猫が人間用のチーズを食べすぎたときの症状と危険な量について獣医が解説

最終更新日:2024年07月09日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

チーズは猫が食べられるものですが、人間用のものは食べすぎると、含まれる脂質や塩分によって肥満や腎臓病を引き起こすおそれがあります。猫がチーズを食べ過ぎてしまった場合の起こり得る症状や与え方の注意点を、獣医師が詳しく解説します。

猫が人間用のチーズを食べたときの症状と応急処置を獣医が解説

猫がチーズを食べても大丈夫。ただし注意点あり

―猫にチーズを与えても問題はありませんか?

猫にとってチーズという食材は、生命に害をもたらすような成分が含まれていないため、基本的に食べても問題はありません。また、チーズには猫の健康維持に良いとされるたんぱく質やカルシウム、ビタミンAやビタミンB2といった栄養素が含まれており、栄養価の高さから与えることのメリットもあります。

ただし、「人間用のチーズ」を猫に与える場合には「猫用のチーズ」を与えるのと異なり、いくつかの注意点があります。

猫が人間用チーズを食べすぎると引き起こされる症状

チーズの塩分・脂質・乳糖などが猫にさまざまな症状を引き起こす

猫が人間用チーズを食べると引き起こされる症状

―チーズは栄養価が高いのに、どうして猫に与えるとき、注意が必要なのですか?

猫にとってチーズが栄養価の高い食材だとしても、「人間用のチーズ」は与えるべきではないでしょう。その理由を以下に分類して説明します。

塩分過多

「人間用のチーズ」には塩分が多く含まれています。例えば、プロセスチーズではひと切れ(20g)で0.6gです。人にとっては多くないように感じるかもしれません。しかし、成猫にとって一日に適量とされる塩分摂取量は2~3gであるため、おやつとして与えるにはかなりの塩分量になってしまいます。

猫が塩分を多く摂取することで心配されるのは、腎臓病や心臓病のリスクが高まる点です。特に猫は高齢になるにつれて、腎臓病のリスクが高くなる動物です。若いころから塩分摂取量には気を付けなければなりません。

脂質過多

チーズは脂質も多く含まれています。プロセスチーズではひと切れ20g中5.2gですが、注意が必要なのはクリームチーズで20g中6.6gあり、かなり高脂質です。脂質は摂取しすぎると、肥満になってしまうリスクが高まります。脂質の割合が高いチーズは気を付けなければなりません。

カロリー過多

猫の一日に必要なカロリーは3kgの成猫で160kcal程度です。「人間用のプロセスチーズ」ひと切れ(20g)のカロリーは68kcalであることから、チーズひと切れで一日に必要なカロリーの半分近くになってしまいます。カロリー過多は肥満の原因となります。

乳糖による体調不良

猫は牛乳などの乳製品に含まれる乳糖(ラクトース)を分解するラクターゼという酵素をもっていません。そのため、分解できない乳糖によって下痢をしやすくなります。

チーズは乳製品として扱われる食材のため、乳糖が含まれています。しかし、その含有量はチーズの製造過程で、ほとんどが失われてごくわずかに残るのみです。乳糖に関してはほぼ気にする必要はないと言われています。それでも特にお腹を壊しやすい体質の猫に対しては、気を付けたほうがいいでしょう。

食物アレルギー

チーズは動物性のたんぱく質や脂質が多く含まれるため、食物アレルギーをもつ猫にとっては気を付けるべき食材です。アレルギー症状を引き起こすと、嘔吐や下痢、体のかゆみなどの症状が現れる場合があります。

上記のように、「人間用のチーズ」を猫に与える際は気を付けなければならないことが多くあります。栄養価の高いチーズですので、与えるとしても、たまにあげるおやつとしての少量摂取であれば問題ないでしょう。

チーズに含まれる塩分と脂質、カロリーから猫に与えてもいい量を考える

チーズに含まれる塩分と脂質、カロリーから猫の適正量を考える

塩分・脂質ともに低いチーズをごく少量与える

―チーズには、いろいろな種類がありますが、猫にとってどのようなものが適していますか。また、一日にどのくらい与えてもいいものなのでしょうか?

猫に対して「人間用のチーズ」を与える際には、塩分やカロリーに注意しながら種類と量を決める必要があります。

塩分含有量が極力少ないものを優先的に選択し、そこから脂質やカロリーが比較的低く抑えられているチーズを選ぶのがいいでしょう。下記の表を参考にカッテージ・チーズか、モッツァレラ・チーズ、リコッタ・チーズが望ましいと言えます。

おやつとしてチーズを与える際の適正量は、一日の必要カロリー量の10%程度に抑えることが望ましいでしょう。体重3kgの猫なら、必要カロリーは160kcalですから、10%の16kcalとなり、カッテージ・チーズであれば1.6g程度が与えてもいい量と算出されます。

同様に算出すると、モッツァレラ・チーズであれば0.6g、リコッタ・チーズで1gです。

100gあたりの
食品成分
エネルギー
Kcal
たんぱく質
g
脂質
g
炭水化物
g
食塩相当量
g
カッテージ・チーズ 99 13.3 4.5 1.9 1.0
カマンベール・チーズ 291 19.1 24.7 0.9 2.0
ゴーダ・チーズ 356 25.8 29.0 1.4 2.0
チェダー・チーズ 390 25.7 33.8 1.4 2.0
ブルー・チーズ 326 18.8 29.0 1.0 3.8
プロセスチーズ 313 22.7 26.0 1.3 2.8
モッツァレラ・チーズ 269 18.4 19.9 4.2 0.2
リコッタ・チーズ 159 7.1 11.5 6.7 0.4

出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

―猫に与えるチーズの量を抑えていれば、日常的に与えても大丈夫ですか?

少量を与えてもいいとは言っても、「人間用のチーズ」を毎日与え続けることは栄養面で過剰になりやすいため、「猫用チーズ」を与えたほうが安心でしょう。また、チーズばかり偏って与え続けることは栄養バランスの面で良くありません。基本的にはキャットフードを与え、チーズを与えるのはご褒美や気分転換のおやつ程度に、一日1回までにとどめるようにしましょう。

猫がチーズをどのくらい食べると危険なのか

―猫はチーズをどのくらい食べてしまうと、危険なのでしょうか?

万が一、猫がチーズを大量に誤食してしまった場合、最も危険なのは摂取したチーズの塩分量です。猫の体重1kgあたりの一日塩分摂取量は0.7g程度です。この数値を明らかに超えた場合には食塩中毒になる可能性が出てきます。

猫に対する食塩中毒や致死量の基準について明記されたものはありません。しかし、可能性は十分にありますので、飼い主さんの知らない間に愛猫がチーズを食べてしまわないように注意しましょう。

猫がチーズを大量に食べてしまったときの応急処置

猫がチーズを食べてしまったときの応急処置

家庭内ですべき応急処置、対処法

―猫がチーズを大量に食べてしまったら、家庭内でどう対処すればいいのでしょうか?

猫が明らかにチーズを大量に食べてしまった場合、家庭内での対処はほとんどありません。まずは冷静に食べたチーズの量と種類、いつごろ食べてしまったのか、何か症状は出ているかなどをメモに残して動物病院へ問い合わせてみましょう。

来院を促された場合は、速やかに行くようにしてください。大量に食べた後、長く様子を見ることは避けましょう。次の日に連絡するのではなく、見つけた時点でまずは連絡することが大切です。

また、吐いたり下痢したりしたものがあれば取っておき、獣医師に見せるようにしてください。

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病院での対処法

食べてすぐであれば吐き出させる場合があるため、血液検査やレントゲン検査などの処置、および治療が行われるでしょう。そういった対処を行うと、1回の受診で数万円かかる可能性があります。診療費が心配な場合は、受診前に目安の費用を動物病院に問い合わせるといいでしょう。

※こちらの診療費は参考例です。平均や水準を示すものではありません。診療費は病院によって異なります。

まとめ「人間用のチーズは塩分と脂質の量に注意」

猫は「人間用のチーズ」をごく少量なら食べても、問題はありません。しかし、塩分と脂質の問題から与え方と量など気を付ける点が多くあります。できることなら「猫用のチーズ」を与えるようにし、愛猫にとって偏りのない食生活を心がけてください。

愛猫に食べさせていいかを迷ったり、何かを食べて具合が悪くなったかもしれないと思ったりしたら、獣医師監修の「猫が食べてはいけない危険な食べ物」「猫が食べても大丈夫なもの」を併せてご覧ください。

関連リンク

猫種別の保険料

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