猫伝染性腹膜炎(FIP)の症状と原因、治療法について
最終更新日:2024年07月09日
本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。
- 猫伝染性腹膜炎(FIP)ってどんな病気?
- どうして症状が出るの?原因は?
- どんな猫が猫伝染性腹膜炎(FIP)にかかりやすいの?
- 猫伝染性腹膜炎(FIP)の症状とチェック項目
- 猫伝染性腹膜炎(FIP)の治療方法は?
- どうやって予防したらいいの?
猫伝染性腹膜炎(FIP)ってどんな病気?
猫伝染性腹膜炎(FIP)に効果がある薬は、現時点で見つかっておらず、死亡率はほぼ100%だと言われています。
この病気に感染する原因は、いまだ不明な部分が多いものの、飼い主さんの対応によって感染リスクを減らすことができます。
FIPになる猫はFIPVが体内にできることで発症する
猫コロナウイルス自体は多くの猫が保有しているウイルスで、重篤な症状を引き起こすことはありません。
しかし、この保有している猫コロナウイルスが突然変異し、FIPウイルスになることでFIPを発症します。
この猫コロナウイルスがFIPウイルスに変異するメカニズムは明確になっておらず、ワクチンなどで発症を防げないのが現状です。
FIPウイルスそのものは猫から猫へと感染しませんが、変異前の猫コロナウイルスは主に糞を介して猫から猫へと感染します。
どうして症状が出るの?原因は?
猫伝染性腹膜炎(FIP)の原因は、猫腸コロナウイルスと呼ばれるウイルスの突然変異です。
猫腸コロナウイルスは、簡単に感染してしまいますが、病原性が低く、また、感染しただけの状態であれば何も悪さをしません。
しかし、猫の体内で猫腸コロナウイルスが、まれに何らかのきっかけで突然変異を起こし、FIPウイルスになってしまうことがあります。
このFIPウイルスは非常に毒性が強く、また、多くの謎に包まれ全容解明には至っていません。
そして、発症すると現時点では、ほぼ100%の確率で助からないと言われています。
猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)の出どころは、遺伝性や猫種による発症率の差が原因のひとつと考えられていますが、確定されていません。
どんな猫が猫伝染性腹膜炎(FIP)にかかりやすいの?
細菌性免疫が高い個体ほど猫伝染性腹膜炎(FIP)の発症率が低いとされています。
このことから、純血種と雑種の違いや、家系の違いといった遺伝性が関係していると考えられています。
猫伝染性腹膜炎(FIP)の症状とチェック項目
猫伝染性腹膜炎の症状は、腹水のような水がたまる症状のウェット型(滲出型)と、それ以外の症状しか見られないドライ型(非滲出型)があります。
猫伝染性腹膜炎「ウェット型(滲出型)」の症状
ウェット型(滲出型)とは、血管の中からタンパク質が漏れ出すことが原因で周囲に体液がたまってしまう症状を指します。
発症場所として多いのが、腹膜腔、胸膜腔、心膜腔で、見た目にわかるほど、重度の腹水、胸水、心嚢水を引き起こします。
猫伝染性腹膜炎(FIP)のウェット型(滲出型)では、主に次のような症状が見られます。
- 少し元気がない
- 微熱(39度~39.5度)
- 腹水、および腹部膨満が見受けられる
- 胸水、および呼吸困難の症状が見られる
- 心膜滲出液(心嚢水)
- 副鼻腔炎の症状が出る場合もある
- 精巣鞘膜の滲出液による陰嚢拡大の症状が出る場合もある
猫伝染性腹膜炎「ドライ型(非滲出型)」の症状
猫伝染性腹膜炎(FIP)のドライ型(非滲出型)では、主に次のような症状が見られます。
- 抗生物質が効かない、断続的な微熱
- 食欲がない
- 元気がない
- 黄疸
- 眼症状(ぶどう膜炎/角膜沈殿物(ムーンファット)/眼房水フレア/網膜血管炎/虹彩炎/突然の視覚障害/脈絡叢炎)
- 神経症状(運動失調/知覚過敏/眼振/発作/行動の変容)
猫伝染性腹膜炎(FIP)の治療方法は?
最近まで、猫伝染性腹膜炎(FIP)に対する有効な治療法は確立されておらず、ステロイド剤で炎症を抑えたり、猫インターフェロン製剤の注射でウイルスを抑えたり、免疫抑制剤で過剰な免疫を抑制したりなどの対症療法が中心でした。
しかし、これらの方法では症状の改善や延命にある程度の効果は示すものの、完治は難しく、FIPはずっと「不治の病」とされてきました。 近年では、イギリスやオーストラリアではFIPの治療薬として承認されている(日本では未承認)『GS-441524』、新型コロナウイルス感染症治療薬でFIPの治療薬としては未承認の『レムデシビル』や『モルヌピラビル』といった、抗ウイルス薬を使用した治療が行われています。
また、この他にもGS-441524のコピー製品も広く出回り治療に使用されているのが現状です。 日本で未承認の抗ウイルス薬などを使用する場合、かかりつけとなる獣医師が自身の手段で輸入して取り入れるなどの方法で日本でも使用している場合がありますが、治療薬に関する扱いや考え方は動物病院によっても差があります。
使用を希望する場合はかかりつけの病院で使用が可能なのかということを確認することをおすすめします。
猫伝染性腹膜炎(FIP)の治療にかかる費用相場
GS-441524やレムデシビルなどのFIP治療薬はとても高価であり、治療を行う場合には60~150万円の費用が必要です。
一方、モルヌピラビルはこれらと比較して安価で4分の1ほどの価格で治療を行うことができますが、GS-441524と比較して抗FIPウイルス作用が劣るため重症例には不向きと考えられています。
また、FIPのタイプや、症状の重篤度などによっても治療費は異なり、体重3㎏のウェットタイプの猫では検査費用は5万円~、内服薬代(84日投与)は45万円~と合計60万円程度必要です。 ドライタイプは、内臓にダメージが集中するため治療期間が長くなり、合計90万円程度になります。
また、3㎏のFIPの猫で状態が悪く入院治療による注射薬により開始し、状態改善後内服薬投与に移行するため、検査費用は5万円~、注射代(7日間投与)10万円~、内服薬代(77日投与)は40万円~に入院治療費を加え、合計120万円程度必要です。
※診療費はあくまで参考例となります。診療費は動物病院によって異なります。
どうやって予防したらいいの?
猫伝染性腹膜炎(FIP)の元となる「猫腸コロナウイルス」に感染しないようにする、もし感染していたとしても発症しないようにすることが予防になります。
ただ、猫腸コロナウイルスは蔓延しており、ブリーダーや猫シェルターから完全に排除することは非常に困難です。
猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症を予防するには、猫をストレスの少ない環境で飼育すること、多頭飼育を避けることなどが有効であると言われています。
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猫種別の保険料
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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社
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