猫風邪の症状と原因、治療法について

最終更新日:2024年03月29日

猫風邪ってどんな病気?

猫風邪は、動物病院で診療していると、診る機会の多い病気のひとつで、猫に鼻水や目やに、涙、くしゃみなど、いわゆる風邪のような症状が認められる病気のことです。

猫風邪の原因と症状

どうして症状が出るの?原因は?

猫風邪は、ウイルス、細菌、クラミジアといった病原体感染症で、たくさんの原因があります。この中でも特に猫ヘルペスウイルスと猫カリシウイルスの関与が大きいとされています。

猫風邪の感染経路は?

猫風邪は基本的に感染した猫との接触による接触感染や、その猫のくしゃみや咳、鼻水などによる飛沫によって感染する飛沫感染の2種類が主な感染経路となります。

また、猫風邪の原因となる猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスに対するワクチンを接種していても感染や発症を完璧に防ぐことは難しく、あくまで重症化を防ぐことを目的としていると考えておいたほうが安心です。

特に老猫や持病のある猫、まだ初年度のワクチン接種スケジュールが完了していない猫の場合は感染してしまうと重症化する危険性が高いため、注意が必要となります。

自宅でできる対策は?

飼い主さんにできる対策として、まずはかかりつけの獣医師と相談して愛猫の年齢や環境などに沿った適切な種類のワクチンを適切なスケジュールで接種することが基本となります。

また、猫を外には出さずに完璧な室内飼いを徹底することや帰宅したら猫と触れ合う前に手を念入りに洗い、服を着替えることも重要な対策となります。

猫がよくいる場所に温湿度計を設置することで温度や湿度を確認し、常に快適な状態となるようにエアコンや加湿器、除湿機などを使用することもおすすめです。

これらに加えて何かしらの症状が見られた場合は飼い主さんの判断のみで様子見をせず、すぐに動物病院に相談するという習慣もつけておくようにしましょう。

どんな猫が猫風邪にかかりやすいの?

多頭飼いをしている猫では感染のリスク、あるいはストレスがかかりやすいので発症のリスクが高いことが知られています。

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猫風邪の症状とチェック項目

猫ヘルペスウイルスの症状

猫ヘルペスウイルスは、猫の口や鼻、眼の結膜から感染します。くしゃみで飛ばされた鼻水や涙、目やになどの分泌物に含まれる大量のウイルスを粘膜から取り込むことによって感染が成立します。侵入したウイルスは猫の鼻、喉の粘膜上皮で増殖し、結膜や気管支に広がり、症状が出ます。その結果として粘膜表面に炎症が起こり、結膜炎や鼻炎、気管支炎を発症します。

猫ヘルペスウイルスは、回復した症状のない猫でも完全に消えてしまうことはなく、保有し続けます。その場合、ウイルスが再度活性化することがあり、それは猫が何らかのストレスを受けて起こることが多いのです。また、コステロイドのような免疫を抑える薬によって再活性化することもあります。さらに、粘膜の環境が悪化すると、そこに常在する細菌が悪さをするようになります。

猫が猫ヘルペスウイルス感染症を発症すると、以下のような症状が見られます。

  • 元気低下
  • くしゃみ
  • 食欲低下
  • 透明な鼻水や目やに(汚れが付いて黒色になることもある)
  • 細菌が悪さをすると粘性の高い黄色から緑色がかった(粘液膿性の)鼻水・目やに
  • 発熱
  • よだれ
  • 結膜(白目)の充血や腫れ

鼻水や目やにが粘液膿性(粘性が高く黄色や緑色がかった状態)になると、鼻や眼を塞いでしまうことがあります。また、重度の場合、猫に呼吸困難や咳が認められます。

猫カリシウイルスの症状

猫カリシウイルスは、猫ヘルペスウイルスとほぼ同様の感染経路ですが、症状のある猫だけでなく、症状が回復した猫や症状のない猫からも30日間以上ウイルスを排出し続けます。なお、猫カリシウイルス感染の症状は猫ヘルペスウイルスと類似していますが、口内炎が出てくるのが特徴的です。また、急性の肺炎が出る場合があり、関節に感染すると、足を引きずるような症状が出ることもあります。

口内炎のより詳しい原因、症状、予防については獣医師監修の「猫の口内炎」を併せてご覧ください。

猫風邪はどうやって診断されるの?

基本的には症状から診断します。猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスの症状が出ており、そのほかに異常が見られない場合には、猫風邪と診断し、後述する治療に対する反応を見ることで診断をつけます。

きちんと診断をつける方法(確定診断)としては、ウイルス自体を検出する方法(ウイルス分離)、ウイルスの遺伝子を検出する方法(PCR法)、血液検査があります。

ウイルス分離

最も確実なのはウイルス分離という方法で、口の中や鼻の中、結膜の表面を綿棒のようなスワブと呼ばれる道具で拭った液からウイルスを分離します。ウイルスは生きた細胞の中でしか増殖しないので、培養細胞や鶏卵、マウスに感染させて増殖を検出します。これでウイルスが検出されれば、それが原因であると判断できます。しかし、ウイルス分離は時間がかかります。

PCR法

ウイルス分離と比較すると、PCR法のほうが迅速です。一方で、検出感度が非常に高く、ごくわずかなウイルスでも検出されてしまい、症状の原因が猫ヘルペスウイルスでなくても陽性になってしまうことがあるため注意が必要です。なお、ウイルスの遺伝子検出が陰性であれば、猫ヘルペスウイルスによる症状は否定的となります。

血液検査

血液検査はワクチンを投与されていたり、過去に感染していたりすると、判断が難しくなります。

猫風邪の治療にはどんな方法があるの?

猫風邪の原因ウイルスに対する直接的な治療法としては、全身的な抗ウイルス薬の投与が挙げられます。その有効性が報告されているのは、アシクロビル、ガンシクロビル、ファムシクロビルであり、インターフェロン、L-リジンの投与は一般の動物病院でもよく行われる治療です。

また、直接ウイルスに対処する治療ではありませんが、支持療法が非常に重要です。症状の出ている猫は鼻づまりや口内炎で食事を取らない場合があるため、重症の猫や衰弱している幼齢猫などに対しては、かなり積極的な栄養補助が必要となります。そこで、猫の好みの食事を与えたり、食欲増進剤であるシプロヘプタジンを使用したりします。

それでも食欲が改善しないようなら、鼻に管を設置する経鼻カテーテル、食道や胃に直接栄養チューブの設置するチューブフィーディングを検討します。また、脱水しているのであれば点滴も行います。ステロイドの投与はウイルスを活性化させてしまうため使わずに、非ステロイド系の解熱剤を用います。痰を切る作用のあるブロムヘキシンを使うこともあります。さらに、細菌感染により悪化するので抗菌薬もよく使用します。

鼻や眼が塞がっている場合には、抗菌薬や抗ウイルス薬、インターフェロン入りの点眼薬を使用します。ネブライザーで薬剤を吸引させると喉や鼻の粘膜の乾燥予防に有効です。

猫風邪の治療と予防

猫風邪は治せるの?

幼齢猫や免疫力が低下している状態の猫では、猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスでも死亡率が高いのですが、免疫力がある猫であれば、猫ヘルペスウイルスの症状から自力で回復し、カリシウイルスも良好に回復します。

しかし、一部の猫では粘膜に症状が残ってしまい、鼻炎になりやすくなってしまうこともあるようです。

また、猫ヘルペスウイルス感染症などの猫風邪の原因となるウイルスや細菌は完全に除去することはできず、症状の再発がしばしば認められるため、生涯に渡って管理が必要です。

猫が風邪にかかった際の治療費用の目安は?

まだ猫風邪が初期の軽度の段階ならば抗生剤の内服や点鼻・点眼薬の処方のみとなるため約2,000円~3,000円の費用となります

重症の場合は点滴や注射といった処置に加えて入院が必要となることもあり、7,000円~10,000円といった高額となるケースもあると考えられます。

加えて初診の場合は「初診料」としておよそ1,000円~1,500円、再診では「再診料」として800円~1,000円ほど必要になります。

※診療費は参考例であり、平均や水準を示すものではありません。診療費は動物病院によって異なります。

どうやって予防したらいいの?

猫ヘルペスウイルスも猫カリシウイルス感染もワクチンがあります。猫ヘルペスウイルスと猫カリシウイルス感染症は、猫汎白血球減少症である猫パルボウイルスに対するものとともにコアワクチン(猫が全員打つべきワクチンのこと)とされており、3種混合ワクチンとして日本で市販されています。

ただし、このワクチンは発症を予防するワクチンであり、感染を予防するワクチンではないことに注意が必要です。なお、感染している猫が確認された場合には、その猫のいた環境にウイルスが存在する可能性があるため、次亜塩素酸による消毒を行うといいでしょう。また、かかると重度になる幼若猫や免疫力の弱い猫は隔離する必要があります。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

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