猫のうんちに血が混じる、血便の原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年02月22日

猫のうんちに血が混じっている、血便の原因としてどんな病気が考えられるのでしょうか。また、予防や対処法、飼い主さんが心がけたいことなどを獣医師の三宅亜希先生に監修いただきました。

人も猫もうんちは健康のバロメーターであり、体調によって、固い、やわらかい、色などが変化します。猫が血便を出していたら、何かの病気のサインかもしれません。すぐに獣医師さんに相談しましょう。

猫のうんちに血が混じる、血便の原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

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血便の色によって出血箇所を推定

―猫のうんちに血が混じっているようなのですが、大丈夫でしょうか?

うんちに血が混じっている(血便が出ている)ときは、何らかの理由で消化管の粘膜が傷ついて出血しているということです。うんちに混じっている血の色で出血している部位がある程度推定できます。

鮮やかな血の色(鮮血)

大腸や肛門付近からの出血の場合。

真っ黒い色のうんち(タール便)

小腸や胃が原因の場合、便として排泄されるまでの間に血液が酸化してタール状の真っ黒い色のうんちが出ます。

猫の血便の主な原因、考えられる病気とは?

血便の原因となる病気はいくつかあります。細菌・寄生虫・ウイルス感染やアレルギーによって引き起こされる胃腸炎では、炎症がひどくなると腸管壁から出血して血便が出ます。また、うんちに粘液が混じっていたり、下痢になったりといった症状が見られる場合もあります。

―胃腸炎の原因と起こりうる症状、また、注意事項について詳しく教えてください。

細菌感染による胃腸炎

細菌感染による胃腸炎が原因の血便の場合は、嘔吐や下痢が見られることが多く、うんちの臭いが普段とは異なり、悪臭がすることがあります。

猫の血便の原因は、細菌・寄生虫・ウイルス感染やアレルギーによる胃腸炎

細菌感染としてよく見られるのがサルモネラ菌です。サルモネラ菌は生肉を食べるなどして感染することが知られています。

寄生虫による胃腸炎

寄生虫では、鉤虫が血便の原因となりえます。ほかにも、回虫、条虫、トキソプラズマなど猫に寄生する寄生虫はたくさん存在しますが、多くは軽度の消化器症状か、不顕性感染(症状が出ない感染)を起こします。免疫力が低下していたり、寄生虫が大量に寄生していたり、子猫だったりすると、症状が重篤化し、下痢と一緒に血便が見られる場合もあります。

  • 鉤虫(こうちゅう):1.5cm程度の寄生虫で腸の粘膜に咬みつき血液を吸う

致死率70%超えの猫パルボウイルス感染症はワクチンで予防

―ウイルスが原因の場合で気を付けなければいけない病気はありますか?

猫で怖いのは、猫汎白血球減少症とも呼ばれている猫パルボウイルス感染症です。猫が感染すると、免疫をつかさどっている白血球の数が減少し、食欲不振、嘔吐、血を含む下痢、発熱、脱水などの症状が見られます。

猫パルボウイルス感染症は、致死率が70%を超えるうえに、ウイルスの環境抵抗性(ウイルスが環境下で安定したまま感染力を維持する性質)や感染力が非常に高く危険な病気ですが、ワクチンで予防することが可能です

免疫力の弱い子猫は感染症に厳重注意

―猫を多頭飼いしている場合、また、外出を自由にしている猫の場合、病気がうつることはないでしょうか?

感染性の胃腸炎や猫パルボウイルス感染症の場合は、うつる可能性があります。これらの病気は、子猫の血便の原因としてよく見られるものです。

子猫の場合は、免疫力がまだ弱く症状が重篤化しやすいので、検査の結果で感染性の原因が否定できるまでは、ほかの猫に接触させないようにしてください

また、前述のとおり猫パルボウイルスはワクチンで感染を予防できますので、必ず接種するようにしましょう。

異物誤飲や老猫の場合は腫瘍からの出血である可能性も

―ほかに血便の原因となる病気はありますか?

異物を飲み込んだ場合にも血便が見られる場合があります。異物誤飲では、針状の鋭利な物を飲み込んでしまうと、腸管を傷つけて出血を起こします。

また、ひも状の異物を飲み込み腸管内に引っかかってしまうと、腸の蠕動(ぜんどう:内容物を動かす)運動にともなって、腸がひも状の異物に沿ってアコーディオンのようにたぐり寄せられてしまいます。これによって、腸管穿孔や腹膜炎などが引き起こされ、緊急手術が必要となる場合があるので注意が必要です。

異物誤飲や老猫の場合は腫瘍からの出血である可能性も

老齢の猫の場合では、消化器にできたリンパ腫を始めとする腫瘍によって出血を起こすことがあり、これも血便の原因になりえます。

猫のリンパ腫の原因と症状、治療法を獣医師が解説

また、肛門付近が何らかの理由で傷ついていて、排便時にうんちの表面に血が付着することもあります。

動物病院で行われる検査と治療法

―検査や治療はどのようなことが行われますか?

うんちの中に病原体がいるかどうかを調べたり、猫の体をレントゲン検査や超音波検査によって異物や腫瘍の有無を調べたりします。

また、原因に応じて次のような治療を行います。

  • 感染症胃腸炎が原因の血便の場合は、感染症に対する治療(抗生物質や抗寄生虫薬の投与)を行うとともに、脱水に対する治療として皮下輸液や点滴を行います。
  • アレルギー性の胃腸炎の場合では、アレルギー除去食が使用されます。
  • 腸管の出血の原因が異物や閉塞であった場合は、緊急で手術が必要になることがあります。
  • 腸管内にできた腫瘍が原因の場合は、腫瘍に対する治療(抗がん剤治療や外科手術による切除)を行います。

猫の血便を見つけたら飼い主さんがすべき対処法

うんちを持参し、動物病院で糞便検査を

―猫のうんちに血が付いているのを見つけたとき、受診前に準備をしておいたほうがいいことはありますか?

猫のうんちに血が付いていたり、猫のトイレに血が付いていたりしているのを見つけた場合は、うんちを動物病院に持参すれば糞便検査を実施できます。

できるだけ新鮮なうんちを空気に触れないように密閉できる容器(タッパーや口を閉じられる袋)に入れて持ってきてください。直接うんちを持ってくるのが困難な場合は、写真に撮るだけでも診断の手助けになります。

―家で行ったほうがいい対処法はありますか?

獣医師の指示に従って通院・投薬を続けてください。また、血便が続くと猫の体力を奪っていきますので、安静にできる環境を整えてあげてください。

猫の血便を見つけたら飼い主さんがすべき対処法

血便は病気のサイン。すぐに動物病院へ

―また血便が見られたら、緊急を要する場合と様子を見てもいい場合の見分け方はありますか?

血便は明らかな体の異常であり、重篤な症状のサインであることが多いので、ほかに症状が出ていないかを記録し、すぐに獣医師に見せに行ってください。

見分け方としては、うんちの中までどす黒い血が混じっている場合は、胃や小腸からの出血が原因なので早めの受診をお願いします。また、下痢や食欲不振、元気がなく、ぐったりしているなどのほかの症状が認められた場合も緊急性の高い病気の可能性があります。獣医師に速やかに相談するようにしましょう。

血便かどうか判断できない場合でも、獣医師が判断してくれますので気軽に相談してください。

まとめ

血便といっても、少量の鮮血が良便に付着しているのか、水様性の下痢とともに出血しているのか、どす黒い黒色便なのかによって緊急度はさまざまです。日ごろから猫の便の状態を観察して、すぐに変化に気が付けるようにしておきましょう

猫に数種類の食べ物を与えている家庭では、血便が出るタイミングを記録しておくと、特定の食事の際に血便が出ているといった状況に気が付ける場合があります。また、家に来たばかりの子猫が下痢や血便を起こしている場合は、感染症のリスクもあるため早急な受診が必要です。

記事の監修者:獣医師 三宅亜希

監修者:三宅 亜希

獣医師。日本で唯一の電話相談専門病院である「電話どうぶつ病院Anicli24」院長。電話による24時間365日の相談、健康診断や未病予防の啓発、獣医師向けのホスピタリティ講演などを中心に活動。

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そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

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