猫のうんちが出ないのは単なる便秘?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年03月12日

猫の便秘の原因としてどんな病気が考えられるのでしょうか。また、予防や対処法、飼い主さんが心がけたいことなどを獣医師の三宅亜希先生に監修いただきました。

猫も人も便秘はつらいものです。人間の場合は、便秘薬の服用、食事の見直しや水分補給、運動をするなど意識的に排便を促すことができますが、猫の場合、そう簡単にはいきません。

そこで、大切なのがご家庭での飼い主さんによるケアです。日ごろから猫の排便を観察し、便秘となり得る食生活の改善やストレスの軽減に努めましょう。また、気になることがあれば早めに動物病院を受診することが大切です。

猫のうんちが出ないのは単なる便秘?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

猫の便秘を疑う日数と受診の目安

―猫がどのくらいうんちをしないと便秘を疑うのですか? また、受診の目安として何日くらいでしょうか?

実は、「猫は何日くらい便が出ないと便秘」という定義はありません。一度ですっきり排便できているかどうかが、猫にとって便秘か否かの判断になります。そのため、毎日愛猫の便が出ていても便秘の場合もあれば、2日に1回の排便でも便秘ではない場合もあります。

ただ、今まで毎日排便をしている猫が、2~3日連続でうんちが出ていなかったり、何度も排便姿勢を取るが出てこなかったり、というような場合は便秘の可能性があるかもしれません。こうし場合は、受診を検討されるといいでしょう。

猫がうんちをしない、便秘の原因、病気とは?

猫がうんちをしない、便秘の原因、病気とは?

―猫がうんちをしない、便秘のようなのですが、どのような原因が考えられますか?

次のように猫特有の性質や環境を原因として、猫が便秘になる場合があります。

水分不足

スムーズな排便には、適度な水分が必要です。しかし、猫の先祖は水に乏しい砂漠地帯で暮らしてきたため、あまり水を飲まなくても生きていけるよう体の機能ができています。これが水分不足を招いて便を硬くし、排便しづらくなるのです。

環境によるもの

猫はとても敏感な生き物です。引っ越しや別な猫を迎え入れたといった生活環境の変化やトイレが汚いなどトイレの環境によって、排便を我慢し、便秘になる場合があります。

食べ物による影響

ペットフードを変えると、新しいフードが合わなくて便秘になる場合があります。ドライタイプのペットフードよりもウェットタイプのペットフードのほうが、食事の時に得られる水分摂取量が増えるので、便秘の改善が期待できます。一時的にウェットタイプのフードを与えるといいでしょう。

これらのほか何らかの病気を原因とする猫の体調不良による場合も考えられます。

骨盤狭窄や異物誤飲、腫瘍で腸管内が狭くなっている

猫の骨盤がとても狭い、または、猫が誤飲した異物や腫瘍によって腸管内が狭窄(きょうさく:狭くなる)している場合も、糞便の通りが悪くなって便秘を引き起こします。これらの異常は、レントゲン検査や超音波検査で確認します。

腸や肛門の炎症などの理由で排便時に痛みがある

腸や肛門の炎症などにより排便時に痛みがあると、猫は排便を嫌がります。すると、宿便がたまり、便秘になる場合があります。

神経障害疾患の場合

椎間板ヘルニアを始めとする神経障害疾患も猫の便秘の原因として挙げられます。猫に神経学的な検査を行って、異常が認められるのであれば神経障害疾患を疑ってみていいでしょう。最終的な判断にはMRIやCT検査が必要です。

便秘が続くことで怖いのが巨大結腸症

―便秘が続くと、何か怖い病気になるおそれはありますか?

猫で怖いのは、便秘が長く続いたことによって起こる巨大結腸症です。巨大結腸症は特定の病名ではなく、慢性的な便秘によって、結腸の蠕動運動(ぜんどううんどう:うんちを外に運ぶための腸の動き)が鈍ってしまい、糞便が結腸に滞留した結果、結腸が伸びて拡張してしまう病気です。

結腸に長期間滞留した糞便は、どんどん水分が吸収されて石のように硬くなってしまいます。こうなると、浣腸や用手摘便(手を使ってうんちを排出させること)などによって取り除くしかありません。その後、内服薬により維持ができる場合もありますが、できないのであれば、拡張した結腸を外科的手術により摘出しなければならないおそれがあります。

―巨大結腸症の検査は、内視鏡を使うような大掛かりなものですか?

巨大結腸症は、レントゲン検査で巨大化した結腸が認められれば診断できます。レントゲン検査時には、場合によって猫が動かないように鎮静をかけなければなりますが、それほど時間のかかる検査ではありません。

―猫の便秘で原因がわかりづらいケースはありますか?

人でも猫でも腸の運動は自立神経でコントロールされています。そのため、自律神経の乱れにより便秘が起こることがあります。自律神経の乱れがひどい場合は、便秘のほか、嘔吐や唾液・涙液の分泌減少、散眼や瞬膜の露出が認められるケースもあり、キー・ガスケル症候群という名前で呼ばれることもあるようです。

猫の便秘の治療方法

猫の便秘の治療方法

―人間の場合は便秘になると、下剤、浣腸、整腸剤を使うことがありますが、猫の便秘はどんな治療を行うのですか?

下剤の使用、麻酔や鎮静をかけて摘便することも

うんちがどの程度出ているのかによりますが、うんちをやわらかくする下剤を猫に処方して排便を促します。ひどい便秘の場合は下剤でもなかなか排便が難しいので、浣腸や摘便を行ったりする場合もあります。

その後は、内服薬で定期的に排便ができるよう促していくことが一般的な治療です。また、食事療法を行う場合もあります。

原因となっている病気の治療

猫が便秘を起こしている疾患に対して、個別の治療が必要な場合もあります。

  • 炎症由来の痛みがある場合は、炎症の原因を治療するとともに消炎鎮痛剤を投与
  • 骨盤狭窄や異物誤飲、腫瘍が原因の場合は、必要に応じて外科治療を行う
  • 神経障害疾患の場合は、内科的に痛みを取り除くか必要に応じて外科治療を行う

猫の治療中で飼い主さんが注意したいこと

―治療中に何か気を付けることはありますか?

治療中は猫のトイレの回数を記録し、便秘の改善が見られているかを調べてください。また、便秘は再発しやすいので自分の勝手な判断で治療を中断せずに、獣医師の指示に従いましょう。

うんちが出ないのは猫にとってストレスになりますし、体調にも悪影響を与えてしまいます。放っておくと、先ほど述べた巨大結腸症のような状態になるおそれもあります。治るまでは、薬と通院を忘れないようにしてください。

猫の便秘を予防するには?

猫の便秘を予防するには?

猫に水分を取らせ、トイレは清潔に保つ

―家庭内でできる猫の便秘を予防法について教えてください。

猫に水分を十分に摂取させることが重要です。そのため、猫が水を飲みやすいように、いろんなタイプの器で何か所かに飲み水を置くようにしてください。こうして、猫がきれいな水をいつでも飲めるように心がけてください。

また、猫は、きれい好きなのでトイレが汚れていると、トイレに行きたがらなくなります。ですから、こまめなトイレ掃除も重要です。多頭飼育の場合は、猫の数プラスひとつの数のトイレが必要です。

猫の便秘改善に食物繊維は有効か

―人間の場合は便秘にならないように食物繊維を多く取るようにしますが、猫には、猫草を用意すればいいのでしょうか。

食物繊維は有効ですが、猫草は胃を刺激して嘔吐を誘発する場合があるため、便秘改善のために与える必要はありません。食物繊維が豊富な療法食への変更を検討することが一般的です。特に難溶性(水に溶けない)食物繊維は腸管の蠕動運動を促進するので、便秘の改善に効果があります。しかし、その一方で取りすぎは猫の便を硬くしてしまうので注意が必要です。

運動によるストレスの軽減と肥満防止も効果的

―環境面で配慮すべき点などありますか?

猫にとってストレスも便秘の原因になります。ストレスがたまらないように、おもちゃやキャットタワーなどを用意して猫に運動させましょう。特に上下運動がおすすめです。肥満も便秘の原因になるので運動は効果的です。

まとめ

猫の便秘は特に高齢になると発症しやすくなります。また、交通事故のような強い衝撃によって骨盤をケガした経験がある猫も注意が必要です。慢性化すると非常に厄介ですので、日ごろから便の観察を行ってください。毎日排便していたとしても、便がいつもよりも小さく硬く、匂いがきついような場合は、便秘を疑い早めに受診をするようにしましょう。

便秘による食欲不振や嘔吐など、猫にとってつらい症状がたくさん起こるため、気を付けてあげたいですね。

記事の監修者:獣医師 三宅亜希

監修者:三宅 亜希

獣医師。日本で唯一の電話相談専門病院である「電話どうぶつ病院Anicli24」院長。電話による24時間365日の相談、健康診断や未病予防の啓発、獣医師向けのホスピタリティ講演などを中心に活動。

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また、そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

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