猫のおならが臭い原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年03月29日

猫もおならをします。猫のおならは、音や臭いがあったり、なかったりと私たち人間と同様に生理現象です。しかし、愛猫の臭いおならが続く、頻発する場合、それは何らかの病気に起因する症状なのかもしれません。そこで、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。

病状が悪化し、取り返しのつかない事態にならないよう、気になることがあれば、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

猫のおならが臭い原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

猫がおならをするのはどうして?

猫がおならをする体内メカニズム

―猫もおならをするのですか?

おならは、消化管にたまったガスが肛門を通して排泄される生理現象で、猫もたまにおならをします。

おならの成分は口から飲み込んだ空気が大半であるため、口から飲み込む空気の量が多いほど、おならは出やすくなります。おならの空気以外の成分は、消化管内で産生されたさまざまなガスや血液中から消化管内へと拡散されたガスです。

―うちの子の場合、あまり音を聞いたことがないような......。

おならの音の大きさは、1回に排泄されるおならの量と関係し、量が多いほど音は大きくなります。

人や犬は飲食時にかなり空気を飲み込むため、おならが多い生き物です。しかし猫は、静かに飲食するため空気をあまり飲み込まず、その結果おならの量は少なめです。また、肛門の構造が人に比べるとフラットで、おならが出るときの振動音がしにくいと言えます。そのため、「す~」とか「プス~」といった小さな音がほとんどで、おならの音に気付くことはあまりないかもしれません。

ただ、うんちと一緒におならをすると、うんちと肛門の間にできた狭い隙間をガスが勢いよく通って、大きめの音が聞こえる場合があります。

猫のおならが臭い原因とは?

猫のおならが臭い原因とは?

―猫のおならが臭くなるのは、どんな原因が考えられますか?

おならのほとんどは無臭のガスですが、ごく少量の臭い成分が含まれています。臭い成分には、キャットフードに含まれるたんぱく質が由来のインドールやスカトールのほか、フードや消化器系からの分泌物内に含まれる硫黄成分が由来の硫化水素、メンタチオールなどがあります。

これらの臭い成分は、猫の腸内細菌が食べ物の残りかすを分解・発酵して作り出しているものです。この臭い成分の量が多いと、おならは臭くなります。

食べ物によるもの

臭い成分の原料となるたんぱく質や硫黄成分の多いフードを食べていると、おならの臭いは強くなります。たんぱくが豊富な食品の代表は肉・魚肉・卵・豆類で、これらの多くには硫黄も含まれます。

ストレスによるもの

胃腸の働きは自律神経に関連し、過度のストレスでは自律神経のバランスが崩れて、血液の流れや胃腸の動きが悪くなります。腸内環境が悪化すると腸内細菌のバランスが崩れ、悪玉菌が増えるのです。これによりガスが異常に産生され、おならの量や臭いが普段より増えやすくなります。

加齢によるもの

加齢とともに消化吸収能力が低下し、腸内細菌の種類やバランスも変化します。これに伴っておならの臭いや量が増える場合があります。

病気によるもの

―猫のおならが異常に臭くなる病気として、どんなものがありますか?

腸内細菌のバランスが崩れるような消化器系の病気では、普段より臭くなることがあります。

胃腸疾患

寄生虫や種々のウイルス、細菌などの感染性胃腸炎では、軟便や嘔吐(おうと)、下痢などの症状が見られます。

これらのほか、排便の前や排便時に普段と異なる臭いのおならをする場合があります。

膵臓疾患

消化酵素やインスリンを産生する膵臓(すいぞう)に何らかの原因で炎症(膵炎:すいえん)が起こると、隣接する肝臓や胆管、小腸にさまざまな影響を及ぼし、胆管肝炎やIBD(炎症性腸疾患)を併発したり、膵外分泌不全や糖尿病を発症したりする場合があります。

こうした病気の場合、腸内細菌のバランスが乱れ、おならの臭いがきつくなることがあります。

猫のおならの頻度が高くなる原因とは?

猫のおならの頻度が高くなる原因とは?

―猫のおならの回数が多いと気になりますが、どんな原因があるのでしょうか?

回数が多いときは、口から飲み込む空気の量が多い場合と、腸内細菌の分解・発酵によるガス産生が多い場合が考えられます。

早食いによるもの

早食いする猫では、キャットフードと一緒に空気を飲み込みがちです。例えば、兄弟猫や同居猫などがいて競争するようにフードを食べていたり、過去に食べ物の獲得に必死なころがあったりすると、1頭だけで暮らしても早食いの癖が直らない場合があります。

食事によるもの

食物繊維やオリゴ糖、果物に含まれるペクチンなどの炭水化物は、猫自身では消化・吸収ができません。腸内細菌がこれらを餌として分解・発酵すると、腸内に大量のガスが生じるため、上記の成分が多く含まれるキャットフードやおやつを食べるとおならが増えるのです。

また、食べすぎで消化不良や吸収不良を起こすと、腸内細菌の餌となる食べ物の残りかすが増えます。それが原因でガスが生じて、おならの量と臭いが増えるのです。

病気によるもの

―猫のおならの頻度が高くなる病気として、どんなものがありますか?

前述のように、消化器系の病気や食中毒などでお腹を壊すと、おならの頻度が高まる場合があります。特に、乳糖不耐症※の成猫の場合、牛乳や生クリーム、チーズなどの乳製品を食べたときには、おならの頻度が高まるだけでなく、下痢をしてしまうのです。

また、アレルギー性皮膚炎のような皮膚疾患がある猫では、過剰なグルーミングで飲み込む空気の量が増え、おならの頻度が高まる場合もあるでしょう。

※乳糖不耐症......乳糖を分解する酵素が不足し、消化吸収できない状態のこと

猫のおならが異常に臭い、回数が多いなど、こんな症状ならすぐ病院へ

猫のおならが異常に臭い、回数が多いなど、こんな症状ならすぐ病院へ

―猫のおならが臭い、おならが続くと心配です。どんな状態であれば、様子を見ていてもいいのでしょうか?

おならは生理的な現象で、その臭いや回数には猫の個体差があります。普段から臭いがきつかったり回数が多かったりしても、定期的に良好な便をし、健康状態に問題がなければ、様子を見ても構いません。

もし急に猫のおならの臭いがきつくなったり、回数が増えたりした場合や、家に迎えたばかりで普段の状態が不明な場合は受診をお勧めします。

―動物病院を受診すべき状態について教えてください。

猫に以下の症状がある場合は、動物病院を受診しましょう。特に下痢がひどい、嘔吐が続くといった場合は早めに受診してください。

  • 軟便や下痢、血便、嘔吐などの胃腸症状がある
  • 皮膚炎や脱毛があり、過剰なグルーミングをしている

 

次のような症状がある場合は、膵炎や腸重積、腸閉塞といった重篤な病気の可能性があるため、早急の受診をしてください。

  • 元気や食欲があまりない、まったくない
  • うずくまって動かない
  • お腹を触ると嫌がる、痛がる
  • いきんでいるのに便が出ない
  • 何も食べていないのにお腹が膨れる

猫のおならの予防と対処法

―どうやって予防すればいいのでしょうか?

おならは生理的な現象なので予防はできませんが、いくつかの工夫で臭いや回数を減らせる場合があります。

飲み込む空気の量を減らす工夫

  • 猫が食べやすい高さの食器を使う
  • 少量ずつこまめに食事を与える
  • 多頭飼育の場合、各猫が落ち着いて食事ができる環境を用意する
  • 猫が早食いの場合、早食い防止用食器やフードが出てくるタイプの知育玩具を利用する

腸内環境を整え、ガスの発生を抑える食事に変更

  • 猫の体調や年齢、活動性にあった消化の良いフードを与える
  • フードの炭水化物源を大豆やほかの穀物ではなく、米主体のものに変更する
  • 乳糖不耐症の成猫では、乳糖が含まれた食品を避ける

ストレスに対処する

適度なストレスは健康に良い影響を与えます。しかし、過度なストレスや持続的で不快なストレスは、自律神経のバランスを崩し免疫力を低下させ、腸内細菌のバランスを乱します。猫が暮らす環境を豊かにし、ストレスが過度にならないようにしましょう。

また、病気は体にとって最大のストレスです。定期的に健康診断を受け、異常があれば早めに受診し対処してあげましょう。

―緊急性がない場合、自宅ではどのように過ごせばいいのでしょうか?

おなら以外に症状がない場合は、臭いや回数を減らす工夫をしてみてください。改善が認められないときは、整腸剤が有効な場合もあるため、動物病院に相談してみましょう。

まとめ

健康な成猫ではあまりしないおならも、腸内細菌のバランスが発育途中の子猫では、比較的よく見られます。成猫と同様、感染症がなければ、猫用ミルクやフードの種類を変えたり、1回の量を少なくし食事回数を増やしたりして、腸内環境を整えてあげてください。

そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。