猫の鼻血の原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年03月29日

猫が鼻血を出す原因として、どんな病気が考えられるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミングや対処法などを獣医師さんに伺ってみました。

猫にとって鼻血を出すこと自体が異常であり、多くの場合、何らかの病気がその背景にあります。そのため、命にかかわるケースも多く、ただの鼻血と安易に放置せずに、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

猫の鼻血の原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

猫の鼻血について

―人間の場合、鼻血が出ることがあっても、一過性でしばらくすると治ってしまいますが、猫の場合は、どうですか?

人間の鼻血は病気が原因であるケースは少なく、ほとんどの場合は鼻の粘膜が傷ついたり乾燥したりすることで起こります。そのため、治療を受けなくてもしばらくすると止まります。

猫も人間同様、鮮血がダラダラと垂れたり、鼻水に鮮血が少し混じったりするような鼻血が出る場合があります。しかし、猫の場合、そのほとんどは病気が原因の鼻血であり、放置すると死に至るケースもあります。

猫の鼻血の原因として考えられる病気とは?

猫の鼻血の原因として考えられる病気とは?

―猫の鼻血の原因としてどのような病気が考えられますか?

考えられる病気のうち、すぐに適切な処置を行えば問題のないものから、命にかかわるような大きなものまでさまざまです。症状や年齢など、病気ごとの特徴を紹介します。

感染症による鼻血

猫ウイルス性鼻気管炎や猫カリシウイルス感染症などのいわゆる「猫風邪」、クリプトコッカス症といった感染症は、健康な成猫が感染してもほとんどが無症状です。しかし、免疫力が低い子猫や高齢の猫は発症する場合が多く、鼻水やくしゃみなどの鼻炎症状が現れます。くしゃみがひどい場合には、鼻の粘膜が傷つき、鼻血が出ることがあります。

鼻腔(びくう) 内腫瘍による鼻血

鼻腔内腫瘍とは、鼻の中に腫瘍ができる病気で、ダラダラと鼻血が垂れることがあります。猫の鼻腔内腫瘍の発症率は低いものの、高齢の猫で多く見られ、悪性の場合が少なくありません。鼻血以外にも鼻水やくしゃみ、食欲の低下などの症状が出ます。

鼻腔内腫瘍は、鼻の中に腫瘍ができる病気で、ダラダラと鼻血が垂れることがあります。猫の鼻腔内腫瘍の発症率は低いものの、高齢の猫で多く見られ、鼻血以外にも鼻水やくしゃみ、食欲の低下などの症状が出ます。

歯周病による鼻血

上顎の歯が重度の歯周病になると、鼻まで炎症が波及して、鼻血やくしゃみが出ることがあります。3歳以上の猫の8割が歯周病と言われていて、特に高齢の猫で多く見られるでしょう。口の中をのぞいてみて、歯石がびっしりついていたり歯茎から血が出ていたりする場合や、目の下のあたりが腫れていたり皮膚に穴が開いていたりする場合は、歯周病が原因の鼻血である可能性が考えられます。

血液凝固異常による鼻血

猫も人間と同じように、血液を固める「凝固」という働きにより出血が止まります。しかし、中毒や遺伝病など、何らかの原因で血液が凝固しなくなってしまうと、皮膚にできた傷の出血が止まりにくくなるだけではなく、体のあらゆる場所から出血が見られるようになります。鼻血や吐血、血尿、血便などの症状が現れ、皮膚に紫色のあざのようなものが生じる場合もあります。

そのほか

高血圧

高血圧になると鼻の粘膜にある毛細血管が切れやすいため、鼻血が出る場合があります。猫の高血圧を引き起こす病気には、甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)や慢性腎臓病などがあり、鼻血以外にも網膜剥離(もうまくはくり)や発作、心肥大などの症状が見られます。特に慢性腎臓病は、12歳以上の猫の32%が罹患(りかん)していると言われているほど、高齢の猫によく現れる病気です。初期症状はほとんどありませんが、病気が進行すると多飲多尿や嘔吐(おうと)、口臭、食欲不振などの症状が見られます。

異物

急にくしゃみや鼻水が出るようになって、鼻水に血が混じっているときは、異物が鼻の中に入っている可能性があります。

猫の鼻血で、こんな症状ならすぐ病院へ

猫の鼻血で、こんな症状ならすぐ病院へ

心配のいらない猫の鼻血の症状

―猫が鼻血を出しても元気そうなら、様子を見ていても大丈夫ですか?

たとえ元気であっても、猫の鼻血は病気が原因である場合がほとんどです。念のため、動物病院を受診しましょう。

交通事故といった明らかにケガが原因で鼻血が出ている場合も、体の見えない部分に損傷を受けている可能性があります。また、注射や薬で出血を早く止めたり、傷口からの感染を防いだりすることが可能です。鼻血の原因が明らかな場合も、受診をお勧めします。

受診を強く勧める猫の鼻血の症状

―併発するそのほかの症状を教えてください。

高齢の猫で、次のような症状が見られる場合は、鼻腔内腫瘍の可能性が考えられます。

  • ダラダラと鼻血が垂れている
  • くしゃみや鼻水が出る
  • いびきをかくようになった

腫瘍が大きくなると顔が変形したり、脳まで広がって神経症状を起こしたりする場合があります。すぐに動物病院を受診しましょう。

また、以下のような症状が見られる場合は、血液凝固異常が原因で鼻血が出ている可能性があります。

  • 皮膚にあざのようなものができた
  • 吐血をしている
  • 血尿が出ている

出血量が多い場合は、輸血が必要になります。すぐに動物病院を受診しましょう。

繰り返しになりますが、猫の場合、鼻血の原因のほとんどが病気です。猫の鼻血に気付いたら、動物病院を受診してください。

猫の鼻血の止め方、対処法(応急処置)

猫の鼻血の止め方、対処法(応急処置)

―猫が鼻血を出したら、まず家庭内でどう対処すればいいのでしょうか? 鼻血の止め方を教えてください。

人間の場合は自分で対処する方が多いのですが、猫の鼻血は家庭での対処が難しいため、一刻も早く動物病院で治療を受けてください。

―受診に際して、飼い主がすべき準備、移動時の注意点などがありましたらお願いします。

鼻血がダラダラと垂れている場合、気が動転してしまう飼い主さんが多く見られます。まずは落ち着いて、鼻血や鼻水をやさしく拭いてください。そして、鼻血以外の症状がないかどうかを確認しましょう。

鼻血が出た時刻や鼻血の色、量、ほかに見られる症状などをメモしておくと、獣医師に正確な情報を伝えられます。鼻血を拭き取る前の状態を写真に収めておくのもいいでしょう。

また、移動時はなるべく興奮させないようにしてください。

お勧めできないNGなケア

―人間の場合は顎を上げたり、ティッシュを鼻に詰めたりしますが......。

人間の場合、鼻血が出たときは反射的に顎を上げる方が多いのですが、実は顎を上げると、鼻血が喉へと流れて、吐き気や誤嚥(ごえん)を引き起こす可能性があります。猫も同様に誤嚥のリスクがありますので、猫の顎を上げないように注意してください。首の後ろをたたく方法も誤った対処法です。猫をたたくのはやめましょう。

また、猫は鼻呼吸をしているため、鼻にティッシュを詰めると呼吸が苦しくなってしまいます。嫌がって興奮する可能性もあるため、絶対にやらないでください。

人間ではこのほかにも、ツボを押したり漢方薬を飲んだりする場合もあります。しかし、人間と猫では鼻血の原因が異なります。自己判断せずに、まずは獣医師の診察を受けましょう。

まとめ

猫の鼻血は、人間のような一過性のケースは少なく、病気が原因である場合がほとんどです。命にかかわるような大きな病気のサインである可能性もありますので、一刻も早く原因を探り、治療を受けることが重要です。猫の鼻血に気付いたら、すぐに動物病院を受診しましょう。

そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

猫の鼻の症状の関連記事

猫種別の保険料

当社のペット保険は、猫種による保険料の違いがありません。

また、「ペット保険取扱の猫種分類表」に契約実績のある猫種をまとめていますが、未記載の猫種であっても保険料は同じです。

あ行に属する猫の種類
か行に属する猫の種類
さ行に属する猫の種類
た行に属する猫の種類
な行に属する猫の種類
は行に属する猫の種類
ま行に属する猫の種類
や行に属する猫の種類
ら行に属する猫の種類
PS保険

記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。