猫が牛乳を飲んだときの症状と応急処置を獣医師が解説
最終更新日:2024年07月17日
本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。
牛乳は、栄養価値の高い食品ですが、猫が飲むと下痢や嘔吐、アレルギーを引き起こす場合があります。愛猫が牛乳をなめてしまった、飲んでしまった場合、どんな症状が起こり、どう対処すべきかを獣医師が解説します。
猫が牛乳を飲むと引き起こされる症状
牛乳の成分「ラクトース(乳糖)」が猫に下痢を引き起こす
―猫に牛乳を与えても大丈夫ですか? 具合が悪くなるとすれば何が原因なのでしょうか?
少量の牛乳であれば問題になることは少ないのですが、基本的には猫に牛乳を与えるのは控えたほうがいいでしょう。猫が牛乳を飲んで具合が悪くなってしまう場合、牛乳中に含まれるラクトース(乳糖)という物質が原因になりがちです。
猫は先天的にラクターゼと呼ばれるラクトースの分解に必要な物質をあまり持っていません。そのため、牛乳をうまく消化・吸収できずに下痢をしてしまうことが多いでしょう。ラクターゼが不足して牛乳を飲むと下痢をしてしまう状態は人間にもよく見られます。医学領域では、この状態のことを「乳糖不耐症」と呼びます。
また、牛乳アレルギーにより体調を崩してしまう場合があります。原因物質は、牛乳中に含まれる「カゼイン」です。
―症状は、どのくらいの時間で現れるのですか?
乳糖不耐症の場合、摂取後30分から2時間程度で症状が現れることが多いようです。牛乳アレルギーの場合は、摂取後1時間以内に典型的な症状が現れます。猫が牛乳を飲んでしまった場合、このくらいの時間は様子をよく見てあげるようにしましょう。
―子猫は、母猫の母乳を飲んで大きくなりますが、これはどうして大丈夫なのですか?
猫の母乳中に含まれるラクトースの量は、牛乳中に含まれる量よりも少ないためです。子猫の体内に含まれるラクターゼの量は、猫の母乳中のラクトースを分解するには十分です。しかし、猫は牛乳に含まれる多量のラクトースを分解しきれません。
猫が牛乳を飲んだかも!? こんな症状が見られたら病院へ
乳糖不耐症の場合
- 下痢
- 元気消失
- 食欲不振
- 体重減少
牛乳アレルギーの場合
- 皮膚のかゆみ、赤み
- 下痢
- 嘔吐(おうと)
- 元気消失
- 食欲不振
- 体重減少
猫にとって好ましくない牛乳の成分が含まれる食品
―牛乳と同じ成分が含まれるものはありますか?
- ヨーグルト
- チーズ
- スキムミルク
- その他の乳製品
―猫は牛乳をよく飲んでいるイメージがあるのですが?
そういったイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、獣医学の視点ではあまり良くありません。どうしても飲ませる場合には、水で薄めたり、成分中に含まれるラクトースが少ないヤギミルクや猫用ミルクを与えたりするといいでしょう。
猫が牛乳をどのくらい飲むと危険なのか
猫が牛乳をなめた、少量を飲んでしまったらどうなるの?
―愛猫が牛乳をなめたり、少量を飲んでしまったりしたら、具合が悪くなってしまうのでしょうか? 様子を見ていても大丈夫ですか?
少量の摂取の場合は、症状が出ないこともあります。心配であれば、2時間程度は様子を見てあげたほうがいいでしょう。
猫にとって危険な牛乳の摂取量
―猫はどのくらいの量の牛乳を飲むと下痢の症状が出るのですか?
どのくらいの量を与えると症状が出るかは、その猫のラクターゼの量や体格などによりますので、一概には言えません。少量で症状が出る猫もいれば、かなりの量を飲んでも問題のない猫もいます。初めて牛乳を与える場合は特に注意しましょう。
猫が牛乳を飲んでしまったときの応急処置
家庭内ですべき応急処置、対処法
猫が牛乳を飲んでから、2時間程度は状態をよく観察します。下痢や嘔吐、脱水などの症状が現れた場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。特に子猫の場合は、脱水症状になってしまうとリスクが非常に高まります。なるべく早く動物病院に連れて行ってあげてください。脱水症状の見分け方は、「テントテスト」が有効です。
方法は非常に簡単で、猫の首から背中のあたりの皮膚を軽くつまんでひねり、持ち上げてみてください。ひねっている手をパッと離したときに、皮膚がすぐに元の状態に戻れば脱水はしていません。元に戻るまでに時間がかかる場合は脱水を起こしている可能性があります。
受診する場合は下痢や嘔吐物の色などの状態をメモしておいたり、写真を撮っておいたりしておくといいでしょう。可能であれば、排出したての下痢や嘔吐物を動物病院に持参してください。詳しい検査に使えます。
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病院での対処法
―猫が牛乳を飲んでしまったら、病院ではどのような処置をするのですか?
下痢などの症状が出ていなければ、基本的には猫の状態を確認し、経過観察となるでしょう。下痢などの症状が発現している場合には、下痢止めや吐き気止めの注射をしたり、内服を処方したりするかと思います。また、下痢や嘔吐により脱水症状が見られる場合には、点滴で水分補給をするかもしれません。
牛乳アレルギーが疑われる場合には、アレルギー検査をすることもあります。その場で採血をし、結果報告は後日になるでしょう。もし食物アレルギーであることがわかった場合には、食物アレルギー用のフードを処方されるかもしれません。
アレルギーの皮膚症状が現れている場合には、かゆみ止めの外用薬や注射をすることがあります。
まとめ「猫に牛乳を飲ませてはいけない」
猫は先天的にラクターゼという酵素をあまり持っていません。そのため、猫は乳糖不耐症のリスクが高くなっています。また、牛乳アレルギーになる可能性もあります。これらの理由から、なるべく牛乳を与えることは控えたほうが無難です。どうしても与えたい場合には水で薄めたり、ヤギミルクや猫用ミルクを与えたりしましょう。牛乳を飲んだ後に下痢などの症状が現れた場合には、すぐに動物病院を受診してください。
愛猫に食べさせていいかを迷ったり、何かを食べて具合が悪くなったかもしれないと思ったりしたら、獣医師監修の「猫が食べてはいけない危険な食べ物」「猫が食べても大丈夫なもの」を併せてご覧ください。
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