猫の下痢の原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年09月09日

猫が下痢を繰り返すと飼い主さんとしては心配です。猫が下痢になる原因としてどんな病気が考えられるのでしょうか。また、予防や対処法、飼い主さんが心がけたいことなどを獣医師の三宅先生に監修いただきました。

しばらく様子を見ていれば治るだろうと思っていたら、症状が悪化してしまうかもしれません。猫に気になる症状が見られたら、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

猫の下痢の原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

猫の下痢の種類

下痢とは?

下痢とは、便の量や回数、水分量が増えた状態です。健康時の正常の便と比較して水分量の多い泥状、または液体状の便が出る状態のことを指します

便の状態や下痢の症状の期間により、次のように分類されます。愛猫が下痢を起こしたら、どのような状態なのかを確認しましょう。

軟便

通常の便に比べて水分量が多く、半固形状のものを軟便と呼びます。泥のような形状をしていることから泥状便とも呼ばれます。

正常な猫の便は、水分量が60から80%ほどですが、軟便ではそれ以上の割合になります。また、正常の便は固くコロコロしていますが、軟便の場合は形が保たれていないか、保たれていても容易に崩れてしまいます。

水様便

軟便以上に水分含有量が多くなり、液体状のものを水様便と呼びます。

血便・血様便

便の中に血液が混じっている場合は、血便・血様便と呼びます。大腸のように肛門から比較的近い部位から出血があると、鮮血の赤~ピンク色が混じった便になります。また、小腸以前の消化管からの出血があると、便として排泄されるまでの間に血液が酸化され、黒色のタール状の便(タール便とも呼ばれる)になります。

小腸性の下痢

猫の下痢の原因が小腸にある場合は、食べたものの消化・吸収が悪くなってしまうために便量が増加し、便の中に未消化物を認めます。

大腸性の下痢

猫の下痢の原因が大腸にある場合は、食べたものが小腸で消化されているので未消化物はあまり見られません。しかし、大腸での水分の吸収が悪くなっているために、猫に「しぶり」(便意があるのにほとんど便が出ない状態、排便後に残便感がある)が見られ、便中に大腸から過剰に分泌された粘液が多く含まれます。ひどい場合には血便が認められます。

急性の下痢

急性の下痢の場合には、突然、猫が下痢になってから1週間ほどで症状が治まります。

慢性の下痢

慢性の下痢の場合は、猫に症状が数週間に渡って継続します。また、栄養・水分の吸収が悪くなるので、猫の体重が減少するなど、栄養状態が悪くなってしまいます。

猫の下痢の原因とは?

猫の下痢の原因とは?

ストレスによる下痢

人と同様に猫もストレスによって下痢になる場合があります。引っ越しや家族・ペットが増えるなどの生活環境の変化から猫がストレスを抱え、下痢になるのです。

異物の誤飲・誤食による下痢

猫が洗剤や殺虫薬などの化学物質を誤飲・誤食すると、中毒性の下痢となる場合があります。また、その誤飲したものに毒性がなくても、消化されずに消化菅内を進んでいくと、猫に下痢を起こすこともあります。

食事による下痢

猫がごはんを食べすぎた場合や、ペットフードを変えた場合、人の食べ物を食べた場合などにより、消化・吸収不良から下痢になることがあります。

薬による下痢

抗生物質のような一部の処方薬は、副作用として猫に下痢の症状が出る場合があります。

これらのほか、感染症や内臓疾患、アレルギーといった病気が猫の下痢の原因として考えられます。

猫が下痢を起こす病気とは?

感染による下痢

感染性下痢は、ウイルス性・細菌性・寄生虫性のものに分類されます。

ウイルス性感染

ウイルス性の下痢では、猫パルボウイルスや猫コロナウイルスが原因として挙げられます。猫パルボウイルス感染による猫汎白血球減少症や猫コロナウイルスが突然変異をして起こる猫伝染性腹膜炎は、致死性の高い感染症です。

細菌性感染

細菌性の下痢は、サルモネラ菌などが知られています。

寄生虫感染

寄生虫性の下痢では、線虫や条虫などが原因になります。

猫に感染性の下痢が疑われる場合は、糞便検査を行います。これにより、ウイルス、細菌、寄生虫の有無を確認し、診断します。なお、免疫力が不十分な子猫や低下している老齢(高齢)猫の場合は、重篤化しやすい傾向がありますので注意が必要です。

食物アレルギーによる下痢

人間と同様に猫も食物アレルギーによって下痢を引き起こされる場合があります。アレルギー除去食により猫の下痢が治まるかどうかで判断されます。

内臓疾患による下痢

肝炎や胆管炎などの肝臓・胆のうの病気、膵外分泌不全のような膵臓の病気の場合、消化酵素が正常に分泌されず、猫に下痢の症状が出る場合があります。

また、腸管内にできた腫瘍によって猫に下痢の症状が出る場合もあります。また、猫に見られる慢性の下痢の原因として、はっきりとした原因を特定できない炎症性腸疾患(IBD)と呼ばれる病気もあります。これは、人のIBDと同様に免疫が関与していると考えられます。

内分泌系の病気による下痢

甲状腺機能亢進症のような一部の内分泌系の異常も猫に下痢の症状を示します。

内臓疾患や内分泌系の病気の診断にあたっては、血液検査、画像診断(X線検査や超音波検査など)が必要になる場合があります。

猫が下痢をしたときの対処法

猫が下痢をしたときの対処法

様子を見ていい猫の下痢の症状

猫の下痢が一過性で元気があり、食欲が普段どおりにある場合は様子を見てもいいと思います。しかし、何か少しでも気になることがあれは、動物病院を受診し、獣医師に相談するのが無難です

病院に行くべき猫の下痢の症状

以下に挙げるような症状が猫にあれば、動物病院を受診してください。

  • 下痢が数日続いている
  • 便の回数が多い
  • 食欲や元気がない
  • 嘔吐のような別の消化器症状も認められる
  • 血便が出ている
  • いつもより尿量が少ない
  • 幼齢猫である

猫の下痢は珍しい症状ではありませんが、上記に挙げられているような場合、脱水を起こしたり、電解質のバランスが崩れたりして、重篤な状態になるおそれもあります。

猫が下痢をしたら、受診前に準備すべきこと

下痢のほかに何か別の症状が猫に見られていた場合は、それを獣医師に伝えてください。また、可能ならば猫の便を動物病院に持って行ってください。その際は、できるだけ新鮮な便を密閉できる容器に入れるといいでしょう。

猫の便を持って行けない場合は、写真に撮り、どんな色や臭いをしているかを記録して獣医師に伝えると診断の手助けになります。

「PS保険」では、24時間365日、獣医師による無料※電話相談サービス「獣医師ダイヤル」を提供しております。病院へ足を運ぶまでの応急処置を含む医療相談から、素朴な疑問まで幅広く応対してくれるので、もしものときも安心です。

※:通話料はお客さまのご負担になります。

※当サービスは、株式会社チェリッシュライフジャパン(CLJ)と提携し、アニクリ24のサービスを提供するものです。

※Anicli24(アニクリ24)は獣医師による電話医療相談サービスを提供する動物病院です。

猫の下痢の治療について

猫が下痢を起こしている場合、水分の吸収量が低下し、脱水症状に陥りやすいので注意が必要です。そのため、猫に脱水傾向が見られれば、輸液によって脱水状態の回復を第一に行います。次に、下痢の原因に対応した治療を行います。

  • 中毒物の誤飲・誤食が原因の場合は、胃洗浄や吸着剤を用います
  • 感染が原因の場合には、抗生物質や駆虫薬を投与します
  • 食物アレルギーが原因の場合は、アレルゲンの含まれていない食事を処方する場合があります
  • 内臓疾患が原因の場合は、その原因疾患に対する治療を行います

猫の下痢を起こして治療中の注意点

獣医師から処方食が出ている場合には、それ以外のものを猫に与えないようにしてください。また、猫が安心してくつろげるようなスペースを確保し、安静にできる環境を整えてください。

猫の下痢を予防するには?

猫の下痢を予防するには?

環境面

猫にストレスがかかるような環境の変化があった場合でも、猫がひとりでくつろげる場所が確保できるように、あらかじめキャットタワーなどを用意しておくようにします。また、猫の食事を変更する際は急に変えるのではなく、新しい食事を少しずつ混ぜ、与えるようにします。

普段から猫の様子を注意深く観察し、下痢を含む何らかの体の異常を見逃すことがないようにしましょう。

人間の食べ物を猫に与えない

人間の食べ物は猫にとって下痢の原因になるほか、肥満の原因にもなります。また、猫の各臓器に負担がかかるおそれがあるため、決して与えないでください。

感染性の下痢を避けるためにワクチン接種と室内飼いを

感染性の下痢、特にウイルス性の下痢の場合、ワクチン接種によって防ぐことができるものもあります。猫にワクチンをきちんと接種するようにしてください。

また、感染性の下痢は、ほかの猫と接触し、伝播する可能性があるので、猫は完全室飼いにして外に出さないようにすることをお勧めします。加えて、猫を多頭飼いしている場合は感染が広がる可能性があるので、感染性の下痢をしている猫を隔離してください。

まとめ

多くの場合、猫の下痢は一過性であり、急な食事の変更や食べすぎなどがその原因です。ですが、中には重篤な消化器疾患や別の病気が原因になっていることもあります。下痢の原因として思い当たることもなく、また下痢が続いているような場合はためらわず受診をしましょう。そのためには、日ごろから猫の便をよく観察して、いざというときに慌てないように備えましょう。

記事の監修者:獣医師 三宅亜希

監修者:三宅 亜希

獣医師。日本で唯一の電話相談専門病院である「電話どうぶつ病院Anicli24」院長。電話による24時間365日の相談、健康診断や未病予防の啓発、獣医師向けのホスピタリティ講演などを中心に活動。

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そのほか気になる猫の症状については、獣医師監修の「猫の症状」をご覧ください。

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