猫の呼吸が速い、息が荒い原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年08月19日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

猫は口を開けてハアハアと息をすることはあまりありません。猫の呼吸が速く、苦しそうにしていたらどんな病気が考えられるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミング、予防法や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。

猫がいつもと違って、息が荒く、苦しそうな様子であれば何かの病気のサインかもしれません。すぐに獣医師さんに相談しましょう。

猫の呼吸が速い、息が荒い原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

猫の呼吸が速い、息が荒い原因とは?

呼吸の測り方

―猫の呼吸が速い場合、呼吸数を測るにはどうしたらいいのでしょうか。

呼吸数とは、1分間の呼吸回数のことです。猫の安静時(起きてリラックスしている時)と睡眠時(熟睡時)に測定します。

猫が息を吸う時に胸が膨らみ、吐く時に胸がへこむので、この一連の動きを1回として、1分間に呼吸した数を数えてください。1分間が難しいときは30秒間の呼吸数を数え、これを2倍します。

猫は体が小さいので、見慣れないと胸の動きを数えにくいかもしれません。猫の真上や横から定点撮影を行い、動画を見れば数えやすくなります。また、睡眠時の呼吸は深くゆっくりしています。まずは睡眠時に、慣れてきたら安静時の呼吸数を測ってみましょう。

正常時の猫の呼吸

―猫の正常な呼吸数について教えてください。

成猫の正常な呼吸数は、安静時で1分間に20~40回です。また、睡眠時の場合は1分間に16~25回です。ただし、子猫の呼吸数は1~2割ほど多めです。また、個体差や外気温によって微妙な違いがあります。

異常時の猫の呼吸

―猫の呼吸が速くなるのはなぜですか?

運動後

人間と同じように、猫も運動中や運動後に呼吸が速くなります。これは運動によって消費された酸素を体内に取り込み、産生された二酸化炭素や体熱を体外に排出するためです。

体温調節

呼吸には体温調節の役割があり、犬は口を開け、舌を出して体温を下げます。しかし、猫の場合、そのようなことは滅多にありません。また、猫には汗腺があまりないので、体温が上がると、じっとして呼吸を速くして体温を下げようとします。

※幼い子猫は、遊びすぎるとまれに口を開けて呼吸をします。遊ばせすぎに注意しましょう。

ストレス

猫は不安や恐怖、緊張、興奮を引き起こすような何らかのストレスがかかると、交感神経が強く刺激されるため、呼吸が乱れ、速くなることがあります。

異物誤飲

誤飲によって異物が喉や食道に詰まって気道を圧迫したり、食道や胃腸を傷つけたりすると、呼吸が速くなり、ときには呼吸困難を起こすことがあります。

ケガ

外傷や骨折といった重度のケガでは、痛みによって呼吸が速くなる場合があります。

呼吸が速くなる原因には、上記の生理的要因や異物誤飲、外傷などによる疼痛(とうつう)のほか、さまざまな病気があります。

猫の呼吸が速くなる原因として考えられる病気とは?

猫の呼吸が速くなる原因として考えられる病気とは?

―猫の呼吸が速くなる病気として、どんなものが考えられますか?

呼吸器の疾患

猫風邪

猫もウイルスや細菌などが原因で風邪をひき、鼻炎や気管炎・気管支炎、結膜炎を発症します。鼻炎では鼻水や鼻汁、くしゃみといった症状のほか、鼻が詰まり、ピーピー、ブーブー、ズーズーと鼻を鳴らしたり、開口呼吸や呼吸が速くなったりします。気管炎・気管支炎では、ケフッケフッ、コフッコフッというような乾いた咳がみられます。

異物、ポリープ、腫瘍

鼻や咽の奥に異物が入ったり、ポリープや腫瘍などができたりすると、鼻炎症状や呼吸がしづらくなるといった症状が見られます。このため、開口呼吸やしんどそうに息を吸う様子(努力性呼吸)が見られます。

猫喘息

猫喘息とは、慢性気管支疾患で、繰り返される発作性の咳や喘鳴(読み:ぜんめい。意味:呼吸時に聞かれるヒューヒュー、ゼーゼーといった音)、呼吸困難が主な症状です。

喘息の発作時、猫は首をできるだけ前に伸ばし、ゼフッゼフッ、ゲフッゲフッといった湿った音の咳をします。また、咳の後は口をなめ、痰(たん)を飲み込むしぐさがよく見られます。発作がひどいときは、しゃがみこんで顎を地面にくっ付けるように首を伸ばし、咳の合間に、ゼーゼー、ヒューヒューといった呼吸の音(喘鳴)が聞こえます。喘息では息を吐きづらく、お腹に力を入れて呼吸するので、お腹の動きが目立つことがあります。

猫喘息の詳しい症状や治療法、予防については、獣医師が執筆した記事「猫の喘息」をご覧ください。

心臓の疾患

肥大型心筋症

猫に多い肥大型心筋症は、心筋が肥大し、心臓の内腔が狭くなるため、血液の循環がうまくいかなくなる病気です。

初期は、猫にほとんど症状が見られず、進行してくると突然、肺水腫や胸水を生じる場合があります。こうなると肺に十分な酸素を取り込むめず、浅くて速い呼吸(浅速呼吸)や、苦しそうな開口呼吸、横になれず座りこみ肩で息をするような起坐呼吸など、呼吸困難の症状が猫に見られます。

熱中症

熱中症は、体内に熱がこもりすぎて体温調節がうまくできなくなり、高熱とそれに伴う諸症状が見られるようになります。発見や治療が遅れると猫の命にかかわる病気です。初期は開口呼吸、口の粘膜・歯ぐきの充血が見られ、悪化するにしたがって嘔吐や下痢といった消化器症状、ふらつき、痙攣(けいれん)、意識障害といった神経症状などが猫に見られます。

そのほか

貧血

慢性腎臓病や玉ねぎ中毒など、何らかの原因で猫が貧血になると、体内に酸素をうまく取り入れられなくなり、少し動くと息切れし、呼吸が速く荒くなってしまうのです。このため、あまり運動しなくなります。

胸水

胸腔に何らかの原因で液体がたまった状態を胸水と言います。猫に胸水があると肺が十分に膨らめず、呼吸が速く浅くなったり、呼吸困難を起こしたりします。

猫の呼吸がおかしい、こんな症状が見られたらすぐに病院へ

様子を見てもいい場合

―どの程度の状態であれば、様子を見てもいいですか?

猫の意識がはっきりしていて、運動や興奮、高温多湿など原因が明らかであり、それらの対処で呼吸が落ち着いてくるようであれば、そのまま様子を見てあげても構いません。

しかし、数分経っても呼吸状態があまり変わらなかったり、逆に悪化してきたりする場合は、早めに動物病院を受診しましょう。

猫の呼吸が荒く、受診を強く勧める場合の症状

猫の呼吸がおかしい、こんな症状が見られたらすぐに病院へ

―動物病院を受診すべき状態について教えてください。

以下のような症状が猫に見られる場合は、動物病院を受診してください。

  • 鼻水やネバっとした膿性鼻汁が出ている
  • 鼻血が出る
  • 少し運動しただけで呼吸が荒くなる
  • 運動量が以前より減っている
  • 気付くと咳をしている
  • 舌や口の粘膜、歯ぐきの色がおかしい(青っぽい、紫っぽい、白っぽい、赤いなど)
  • 運動直後でもないのに、口を開けて呼吸をしている、苦しそうな呼吸をしている
  • 呼吸時に変な音がする
  • 吐こうとしているのに何も吐かない(咳や異物誤飲の疑い)

―受診の際、どんな用意や注意をすればいいですか?

受診の際、愛猫の様子を動画で撮影したもの、安静時や睡眠時の呼吸状態を定点撮影したものを持参してください。

また、猫を興奮させると、呼吸状態を悪化させてしまうので、急な移動で興奮させないよう普段からキャリーバッグに慣れさせておきましょう。

移動時は愛猫が呼吸しやすい体勢をとらせ、体温が低下しているようであれば保温をしましょう。高熱となっているようであれば、首筋や脇の下にタオルでくるんだ保冷剤を置いて体を冷やしてあげてください。

※原因によって対処法が異なるため、緊急を要するような場合は、動物病院に連絡を取り、指示に従ってください。

「PS保険」では、24時間365日、獣医師による無料※電話相談サービス「獣医師ダイヤル」を提供しております。病院へ足を運ぶまでの応急処置を含む医療相談から、素朴な疑問まで幅広く応対してくれるので、もしものときも安心です。

※:通話料はお客さまのご負担になります。

※当サービスは、株式会社チェリッシュライフジャパン(CLJ)と提携し、アニクリ24のサービスを提供するものです。

※Anicli24(アニクリ24)は獣医師による電話医療相談サービスを提供する動物病院です。

猫の呼吸が苦しそうな場合の対処法

猫の呼吸が苦しそうな場合の対処法

―猫の呼吸がおかしい場合、自宅で対処できることはありますか?

猫は呼吸が苦しくなっても、じっとして体の不調を隠そうとしがちです。そんな猫の呼吸が明らかにおかしい、苦しそうなときは、自宅で対処しようとせず、すぐに動物病院を受診しましょう。

まとめ

呼吸は愛猫の不調を見極める大事な指標のひとつと言えます。普段から愛猫の呼吸状態や呼吸数、口の粘膜や歯ぐき、舌の色をチェックし、異常に気付いた際は、早めに動物病院を受診しましょう。初期は無症状に進行する病気もあるため、定期的に健康診断を受けることも大切です。

そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。