猫のくしゃみが止まらない原因は?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年08月09日

猫もくしゃみをしますが、くしゃみを連発して止まらない、ほかの症状が見られるようになったら、どんな病気が考えられるのでしょうか。また、予防や対処法、動物病院を受診すべきタイミングなどを獣医師の三宅先生に監修いただきました。

猫の動作の異常や行動の変化は、何かの病気のサインかもしれません。すぐに獣医師さんに相談しましょう。

猫のくしゃみが止まらない原因は?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

猫がくしゃみをする原因

―猫がくしゃみをするのはどうしてですか?

私たち人間も風邪を引いたときにくしゃみをしますが、これは猫でも同様です。

くしゃみは鼻腔の刺激によってもたらされる反射で、侵入した異物を積極的に排除する生体防御機構の一部です。猫の場合も鼻の粘膜にごみやウイルスなどが付着すると、それらを排除しようとして、くしゃみが出ます。くしゃみによって一気に空気が勢いよく押し出され、これによって粘膜に付着しているごみやウイルスなどを吹き飛ばすのです。

猫のくしゃみの原因として考えられる病気とは?

猫のくしゃみの原因として考えられる病気とは?

感染症やアレルギーの可能性

―猫のくしゃみは、どのくらいの頻度で続くと病気が疑われるのでしょうか?

猫がたまに1、2回のくしゃみをする程度であれば病気の可能性は低く、さほど心配する必要はありません。ですが、猫のくしゃみが毎日続く、くしゃみを連発して止まらないなどの場合は、感染症やアレルギーが原因の場合もありますので、注意が必要です。

―猫のくしゃみが多い、止まらない場合、考えられる病気を教えてください。

考えられる病気としては、下記のものが挙げられます。いずれの病気も幼若猫では重症化するリスクが高いため、注意しましょう。

猫風邪

猫のくしゃみの原因として代表的なものが「猫風邪」です。猫風邪はウイルスや細菌によって引き起こされます。主な症状は、くしゃみや鼻水、食欲不振、目やになどです。原因となる病原体は、ほかの猫に伝染しますので、多頭飼いの場合は特に注意しなければなりません。

猫風邪の原因となる病原体には、主に下記のものが挙げられます。

猫カリシウイルス

猫カリシウイルスは、口、鼻、目の結膜から体内に侵入して感染します。主な症状は、くしゃみ、鼻水、結膜炎、咳などの風邪症状です。口腔内、特に舌や口唇に潰瘍ができるのが特徴的で、口腔内の痛みによってよだれが多く出たり、食欲不振を引き起こしたりすることもあります。

猫ヘルペスウイルス

猫ヘルペスウイルスも猫カリシウイルスと同様に体内への侵入経路は、口、鼻、目の結膜などです。主な症状は、カリシウイルスと同様の風邪症状ですが、発熱や倦怠感なども起こり、おおよそ猫カリシウイルスによるものよりも重くなります。

感染による鼻炎

ウイルス、細菌、真菌による感染による鼻炎があります。また、原因がはっきりしない特発性鼻炎も存在します。治療には原因に沿って抗炎症剤や抗生剤などが使用されますが、長期的な治療が必要になる場合が多いでしょう。

クリプトコッカス症

クリプトコッカスという真菌が原因の感染症で、ひとつの症状として、くしゃみを生じることがあります。多くの場合、猫白血病ウイルス感染症、猫免疫不全ウイルス感染症など、ウイルス疾患による免疫機能低下の結果として感染するものと考えられています。

アレルギー

猫でも人間と同様にハウスダストやタバコの煙、花粉などが原因でアレルギー性鼻炎を起こし、くしゃみを生じる場合があります。症状は、くしゃみや鼻水、咳などです。

そのほかの原因

上記のような感染症やアレルギー以外のくしゃみの原因としては、異物や歯牙疾患による鼻炎、また、腫瘍などがあります。いずれも原疾患(原因となる病気のこと)の治療が重要です。

猫がくしゃみをしていて、こんな症状があるときは動物病院へ

猫がくしゃみをしていて、こんな症状があるときは動物病院へ

猫に以下のような症状が見られる場合は、それ以上悪化してしまう前に動物病院を受診するようにしましょう。

  • くしゃみを連発して止まらない場合
  • 何日も続く場合
  • 元気や食欲がなくなってしまった場合
  • 発熱がある場合

これらの症状は、点滴による栄養や水分の補給、抗ウイルス薬や抗生剤の投与などにより改善する場合があります。

また、同居猫がいる場合は、ほかの猫にも病気を移してしまう可能性がありますので、早めに受診してください。

猫がくしゃみをしていても様子を見てもいい場合

―猫がくしゃみをしていても食欲があって元気そうにしている場合は、様子を見ていても大丈夫でしょうか?

猫のくしゃみがたまにしか見られない場合、また、食欲や元気があり、栄養を十分に取れている場合は様子を見てもいいでしょう。それでも心配であれば健康診断もかねて動物病院を受診してみてください。

受診を強く勧める場合

―受診すべき状態の見分け方、併発するそのほかの症状を教えてください。

それぞれの病気について、くしゃみ以外の症状としては以下のようなものが挙げられます。

猫風邪

  • 口腔内の潰瘍
  • 結膜炎
  • 目やに
  • 発熱
  • 跛行(幼若猫の場合)

これらの症状が確認できる場合は受診をお勧めします。体が弱ってしまうと免疫力が落ち、細菌などの二次感染を起こしてしまうおそれがありますので注意してください。また、口腔内の潰瘍は食欲不振を引き起こしますので、ご飯をあまり食べられていない場合にも受診したほうがいいでしょう。

細菌性鼻炎

  • 粘液性あるいは膿性の鼻水
  • 目やに
  • 食欲不振

鼻腔内の炎症が続くと鼻腔が閉鎖されたり、鼻腔内の構造が破壊されたりして嗅覚に異常を来すことがあります。また、食物の匂いを嗅げなくなると食欲不振を起こしてしまいますので、早めに受診し、栄養補給をしてもらいましょう。

クリプトコッカス症

  • 鼻水
  • 鼻の変形
  • 神経症状(体が動かない、麻痺など)

クリプトコッカス症によって神経症状を引き起こす場合があります。

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※当サービスは、株式会社チェリッシュライフジャパン(CLJ)と提携し、アニクリ24のサービスを提供するものです。

※Anicli24(アニクリ24)は獣医師による電話医療相談サービスを提供する動物病院です。

猫のくしゃみが止まらない場合の対処法

―猫のくしゃみが止まらないときに自宅でできることはありますか?

多頭飼育の場合には、ほかの猫にうつしてしまわないように隔離しましょう。また、アレルギーが原因の場合には、空気清浄機を置いたり、加湿器を使ったりすることで改善する可能性がありますので、試してみてください。また、猫のいる部屋で匂いの強いものを使用したり、タバコを吸ったりすることは避けましょう。

猫のくしゃみの対処法と予防法

猫のくしゃみの予防法

―猫のくしゃみを防ぐ対策があれば教えてください。

毎年のワクチン接種で感染リスクを大幅減少

猫風邪の原因となるウイルスは、ワクチンの接種で予防できます。毎年必ず摂取すれば、感染のリスクを大幅に減少させられるでしょう。

病気をもらわないよう室内飼育を

くしゃみの原因となる病原体や、免疫を弱らせるような病原体(猫免疫不全ウイルス感染症、猫エイズなど)は、ほかの猫からの感染リスクがあります。予防のためには完全室内飼育をお薦めします。

アレルギー対策は、部屋を清潔に

アレルギーによるくしゃみを避けるために、猫を飼育する部屋はなるべく清潔に保ちましょう。また、花粉の季節は外出先から帰宅した人が室内に花粉を持ち込んでしまうため、玄関前で体をはたいて花粉を落としてから室内に入るようにしましょう。先述した空気清浄機や加湿器もおすすめです。

まとめ

猫が匂いを嗅いでほこりを吸い込む、水を飲んだときに鼻先に水が付くなど、普段生活をしている中で猫がくしゃみをするのは珍しいことではありません。ですが、猫がくしゃみを連発したり、鼻水も出てきたりするときは、感染症や鼻炎、口腔内疾患などを疑い、早めに受診することが重要です。

猫にとって匂いは食欲と深く結びついているため、くしゃみや鼻水を軽く考えていると、鼻づまりによる食欲不振を起こしてしまう場合もあります。そうなる前に猫の様子をよく観察して、必要に応じて受診をするようにしましょう。

記事の監修者:獣医師 三宅亜希

監修者:三宅 亜希

獣医師。日本で唯一の電話相談専門病院である「電話どうぶつ病院Anicli24」院長。電話による24時間365日の相談、健康診断や未病予防の啓発、獣医師向けのホスピタリティ講演などを中心に活動。

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そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

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