猫がアルコールを飲んだときの症状と応急処置を獣医が解説

最終更新日:2024年07月09日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

アルコールは、猫が飲むと中毒を引き起こしてしまう危険なものです。愛猫がアルコールをなめてしまった、飲んでしまった場合、どんな症状が起こり、どう対処すべきかを獣医師が詳しく解説します。

猫がアルコールを飲んだときの症状と応急処置を獣医が解説

猫がアルコールを飲むと引き起こされる症状

猫はアルコールの成分を分解できないため、アルコール中毒が引き起こされる

猫にとってアルコールは非常に危険

個人差はありますが、人間にはアルコールを分解する能力があります。アルコールは、人体の酵素によってまずアセトアルデヒドという物質に分解されます。これは動悸(どうき)や吐き気、頭痛を起こす有害物質ですが、さらに別の酵素によって無害化されます。

しかし、猫は体内にアルコールを分解する酵素をもっていません。そのため、アルコールという有害な状態のまま、体の中に残ってしまうのです。

アルコールによって猫に引き起こされる症状としては、人と同じ酩酊(めいてい)状態や、死に至る場合もあります。そのため、猫にとってアルコールは、誤食の中でも危険性が高い成分と言えます。

酒類のような液体の場合は胃から早く吸収されるので、摂取から30分~3時間後くらいで症状が現れてきます。

猫がアルコールを飲むと引き起こされる症状

猫がアルコールを飲んだかも!? こんな症状が見られたら病院へ

猫がアルコールを飲んだときに見られる症状は以下のとおりです。また、リストの下方に向かうほど危険な状態であるため、これらのような症状が見られたら、すぐに動物病院に行きましょう。

  • 嘔吐(おうと)、下痢
  • めいてい状態(ふらふらする、足元がおぼつかない)
  • 呼吸異常
  • 昏睡(こんすい)状態(意識がなくなる)

アルコールが含まれる食べ物

―アルコールが含まれるもので、猫が誤飲しかねないものを教えてください。

チューハイのような甘い酒や酒類が入った菓子

真っ先に挙げられるのは酒類です。ビールのような苦い酒は、猫が口を付けることは少ないでしょうが、実はチューハイのような甘い酒の場合、猫でも飲みやすいため注意が必要です。

また、ウイスキーボンボンを始めとする酒類が入ったチョコレートや、リキュールが使われているサヴァランのようなケーキなどにもアルコールは含まれています。

発酵中のパンにもアルコールが含まれる

これらのほか、意外なものとして挙げられるのが「発酵中のパン」です。パンは、発酵過程でアルコールを生成します。オーブンで焼き上げれば大丈夫ですが、発酵中のパンを猫がいたずらして食べてしまったために、アルコール中毒になったという事例があります。パン作りが好きな飼い主さんは、気を付けましょう。

消毒用アルコールや除菌シート

食べ物以外では、アルコール含有量が高いものとして、消毒用アルコールや除菌シート(アルコールタイプのウェットティッシュ)などが挙げられます。

ただ、消毒用アルコールは、すぐに揮発します。そのため、散布してすぐに猫が口にしなければ大丈夫ですが、消毒液を噴霧する際は、猫がいないところで行ってください。

また、猫の体が汚れたからといって、全身をウェットティッシュで拭かないでください。必ずペット用のものを使用しましょう。ウェットティッシュは、猫がおもちゃだと思って遊ぶ場合がありますので、使ったらすぐに、ゴミ箱へ捨ててください。

猫がアルコールをどのくらい飲むと危険なのか

猫がアルコールをどのくらい飲むと危険なのか

猫がアルコールをなめた、少量を飲んでしまったらどうなるの?

―猫がアルコールをなめたり、少量を飲んでしまったりしたら、どうなってしまうのでしょうか? 様子を見ていても大丈夫ですか?

なめたものによっては少量でもアルコール中毒の症状が出ます。猫がアルコール類を飲んだ現場を見たら、すぐに動物病院に相談しましょう。

ただし、酒を使った食べ物を加熱した後になめたといった場合であれば、アルコールは揮発しているので、様子を見ても大丈夫です。

猫にとって危険なアルコールの摂取量

アルコールによる猫の致死量は、体重1kgあたり5.6ml

―猫はどのくらいの量のアルコールを飲むと中毒症状が出るのですか?

猫の場合、体重1kgあたり5.6mlのアルコールを摂取すると、致死量に至ると言われています。個体差がありますので一概には言えませんが、ほんの数ml飲むだけで中毒症状が現れたとしても、おかしくはありません。

猫の体重1kgあたりの種類別アルコール飲料の危険量

それでは、酒の種類別に、致死量に至る危険な量を見ていきましょう。

猫は体重1kgあたり、以下の量を飲むと、命にかかわる重篤なアルコール中毒となります。

  • ビール(アルコール度数5%):110ml
  • ワイン(アルコール度数10%):55ml
  • 日本酒(アルコール度数15%):35ml
  • ウイスキー(アルコール度数40%):15ml

アルコール度数が高い酒ほど、少量でも危険です。ウイスキーに至っては、大さじ1杯(15ml)くらいでも危険な量になります。これらはあくまで致死量であって、「この量を飲んでいないから大丈夫」と言えるものではないのです。

このように、アルコールは少量で猫に症状が現れることから、ほかの中毒物質より危険と言えます。

猫がアルコールを飲んでしまったときの応急処置

猫がアルコールを飲んでしまったときの応急処置

家庭内ですべき応急処置や対処法

―猫がアルコールを飲んでしまったら、家庭でどう対処したらいいのでしょうか?

残念ながら家庭でできる応急処置はありません。まずは、動物病院に連絡してください。素人判断で吐かせようとしたり、人間用の薬を飲ませたりすることもやめてください。症状が悪化する場合があります。

猫が誤食したときに飼い主が取るべき行動は、「いつ」「何を(具体的なもの、商品名)」「どのくらい」摂取したかを把握して、医師にできる限り多くの情報を伝えることです。

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病院での対処法

―猫がアルコールを飲んでしまったら、病院ではどのような処置をするのですか?

摂取したアルコール量や時間、猫の状態に応じて、以下の治療を行います。

  • 催吐(さいと)処置(胃の内容物を吐き出させること)
  • 静脈点滴、皮下点滴
  • 強肝薬、活性炭の投与
  • 胃洗浄(猫に鎮静や麻酔をかけなければいけないので、行われることはまれです)

診療費としては、催吐処置だけの場合、5,000円程度、入院して点滴を流すのであれば2~3万円ほどかかる場合があります。

※こちらの診療費は参考例です。平均や水準を示すものではありません。診療費は病院によって異なります。

まとめ「猫にアルコールを飲ませてはいけない」

猫にアルコールを絶対に飲ませてはいけません。また、アルコールが含まれているものを猫の手が届く場所に置かないように、飼い主さんが気を付けましょう。

愛猫に食べさせていいかを迷ったり、何かを食べて具合が悪くなったかもしれないと思ったりしたら、獣医師監修の「猫が食べてはいけない危険な食べ物」「猫が食べても大丈夫なもの」を併せてご覧ください。

関連リンク

猫種別の保険料

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