猫の鼻づまりの原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年02月26日

愛猫の鼻がつまっているようで心配になるときはありませんか。猫の鼻づまりの見分け方や、対処法、病院に連れて行くタイミングなどを獣医師さんに伺いました。

鼻づまりの原因が重大な病気の場合もあります。猫の呼吸音が普段と違う、口呼吸をしているなど気になることがあれば、すぐ獣医師さんに相談しましょう。

猫の鼻から異音!もしかして鼻づまり?原因と考えられる病気を獣医が解説

猫の鼻づまりが起こる原因とは?

猫の鼻づまりの見分け方

―愛猫が鼻づまりを起こしているかもしれません。

猫が鼻づまりを起こしている場合は、呼吸するときにブーブーと聞こえたり、ピーピーと音が鳴ったりします。また、ゴロゴロと喉を鳴らす音に似ている場合もあるようです。しかし、音だけで判断するのは難しいので、喉の辺りを触ってみましょう。喉が震えていなければ、鼻づまりを起こしている可能性があります。

猫の鼻づまりの原因は、鼻水と腫瘍

―猫の鼻づまりはどうして起こるのですか?

猫の鼻づまりの主な原因は「鼻水」と「腫瘍」のふたつです。

鼻水

鼻腔内では湿潤性を保つために粘液が分泌されていますが、鼻炎によって量が増えると、鼻水となって排出されます。この鼻水の粘度が上がり、鼻の外へ排出できないと鼻づまりになるのです。

鼻炎は後述する病気によって起こりますが、猫が食事をする際に、キャットフードが鼻腔内へ入り込み、鼻炎を発症する場合もあるので注意してください。

鼻腔内の腫瘍

鼻腔内に腫瘍ができ、鼻づまりになる場合があります。鼻腔内に腫瘍が発生する確率はかなり低いのですが、発生した場合はほとんどが悪性です。

鼻づまりを起こしやすい猫種

―鼻づまりを起こしやすい猫種はいますか?

鼻の短い種類(短頭種)の猫は、「外鼻腔狭窄(がいびこうきょうさく)」と呼ばれ、先天的に鼻の入り口が狭くなっており、鼻づまりを起こしやすいのです。

短頭種の例

  • エキゾチック・ショートヘアー
  • エキゾチック・ロングヘアー
  • チンチラ
  • ヒマラヤン
  • ペルシャ など
鼻づまりを起こしやすい猫種

猫の鼻づまりが起こる原因として考えられる病気

―猫の鼻づまりの原因として考えられる病気について教えてください。

感染症

猫風邪

猫風邪は「猫ヘルペスウイルス感染症」と「猫カリシウイルス感染症」の総称です。これらの感染症は、猫のウイルス性上部気道感染症のおよそ9割を占めており、以下のような症状が起こります。

  • 発熱
  • くしゃみ
  • さらっとした鼻水
  • 目やに

また、細菌感染を合併すると、黄色や緑色の鼻水や、目やにが出ることもあり、乾燥した鼻水が鼻孔を塞ぎ、口呼吸をする場合があります。

クリプトコッカス症

クリプトコッカス症は鳩の糞便に含まれている真菌(カビ)が原因でかかる感染症です。猫白血病(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)に感染し、免疫機能が低下したときに感染すると言われています。症状としては、血が混じったような鼻水、あるいは鼻出血が見られます。

口腔内疾患

歯牙疾患

歯垢や歯石付着によって歯の根元に膿瘍ができてしまうと、鼻のほうに膿が流れ出て、鼻づまりの原因になる場合があります(出血を伴うこともある)。

腫瘍

鼻腔内リンパ腫

猫の鼻腔内腫瘍の多くが悪性のリンパ種です。鼻の中に腫瘍を形成しているため、鼻汁だけでなく、呼吸するときにブーブー、ガーガーといった、いびきのような音が聞こえます。

アレルギー

アレルギー反応を起こしている猫には以下のような症状が見られます。

  • くしゃみ
  • 鼻水

状況によっては、二次的に細菌感染を伴う場合もあるので注意してください。

猫の鼻づまりで起こるトラブルとは?

―猫の鼻がつまっているとどんな問題が起こりますか?

鼻がつままってしまうと、匂いを感じづらくなるためご飯を食べなくなったり、鼻で呼吸が難しいため口呼吸になったりします。鼻の奥には嗅神経という、匂いを感知する神経があり、この神経は猫の行動や食欲に大きく影響を与えるのです。

猫の鼻がつまっていて、こんな症状ならすぐ病院へ

猫の鼻がつまっていて、こんな症状ならすぐ病院へ

様子を見てもいい場合

―猫の鼻づまりが自然に治ることはありますか?

原因にもよりますが、自然治癒は難しいと考えられます。ただし、鼻づまりの程度や原因によっては、あまり生活に支障をきたさない場合もあります。

受診を強く勧める場合

―病院に連れて行くべきタイミングを教えてください。

以下のような症状が見られた場合はすぐに動物病院を受診してください。

  • 鼻水に血が混じる
  • 鼻血を出している
  • 生後6か月未満の猫が鼻水を出している

猫の鼻水に血が混じる場合には、腫瘍が疑われます。鼻腔内の腫瘍は悪性の場合がほとんどなので、迷わず病院を受診してください。6か月未満の子猫が猫風邪にかかると、栄養障害や脱水が危惧されます。様子を見ずに動物病院に連れて行きましょう。

また、鼻水が出ているのに気が付いたら、あまり様子を見ず動物病院で診てもらうのがお勧めです。ウイルス性鼻炎の感染初期では、一週間以内に二次性の細菌性鼻炎をよく発症するので、早めに相談するといいでしょう。

猫の鼻がつまっているときの対処法は?

猫の鼻がつまっているときの対処法は?

―猫の鼻がつまって苦しそうなときに、家庭内でできることはありますか?

保湿

空気が乾燥していると鼻づまりを助長しやすいため、部屋全体の湿度を上げましょう。

ネブライザー

動物病院に通院し、15分程度で行える治療です。プラスチック製のケージに猫を入れ、そのケージに水分や薬剤を霧状にして入れます。ケージの中で呼吸すると、鼻腔内が保湿され、薬剤も吸入できます。

猫の鼻づまりの予防法

―猫の鼻がつまらないようにするために普段から何をすればいいですか?

日ごろから猫の鼻の周りをよく観察してください。多くの場合は、鼻がつまる前に鼻水が出始めたり、鼻の周りが汚れたりします。また、目やにが出ることもありますので、鼻の周囲に目を配るのが大切です。

―猫風邪を防ぐことは可能ですか?

ウイルス性疾患はワクチン接種による予防が期待できます。獣医に相談しましょう。

こんなケアはNG

鼻水が出始めた際に、やわらかいコットンで軽く拭く程度であれば問題ありません。しかし、以下のようなケアは逆効果になる場合があります。

  • ローションティッシュを使用する

    成分にアレルギーがあった場合には悪化します。

  • アルコール入りのウェットティッシュで拭く

    猫には刺激が強いと考えられます。

  • 点鼻薬を使用する

    薬剤の種類によっては効果がないことがあります。可能な限り動物病院を受診し、獣医師の指示を仰ぐようにしてください。

まとめ

鼻づまりを引き起こす原因の鼻水は、猫にはよく見られる症状のひとつです。その原因はさまざまですが、様子を見ればある程度絞り込めます。普段から愛猫をよく観察しましょう。

また、鼻づまりを起こしていて、血が混じったような鼻水、あるいは鼻血が見られた場合は悪性腫瘍が疑われます。早めに動物病院を受診してください。

そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

獣医師 石川愛美

執筆者:石川 愛美

日本獣医生命科学大学を卒業後、都内動物病院にて臨床獣医師として勤務。「予防獣医療」をもっと身近にすることを目指し、2019年に往診を専門とする動物病院「Animal Care Clinic TOKYO」を開設。
当たり前に存在する「いま、ここに、ある幸せ」を大切にして、健康寿命を延ばすために、食餌選びからセカンドオピニオンまで、飼い主の抱える小さな不安の解消に日々努める。

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