猫のしゃっくりの原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年07月08日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

猫も「しゃっくり」をします。ただし、音があまりしないので気付きにくいでしょう。もし、猫のしゃっくりが、ずっと止まらない、呼吸が苦しそうなら、何かの病気のサインかもしれません。このような場合の病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。

そのうち治るだろうと思っていたら、病状が悪化し、取り返しのつかない事態になってしまうかもしれません。気になることがあれば、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

猫のしゃっくりの原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

猫のしゃっくりはどういうものか?

猫のしゃっくりは音がしない、お腹が波打つようにけいれんする

―猫はしゃっくりをしますか?

猫のしゃっくりを実際に見たことがない方は多くいらっしゃるでしょうが、猫も人間と同じようにしゃっくりをします。ただ、人間のように「ヒックヒック」と音がしないので、気付きにくいかもしれません。その様子は、一定間隔でお腹が急に波打つように、ピクっと動く様子で確認できます。

猫のしゃっくりも、人間と同様に生理現象のひとつです。個体差はありますが、しばらくすると自然に治まります。

猫のしゃっくりの原因とは?

猫がしゃっくりをする体内メカニズムとは?

―猫がしゃっくりをする原因について教えてください。

猫のしゃっくりのメカニズムは、人間と同じです。肺や心臓が存在する胸部と、肝臓や胃腸などが存在する腹部とを分ける横隔膜(おうかくまく)という膜が、急にけいれんして起こります。横隔膜がけいれんする原因は、厳密にわかっていませんが、横隔膜付近の臓器による刺激とされ、これも人間と同じメカニズムです。

なお、「しゃっくり」は、医学用語で「吃逆(きつぎゃく)」と呼ばれます。

―猫がしゃっくりのようなものをする場合がありますが、これは何でしょうか?

猫のしゃっくりは、ほぼ音が出ません。飼い主さんがしゃっくりと、そうでない場合を見極めるのは、なかなか難しいでしょう。

しゃっくりのようにお腹がピクピクと波打つ様子が見られるのに、しゃっくりではないケースとして、次のようなものが挙げられます。

  • 咳(せき)
  • くしゃみ
  • おならをする
  • 嘔吐(おうと)をしそうなとき

しゃっくりであれば、猫自身が特に苦しそうだったり、おかしかったりする様子は見られません。また、表情は落ち着いていて何も気にしていない場合がほとんどです。

もし、猫のお腹がピクピクと波打つ様子が頻繁に見られ、原因がわからない場合は、猫の動画を撮りましょう。こうした様子を口で説明するのは難しいので、獣医師に動画を確認してもらってください。

猫のしゃっくりを引き起こす行動とは?

―猫のしゃっくりの原因として、どのようなものが考えられますか?

以下のような行動が引き金になります。

食べすぎ

飼い主さんが猫の適正量を超えて食餌(しょくじ)を与えてしまったり、猫が大量に盗み食いをしてしまったりすると、胃が急激に拡張して横隔膜を刺激し、しゃっくりを引き起こす場合があります。

また、食べすぎによる嘔吐が、しゃっくりのように見える場合もあります。

猫のしゃっくりの原因とは?

早食い

早食いで勢いよく食べ物や空気を飲み込むと、胃や腸の拡張が急激に起こり、横隔膜を刺激し、しゃっくりを誘発する場合があります。

水を飲むときに、空気を多く取り込んだ

食事と同じように飲水によって空気を一緒に飲み込むと、胃の中に空気が貯留(ちょりゅう:たまること)して胃拡張を引き起こします。これによって、しゃっくりが出る場合があります。

激しい運動

猫が遊んだり、じゃれたりして体を激しく動かすと、横隔膜周辺の内臓が動いて横隔膜を刺激します。それによって、しゃっくりを引き起こす場合が考えられます。

冷たい食べ物や飲み物を飲み込んだ

冷たい食べ物を飲み込むと消化管を急激に冷してしまい、隣接する横隔膜にも刺激が及ぶ場合があります。

不安やストレス

猫は、横隔膜に直接的な刺激がなくても、不安によって呼吸が早くなったり、緊張によって胃腸が収縮したりして、横隔膜が刺激されます。

これらのほか、何らかの病気が原因で、猫はしゃっくりをする場合もあります。

猫のしゃっくりの原因として考えられる病気とは?

―猫がしゃっくりをする原因として、どのような病気が考えられますか?

猫のしゃっくりが生理現象ではなく、病気による場合、以下のようなものが考えられます。

呼吸器系の病気

実際には、しゃっくりではなく、くしゃみや咳かもしれません。これらの場合には、鼻炎や猫喘息(ねこぜんそく)、肺炎などを引き起こしている可能性があります。

心臓の病気

心臓病で心臓が肥大し、最終的に横隔膜を押すような状態になると、猫はしゃっくりをする場合があります。また、胸水や肺水腫を併発していると、呼吸が荒くなり、腹部がピクピクと波打つ場合もあります。

消化器官の病気

消化管の腫瘍や胃腸炎などで胃腸が拡張すると、横隔膜を刺激し、しゃっくりが出る場合があります。

脳・神経系の病気

横隔膜に直接刺激がなくても、脳神経の病気によって発作のような症状を猫に引き起こします。それが、しゃっくりのように見えたり、しゃっくりを引き起こしたりする場合がまれにあります。

猫のしゃっくりで、こんな症状ならすぐ病院へ

猫のしゃっくりで、こんな症状ならすぐ病院へ

心配のいらない猫のしゃっくりの症状

―人間は、しゃっくりが出ても、そのうち治まる場合がほとんどですが、猫のしゃっくりはどうでしょうか?

猫の場合も基本的には自然に治まります。長くても半日もすれば、ほとんどが落ち着くでしょう。また、生理現象としてのしゃっくりであれば、猫自身が気にしたり、苦しんだりしません。通常は様子を見ていても問題はないでしょう。

ただ、しゃっくりの症状が半日以上たっても治まらなかったり、元気がなく苦しそうだったりするなど、ほかの症状も見られる場合には、何らかの病気が考えられます。この場合は、注意をしながら猫をよく観察し、必要に応じて獣医師に相談、動物病院を受診してください。

受診を強く勧める猫のしゃっくりの症状

―猫のしゃっくりがどのくらい続くと病気が疑われるのですか?

猫のしゃっくりは通常、長くても半日から1日程度で自然に治まります。それ以上長くしゃっくりが止まらない場合は、何らかの病気を疑います。

しかし、しゃっくりの持続時間が半日未満であっても、ほかの症状が見られ、元気がないのであれば、様子を見続けるのではなく、早めに動物病院で診てもらってください。

猫のしゃっくりの止め方について

―病気を原因としない、猫のしゃっくりの止め方を教えてください。

猫のしゃっくりの止め方に、決まった方法はありませんが、猫に水を少し飲ませれば、落ち着く場合があります。基本的に生理現象のしゃっくりであれば、そのうち治まります。そのまま何もせず、猫の様子を見てあげてください。

家庭でできる猫のしゃっくりの予防法

家庭でできる猫のしゃっくりの予防法

―予防法や飼い主が日ごろから気を付けるべきことを教えてください。

猫のしゃっくりを予防するには、しゃっくりが出る原因をできるだけ抑えましょう。具体的には、以下に挙げるような内容です。

  • 早食いをさせない
  • 大量に食べさせない
  • 急に冷たい物や温かい物を食べさせない
  • 不安やストレスを極力与えない
  • 食後すぐに激しく遊ばせない

まとめ

猫のしゃっくりは生理現象として見られるもので、そのほとんどがすぐに治まります。しゃっくりが出たからといって、急いで動物病院を受診する必要はありません。もし、猫がしゃっくりを頻繁にするのであれば、食事の与え方に配慮しましょう。また、猫の生活習慣やケアの見直しも大切です。

ただし、しゃっくりの原因が病気に由来する場合や、実はしゃっくりではない場合があります。猫がしゃっくりをするようになったら、いつも以上に様子をよく見てください。猫に気になる症状があれば、電話で獣医師に相談するか、動物病院で診てもらいましょう。

そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

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