猫の瞬膜が出てしまう原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年02月27日

猫の目頭にある白い膜は、「瞬膜(しゅんまく)」と呼ばれ、通常は、まぶたの下にしまわれていて見えません。しかし、何らかの原因で瞬膜が赤く腫れたり、外に飛び出したりする場合があります。

これらの症状の原因として、どのような病気が考えられるのでしょうか。病院に連れて行くべきタイミング、予防法や対処法などを獣医師さんに伺いました。

愛猫の瞬膜が飛び出していたら戻そうと思うかもしれません。しかし、家庭での対処は困難ですので、獣医師さんに相談しましょう。

猫の瞬膜とは?

―猫の目頭に私たち人間にはない白い膜のようなものがありますが、これは何でしょうか?

この白い膜は「瞬膜」、または、「第三眼瞼(だいさんがんけん)」と呼ばれる膜です。

瞬膜には、まぶたと同じように、外部からの刺激や乾燥などから目を守る働きがあります。まばたきをした直後に見える場合がありますが、通常はまぶたの下にしまわれているので、ほとんど見えません。

猫の瞬膜が出る、出たままになる原因とは?

猫の瞬膜が出る、出たままになる原因とは?

―猫の瞬膜が飛び出てしまう原因について教えてください。

これには、病気ではない生理的なものと、病気によるものの、ふたつが考えられます。

病気ではないもの

猫がリラックスして寝ているとき、白目をむいているように見えることがあります。これは白色の瞬膜が出ているだけで、実際に白目をむいているわけではありません。寝ているときや眠いときに瞬膜が出るのは、生理的な現象です。特に大きな問題はありません。

病気によるもの

猫の瞬膜が出たままになっている、瞬膜が赤やピンク色になっている場合は、病気が原因の可能性があります。

チェリーアイ

チェリーアイは、猫の瞬膜の内側(眼球側)にある「瞬膜腺(第三眼瞼腺)」という涙を分泌する腺が、正常な位置から飛び出してしまう病気です。瞬膜から飛び出した瞬膜腺が赤く腫れあがり、さくらんぼのように見えることから、チェリーアイと呼ばれます。これは、先天的、または外傷のような後天的な原因によって生じます。また、片目だけに現れるケースが多いものの、両目に生じる場合もあります。

遺伝性のチェリーアイは、バーミーズやペルシャといった猫種に多く、1歳以下の若い年齢で発症しやすいのが特徴です。後天的なチェリーアイは、どの猫種・年齢でもかかる可能性があります。

炎症

結膜炎やアレルギーによる瞬膜の炎症も、猫の瞬膜が外に出る原因です。炎症を起こすと、瞬膜が腫れて赤やピンク色になり、場合によっては目やにや涙を伴います。

結膜炎が重度になると、「瞼球癒着(けんきゅうゆちゃく)」を引き起こす場合があります。これは瞬膜や結膜、まぶたなどが目の表面に張り付いてしまう病気です。

ホルネル症候群

ホルネル症候群は、目やまぶたなどを支配している交感神経に障害が起こる病気です。原因不明の特発性のほか、脳腫瘍や中耳炎などの病気が原因の場合もあります。発症の多くは片目だけです。目の陥没や縮瞳(黒目の部分が小さくなる)、上まぶたが垂れ下がってくるなどの症状も見られます。

腫瘍

腫瘍も、猫の瞬膜が外に出たままになる原因です。瞬膜がポコッと赤く腫れあがり、涙や目やになどの症状が見られます。この腫瘍は悪性の可能性が高く、高齢の猫に見られます。

そのほか

体調不良や脱水などによる全身状態の悪化も、猫の瞬膜が出る要因です。

猫の瞬膜が戻らない、こんな症状ならすぐ病院へ

猫の瞬膜が戻らない、こんな症状ならすぐ病院へ

―猫の瞬膜が出てしまっていても戻るものでしょうか。様子を見てもいいですか?

猫が寝ているときや眠いときに、一時的に白色の瞬膜が出ている場合は、そのまま様子を見て構いません。目が覚めれば自然と元の位置に戻ります。しかし、早期治療が必要な場合もあるため、愛猫に気になる様子が見られたら早めの受診を心がけましょう。

受診を強く勧める場合

―受診すべき瞬膜の症状の見分け方、併発するそのほかの症状を教えてください。

次のような症状が出たときは、何らかの病気が原因の可能性があります。動物病院を受診しましょう。

  • 瞬膜がずっと出たままになっている
  • 瞬膜が赤やピンク色になっている
  • 瞬膜が腫れている
  • 瞬膜が外に出ていて、結膜充血や縮瞳など、目のほかの部分にも異常がある

チェリーアイ

チェリーアイは命にかかわるような病気ではありません。しかし、涙の量が減って乾性角結膜炎(ドライアイ)を起こす可能性があります。チェリーアイが疑われる場合は、なるべく早く治療を受けましょう。

ホルネル症候群

ホルネル症候群は、特発性であれば自然治癒する場合があります。しかし、脳の異常が原因の場合は、命にかかわることもあるため、早期治療が必要です。

ホルネル症候群は、症状が出ているほうの目が小さく見えるという特徴があります。正面から猫の両目を見て、大きさに左右差がある場合はホルネル症候群を疑い、すぐに動物病院を受診しましょう。

猫の瞬膜の戻し方、対処法

猫の瞬膜の戻し方、対処法

―出たままになってしまった猫の瞬膜の戻し方について教えてください。家庭で対処できますか?

家庭での猫の瞬膜を戻せないので、すぐに動物病院へ

家庭でできる戻し方はありません。自己判断で瞬膜を元の位置に戻そうとすると、誤って目を傷つけてしまったり、感染や炎症を起こしたりすることがあります。瞬膜を元の位置に戻すためには、原因となる病気の治療が必要です。すぐに動物病院を受診するようにしてください。

猫の瞬膜が飛び出してしまうのを予防するには

瞬膜が突出してしまう病気の多くは予防が難しいため、早期発見・早期治療が重要です。日ごろから愛猫の目をよく観察して、何かおかしいなと感じたらすぐに動物病院を受診するようにしましょう。

病院での対処法

―病院ではどのような処置をするのですか?

処置の内容は、原因となる病気によって異なります。

チェリーアイの対処

チェリーアイが原因の場合は、目薬や内服薬によって炎症を抑えると瞬膜が元の位置に戻ることもあります。ただし、この治療法では再発しやすいのが特徴です。何度も繰り返すケースでは、手術で瞬膜腺を元の位置に戻して固定する治療法もあります。

一昔前までは、手術で瞬膜そのものを切除する方法も行われていました。しかし、瞬膜腺は涙を分泌する働きがあるので、瞬膜を切除すると乾性角結膜炎になるリスクが高く、現在はあまり推奨されていません。

炎症の対処

炎症が原因の場合は、元となる病気の治療を行いながら、目薬や内服薬によって炎症を抑えたり、洗眼をしたりします。

ホルネル症候群の対処

ホルネル症候群が原因の場合、基本的に行うのは元となる病気の治療です。特発性の場合は、自然に治るのを待つこともあります。

腫瘍の対処

腫瘍が原因の場合は、手術によって腫瘍を摘出します。場合によっては、眼球全体の摘出が必要です。

まとめ

猫の瞬膜が出ていても、必ずしも病気が原因というわけではありません。眠いときや寝ているときに白色の瞬膜が出ている場合は、特に問題はないでしょう。ただし、瞬膜がずっと出たまま戻らない、瞬膜が赤やピンク色になって腫れている場合には病気を疑い、すぐに動物病院を受診するようにしましょう。

そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

猫の目の症状の関連記事

猫種別の保険料

当社のペット保険は、猫種による保険料の違いがありません。

また、「ペット保険取扱の猫種分類表」に契約実績のある猫種をまとめていますが、未記載の猫種であっても保険料は同じです。

あ行に属する猫の種類
か行に属する猫の種類
さ行に属する猫の種類
た行に属する猫の種類
な行に属する猫の種類
は行に属する猫の種類
ま行に属する猫の種類
や行に属する猫の種類
ら行に属する猫の種類
PS保険

記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。