猫の鼻が黒い原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年09月17日

猫の鼻にほくろやシミ、かさぶたができて黒く見えることはありませんか。実は、それらは悪性腫瘍やカビの可能性があります。

そこで猫の鼻が黒ずんでいて、病院に連れて行くべき症状やタイミングを獣医師さんに伺いました。ただのほくろやかさぶただと思って放置していると、重篤なケースにつながる場合があります。気になる症状があれば獣医師さんに相談しましょう。

猫の鼻が黒い原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

猫の鼻が黒い原因とは?

―猫の鼻の黒いものは何ですか?

猫の鼻が黒ずんで見えると気になりますよね。次の日になくなっていれば問題ありませんが、ずっと黒ずみがあるときは次の可能性が考えられます。

  • ほくろやシミ
  • 汚れやかさぶた

それぞれの場合について解説します。

猫の鼻が黒く、ほくろやシミのように見える場合

猫の鼻が黒く、ほくろやシミのように見える場合

ほくろやシミは一般に悪影響なし

猫は被毛があるため人ほど目立ちませんが、ほくろやシミができる場合があります。特に鼻の周りや唇はわかりやすい部分です。

ほくろの正式名称は「色素細胞母斑(ぼはん)」と呼ばれます。母斑細胞とは、メラニン色素を産生するメラニン細胞が変化したもので、ほくろは、これらが集まって盛り上がる良性腫瘍です。比較的境界が明瞭であることが特徴で、色は黒や薄い茶色などさまざまです。ほくろは自然と消えることはありません。

一方、シミはメラニン細胞がメラニン色素を産生することで発生します。紫外線から皮膚を守るために太陽光を浴びた後や、皮膚に炎症が起こり、治った後にできやすくなります。皮膚の古い細胞が新しい細胞に置き換わっていくサイクルをターンオーバーと言い、シミはターンオーバーの際に古い細胞とともに剥がれ落ちていきます。ただし、ターンオーバーがうまく行われないと、シミが残ってしまいます。

このように、ほくろは良性腫瘍、シミはメラニン色素が細胞内に集合したもので、一般的に健康に悪影響はありません。しかし、徐々に盛り上がり大きくなる場合や赤みをもつ場合は、悪性腫瘍の可能性があるので注意が必要です。

病気が疑われるほくろやシミのようなもの

大きくなったり盛り上がったりすると悪性腫瘍「メラノーマ」の可能性

―猫の鼻にできる黒いほくろやシミが病気の場合もありますか?

猫の鼻にできた黒いほくろやシミのように見えるものが徐々に大きくなったり、盛り上がったりする場合は、「メラノーマ」という病気の可能性があります。

メラノーマはメラニン色素を作るメラニン細胞に発生する腫瘍で、ほくろのように見えます。猫にメラノーマが発生するのはまれですが、悪性と良性があり、猫の場合は悪性がほとんどと言われていますので注意が必要です。

メラノーマの見分け方

一見ほくろに見えても、次のチェックポイントに当てはまる場合はメラノーマの可能性があります。

  • きれいな円形ではない
  • いびつに盛り上がる
  • 皮膚との境界がはっきりしない
  • 徐々に大きくなる
  • 赤みがある
  • 出血、潰瘍(かいよう)がある

ひとつでも当てはまるものがあれば、早目に動物病院を受診しましょう。

猫の鼻が黒く汚れ、かさぶたのように見える場合

猫の鼻が黒く汚れ、かさぶたのように見える場合

汚れやかさぶたではなく、カビの場合がある

ケガ以外で猫の鼻にかさぶたのようなものができる原因として、鼻水にゴミや汚れがついた場合があります。また、外に出る猫が匂いを嗅いでいるときに土や泥などが鼻について、かさぶたのように見える場合もあります。

これらのほか、 一見汚れやかさぶたに見えても、きれいに取り除いた後にまた付着する場合はカビの可能性があります。

猫の鼻にかさぶたやカビができる原因として考えられる病気

―猫の鼻にかさぶたやカビができてしまう病気について教えてください。

皮膚糸状菌症

糸状菌(一般にカビと呼ばれる)が皮膚に感染すると、脱毛やフケ、かさぶたができます。糸状菌に感染している動物と接触することで発症しますが、体調不良で皮膚の抵抗力が落ちていると発症する確率が高くなります。糸状菌の感染のみの場合、かゆみはほぼありませんが、細菌が二次感染するとかゆみが起こり、かいたりこすりつけたりして感染部位が広がることがあります。

皮膚糸状菌症は人にもうつりますので、注意が必要です。

好酸球性肉芽腫(こうさんきゅうせいにくげしゅ)症候群

好酸球性肉芽腫症候群になると、鼻の頭や唇などの皮膚が盛り上がって潰瘍のようになるため、かさぶたが付いているように見えます。発症する原因は解明されていないものの、アレルギーや免疫異常で起こるのではないかと言われています。

扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)

皮膚や粘膜にできる癌(がん)です。猫の鼻の頭にできた場合、初期は脱毛やかさぶたを繰り返しますが、徐々に盛り上がって範囲が広くなり、潰瘍ができて出血します。特に、外によく出る白い猫が多く発症すると言われています。さらに進行すると鼻が盛り上がり、顔が変形したり鼻が欠けてしまったりする場合があります。

猫の鼻が黒くて、こんな症状があるならすぐ病院へ

猫の鼻が黒くて、こんな症状があるならすぐ病院へ

様子を見てもいい場合

ほくろやシミがあっても、大きさが変わらず猫自身も気にしていない場合は、様子を見ても構いません。また、かさぶたができても、取れた後は二度とできない一過性の場合は問題ないでしょう。

受診を強く勧める場合

以下のような症状がひとつでも当てはまれば、早目に動物病院を受診してください。

  • 脱毛している
  • 脱毛が徐々に広がる
  • ほくろが盛り上がる
  • ほくろが大きくなり境界が不明瞭
  • ほくろの形がいびつ
  • 黒くなっている部位が赤みを帯びている
  • 潰瘍になり血が出ている
  • 気にしてかいている

悪性腫瘍の場合、放置すると治療が困難になる可能性があります。特に放射線治療が必要になった場合、地域によっては治療可能な病院がなく、治療ができないおそれもあります。早期発見、早期治療が大切です。

猫の鼻が黒いときの対処法

―猫の鼻が黒い場合、病院ではどのような対処を行うのですか?

悪性腫瘍の場合

メラノーマや扁平上皮癌のような悪性腫瘍の可能性がある場合、まずはどのような腫瘍なのかを確定することが大切です。

治療法は基本的に腫瘍の切除ですが、大きくなると切除が困難になる場合があります。そのため、早目の診断と治療が非常に重要です。切除後は病理検査を行い、腫瘍の種類や再発の可能性などを確認し、今後の治療方針を決定していきます。

かさぶたやカビの場合

外傷や細菌感染が原因となるかさぶたやカビでは、治療方法が異なります。カビの場合は、顕微鏡で確認したり、培養したりして、鑑別を行い、内服薬や外用薬で治療を行います。

カビは同居の動物や人にうつる場合があります。しっかり治療し、感染が拡大しないように注意してください。

家庭内の対処法

―家庭内でできることはありますか?

気になっても触りすぎないようにしましょう。特に、カビの場合は人に感染する可能性が高いため、触れた後は必ず手を洗ってください。また、猫に人間用の薬は使わず、早目に動物病院を受診しましょう。

猫の鼻が黒くならないようにする予防法

―猫の鼻が黒くなるのを防ぐ方法はありますか?

ほくろやシミの予防

ほくろの予防はできません。シミは、かいたりこすったりするとできる場合が多いので、猫がしつこくかかないようにすることが重要です。エリザベスカラーを利用するといいでしょう。

カビの予防

愛猫の抵抗力が低下しているときに、カビに感染している動物と接触すると感染しやすくなります。そのため、良質のキャットフードをあげたり、ストレスが過度にかからないようにしたりして、愛猫の体調管理に気を付けることが予防につながります。

まとめ

猫の鼻が黒くなる原因は、自然とできるほくろやシミのほかに、感染症や腫瘍などさまざまです。ほくろは良性腫瘍のためほとんどが治療不要ですが、ほくろのように見える悪性腫瘍もあるので注意が必要です。猫の鼻にこれまでなかったものを見つけたら、早目に動物病院を受診してください。

体調不良やストレスを抱える猫は抵抗力が落ちて、カビに感染しやすくなります。日ごろから愛猫の様子をチェックし、食事管理をしっかり行いましょう。

そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

獣医師 平松育子

執筆者:平松 育子

獣医師。『ふくふく動物病院』院長。京都市生まれ。山口大学農学部獣医学科(現 山口大学共同獣医学部)卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、2006年、山口市阿知須にて『ふくふく動物病院』を開業。

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