猫がチョコレートを食べたときの症状と応急処置を獣医が解説
最終更新日:2024年07月09日
本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。
多くの人を魅了するスイーツの代表格チョコレートは、猫が食べると中毒を引き起こしてしまう危険な食べ物です。愛猫がチョコをなめてしまった、食べてしまった場合、どんな症状が起こり、どう対処すべきかを獣医師が詳しく解説します。
猫がチョコレートを食べると引き起こされる症状
チョコレートの成分「カフェイン」と「テオブロミン」が、猫に中毒症状を引き起こす
―猫がチョコレートを食べると、何が原因で、どんな症状が現れるのですか?
キサンチン(メチルキサンチン)誘導体であるテオブロミンやカフェインにより、およそ数時間から半日以内に、症状が猫に現れると言われています。キサンチン誘導体は高用量で延髄や脊髄を興奮させる作用があり、落ち着きがなくなったり、呼吸が速くなったり、神経過敏になったりといった症状が現れます。
猫がチョコレートを食べたかも!? こんな症状が見られたら病院へ
―猫がチョコレートを食べてしまった場合、時間の経過とともに見られる症状や、危険な状態について教えてください。
チョコレートの誤食後、2~6時間程度で猫に次のような症状が現れます。
- 嘔吐
- 下痢
- 落ち着きがない
- 尿失禁(トイレで排尿しないなど)
そして、時間の経過とともに、以下のような重篤な症状が現れ、最悪の場合には死亡することもあり得ます。
- 呼吸が速くなる
- 震え
- 発作
- 不整脈
症状の内容と進行速度は個体差が大きいとはいえ、時間の経過とともに現れる症状は、どれも危険なサインであるため、早急な受診が必要です。
―チョコレートと同じ成分が含まれる食品について教えてください。
コーヒーや紅茶、ウーロン茶、抹茶、ココア、コーラ、栄養ドリンクなどが挙げられます。また同様に、これらのフレーバーのアイスクリームを始めとする菓子類にも気を付けましょう。そのほか、カフェインを含有している人間用医薬品(痛み止めや風邪薬など)、眠気防止用のドリンク、あめ、ガムなどにも注意が必要です。
猫がチョコレートをどのくらい食べると危険なのか
猫がチョコレートをなめたり、少量を食べてたりしたらどうなるの?
―愛猫がチョコレートをなめたり、少量を食べたりした場合、どうなってしまうのでしょうか? 様子を見ていても大丈夫ですか?
従来、猫は甘みを感じづらい動物であると考えられてきました。とは言え、最近では、甘いものを好む猫もいるようです。猫に対する中毒物質のうち、カフェインは症状が出るのが早いケースもあるため、たとえ少量であっても、誤食がわかっている場合には、様子を見ずに病院で受診した方がよいでしょう。
危険な量
―どのくらいの量を食べると、中毒症状が出るのですか?
テオブロミンのLD50(50%致死量:動物に投与したときに半数の動物が死亡する量のこと)は、猫の場合は体重1kgあたり200mgです(個体差が大きく、100~200mgと表記されている文献もあります)。
また、軽度の中毒症状は猫の体重1kgあたり20mgで現れ、重度の症状は40~50mg、さらに発作は60mgで現れることが多いようです。
チョコレートに含まれるテオブロミンとカフェインの量は、カカオの含有率によって異なります。それらの量は、板チョコ1枚(50g)あたり以下のとおりです。
カカオ含有率別のテオブロミンとカフェイン量
- カカオ99%
テオブロミン:550㎎ カフェイン:60㎎
- カカオ86%
テオブロミン:495㎎ カフェイン:46.5㎎
- カカオ41%
テオブロミン:135㎎ カフェイン:18㎎(国産ミルクチョコレート)
※上記の数字は、独立行政法人 国民生活センターによる「高カカオをうたったチョコレート(結果報告)」(2008-02-06)を参照し、板チョコ1枚あたりに換算しています。
上記のとおり、高カカオチョコレートは一般的なミルクチョコレートに比べると、テオブロミン、カフェインともに含有量が多く、特に注意が必要です。例えば、2kgに満たないような子猫が誤食や誤飲をしてしまった場合、以下のようにごく少量でも、初期の中毒症状が現れるということになります。
猫が中毒を起こすカカオ含有率別のチョコレートの量
- カカオ99%の場合、およそ1かけら
- カカオ86%の場合、およそ1.5かけら
- カカオ41%の場合、およそ4~5かけら
なお、ホワイトチョコレートは、多くの場合、テオブロミン、カフェインのいずれもあまり含まれていないとは言えますが、栄養管理の観点から猫にないようにしましょう。
猫がチョコレートを食べてしまったときの応急処置
家庭内ですべき応急処置や対処法
―愛猫がチョコレートを食べてしまったら、家庭でどう対処したらいいのでしょうか?
誤食がわかっているのであれば、すぐ動物病院に連絡してください。診療時間外であれば夜間救急に連絡をし、猫がチョコレートを誤食した旨を伝えましょう。自宅で吐かせることは危険を伴いますので、行わないでください。
もし、「いつ」「何を」「どのくらいの量」食べてしまったのかがわかる場合は、メモを取っておくといいでしょう。また、嘔吐や下痢があった場合には、ビニール袋などに入れて持参してください。
なお、緊急時に関係なく日ごろから、かかりつけの医師の連絡先や休診日の場合の連絡先、夜間救急の連絡先をリストアップしておくといいでしょう。
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病院での対処法
―愛猫が大量のチョコレートを食べてしまったら、病院ではどのような処置をするのですか?
猫の誤食したものがまだ胃の中に残っていた場合は、静脈に薬剤を入れ、吐かせる催吐(さいと)処置を行います。その後、場合によっては皮下点滴、胃薬の投与などを行います。診療費は動物病院によってさまざまですが、これらの処置だけであっても、少なくとも1万円程度※は持参するといいでしょう。
なお、誤食をしたものは、摂取後ゆっくりと体内に吸収されます。猫の誤食に気が付くのが遅れ、症状が出始めた場合には、対症療法(点滴や活性炭、精神安定剤などによる)を行います。この場合は、数日の入院が必要となることもあります。
※こちらの診療費は参考例です。平均や水準を示すものではありません。診療費は病院によって異なります。
まとめ「猫にチョコレートを食べさせてはいけない」
元来、猫は甘いものに興味を示さないと言われていました。しかし、最近では好む子も増えてきたようです。このため、「猫だから大丈夫」と油断せず、日ごろから中毒症状を起こす可能性がある危険な飲食料品は、猫が開けられない戸棚に入れたり、しっかりと蓋が閉められる容器に入れたりすることを心がけましょう。
また、「ホワイトチョコレートや、その加工品であれば安全」と誤解している飼い主さんがいますが、これらは大変脂肪分が多い食品です。猫は高脂肪の食べ物を摂取すると、膵炎を起こす危険があるため、与えないようにしましょう。このほか、チョコレートを直接口にはしなくても、パッケージや銀紙を誤食し、腸管に詰まることもあるため、十分に気を付けてあげてください。
愛猫に食べさせていいかを迷ったり、何かを食べて具合が悪くなったかもしれないと思ったりしたら、獣医師監修の「猫が食べてはいけない危険な食べ物」「猫が食べても大丈夫なもの」を併せてご覧ください。
関連リンク
猫種別の保険料
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また、「ペット保険取扱の猫種分類表」に契約実績のある猫種をまとめていますが、未記載の猫種であっても保険料は同じです。
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