず、胃の中にユリがある場合には、催吐(さいと)処置という吐かせる処置を行い、原因物質を体外へ排出させます。また、現在の体の状況を把握するために血液検査を行います。その後、静脈点滴を行い、状況を見ながらほかの薬剤の使用を検討するでしょう。急性腎不全の場合、代謝産物や水分、電解質などが体の外に排出されなくなるので、状態によっては、透析療法を行うこともあります。
いずれにせよ、当日は帰れずに数日間入院となる可能性が高いと考えられます。入院治療や透析治療により、診療費は10万円程度かかるでしょう。
※こちらの診療費は参考例です。平均や水準を示すものではありません。診療費は病院によって異なります。
猫のユリ中毒の予防方法
―飼い主として愛猫がユリ中毒に陥らないようにするには、どんなことに注意すればいいのでしょうか。
予防策は、猫をユリ科の植物に近づけないことが最も重要です。猫が出入りする場所には、ユリ科の植物を置かないようにしてください。また、花粉にも注意が必要です。花束にユリが含まれる場合には、花粉をあらかじめ取り除き、ほかの花への付着を避けるようにしましょう。
まとめ「ユリは猫にとって猛毒であり、近づけていけない」
ユリ科の植物は、少量の誤食でも猫に中毒症状を引き起こします。また、中毒症状の進行は極めて速く、病院で処置したとしても死に至る場合があり、大変恐ろしい植物です。猫を近づけないようにしてください。
ユリに限らず、誤食への対応は時間が勝負です(胃の中に誤食したものがないと催吐処置を行えないため)。猫の誤食に気付いたら、様子を見続けることなく、できるだけ早く動物病院に相談してください。また、緊急時に慌てないよう、日ごろからかかりつけの動物病院の連絡先、休診日や診療時間外だった場合の連絡先、夜間救急の連絡先を調べておき、見えるところに貼っておくと安心です。
愛猫に食べさせていいかを迷ったり、何かを食べて具合が悪くなったかもしれないと思ったりしたら、獣医師監修の「猫が食べてはいけない危険な食べ物」「猫が食べても大丈夫なもの」を併せてご覧ください。
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執筆者:石川 愛美
日本獣医生命科学大学を卒業後、都内動物病院にて臨床獣医師として勤務。「予防獣医療」をもっと身近にすることを目指し、2019年に往診を専門とする動物病院「Animal Care Clinic TOKYO」を開設。
当たり前に存在する「いま、ここに、ある幸せ」を大切にして、健康寿命を延ばすために、食餌選びからセカンドオピニオンまで、飼い主の抱える小さな不安の解消に日々努める。
猫種別の保険料
当社のペット保険は、猫種による保険料の違いがありません。
また、「ペット保険取扱の猫種分類表」に契約実績のある猫種をまとめていますが、未記載の猫種であっても保険料は同じです。
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