猫のよだれの原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年02月29日

猫が異常なほどよだれを垂らす、よだれが止まらない原因としてどんな病気が考えられるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。

ごちそうを前に猫がよだれを垂らしているのであれば心配はいりませんが、口臭がきつい、食欲不振、痩せてきたなど、ほかに気になる症状があれば、何らかの病気が疑われます。猫の行動やふるまいに異常や変化を感じたら、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

猫のよだれの原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

猫のよだれの原因とは?

―猫が異常によだれを垂らす原因としてどんなものが考えられますか?

猫は犬と異なり、日常的によだれを垂らすことはほとんどありません。しかし、猫がよだれを垂らしているからといって必ずしも病気とは限りません。

例えば、興奮や緊張をして交感神経が刺激されたときや、リラックスしたり、お腹が空いたりして副交感神経が刺激されたときによだれを垂らすことがあります。

また、猫が漂白剤や殺虫剤をなめてしまったり、ツツジやじゃがいもといった植物などを食べてしまったりすると中毒症状を起こし、よだれを垂らすこともあります。

猫のよだれの原因として考えられる病気とは?

猫のよだれの原因として考えられる病気とは?

―猫が異常なほどよだれを垂らす病気として、どんなものがありますか?

口の中の病気

まず考えられる病気は、歯周病や口内炎といった口の中の病気です。

歯周病は高齢の猫に多く見られ、歯垢に含まれる細菌が産生する毒素によって、歯肉や歯周組織に炎症が起こります。

口内炎は、歯垢や歯石がたまっていたり、免疫力が低下しているときに細菌感染したりすることが原因で、舌や歯肉などに炎症が起こります。免疫力が下がる主な原因としては、猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症や猫白血病ウイルス(FeLV)感染症、猫風邪の一種である猫カリシウイルス(FCV)感染症が挙げられます。

また、熱中症やてんかん、腎不全などの病気が原因で、よだれを垂らすこともあります。

熱中症

猫は比較的暑さに強い動物ですが、夏場に空調の効いていない部屋や車の中で留守番をしていると、熱中症になる可能性は十分にあります。

熱中症のより詳しい原因、症状、予防については獣医師監修の「猫の熱中症」を併せてご覧ください。

てんかん

てんかんには原因がわからない「特発性」と、脳腫瘍のような脳の病気が原因で起こる「症候性」があります。てんかん発作の症状として、よだれを垂らしながら全身がけいれん(痙攣)したり、手足をバタバタさせたりします。詳しくは獣医師による記事「猫のてんかん」をご覧ください。

腎不全

腎不全は高齢の猫に多く見られます。腎臓は体の中の毒素や老廃物を尿として体の外に排泄する役割がありますが、腎不全になると腎機能が低下するため、毒素や老廃物が体内にたまって「尿毒症」を引き起こし、気持ち悪さからよだれを垂らすようになるのです。

腎不全の詳しい原因や症状、対処法については、獣医師監修の「猫の腎不全」を併せてご覧ください。

猫のよだれで、こんな症状が見られたらすぐに病院へ

猫のよだれで、こんな症状が見られたらすぐに病院へ

―猫がよだれを垂らしていても心配がいらない、様子を見ていい状態とはどのようなものですか?

食前のようなお腹が空いているときや、なでられてリラックスしているときに、猫がサラサラしたよだれを垂らしている場合、ケージに入って車に乗るといった緊張しているときにネバネバしたよだれを垂らしている場合などは、そのまま様子を見てもまず問題はないでしょう。

ただし、猫のよだれがなかなか止まらない場合や嘔吐のような、よだれ以外の症状を伴う場合は、何かしらの病気にかかっている可能性があります。

猫のよだれと危険な症状のチェックリスト

―受診すべき、よだれの状態とほかに見られる症状について教えてください。

口の中の病気

次のような症状が猫に見られる場合は、歯周病や口内炎など口の中の病気が疑われます。

  • 歯ぐきから出血して茶色っぽいよだれを垂らしている
  • 口が臭い
  • えさを食べにくそうにしている
  • 食欲が落ちた

歯周病を放置してしまうと猫の歯の根元に白い膿がたまったり、歯ぐきに穴が開いたり、歯が抜け落ちたりします。また、歯周病も口内炎も痛みから食欲が落ちてしまうと体力が低下して、最悪の場合、命にかかわることがあるので注意が必要です。

熱中症

夏場に次のような症状が猫に見られる場合は熱中症が疑われます。

  • 口を開けたまま、よだれを垂らしている
  • 呼吸が速い
  • 嘔吐している

猫をそのまま放置してしまうと、意識がなくなったり全身がけいれんしたりするようになり、ショック症状を起こし、生命の危機にかかわる危険性があります。

中毒やてんかん

猫のよだれが泡状の場合は、中毒やてんかんが疑われます。中毒は飲み込んでしまったものや量によっては命にかかわることがありますので注意が必要です。

また、てんかんは、軽度の発作であれば、数分で何事もなかったかのように元の状態に戻ることが多いのですが、短時間で何度も発作を繰り返す場合や発作の時間が長い場合は、重篤な事態に陥る危険性があります。

腎不全

高齢の猫がよだれを垂らし、さらに次に挙げるような症状が見られる場合は腎不全が疑われます。

  • 何度も嘔吐する
  • 口が臭い
  • 食欲が落ちた
  • 痩せてきた

腎不全は、そのまま放置してしまうと病気が進行して、取り返しがつかない事態に陥る危険性があります。様子を見ようとせず、早急に受診してください。

猫のよだれの対処法

猫のよだれの対処法と予防法

―猫のよだれを垂らしていたら、飼い主はどのように対処したらいいのでしょうか。

よだれの量が少なく、ほかに何も症状がなければ病気にかかっている可能性は低いと考えられるため、そのまま様子を見ても大丈夫です。

よだれが多く、ほかの症状が見られたら、すぐ病院へ

逆に、よだれの量が多く、猫に何かほかの症状を伴う場合は、病気の可能性が高いと考えられます。よだれが出る病気には命にかかわるものが多いため、様子を見ずに、すぐに動物病院を受診するようにしましょう。

猫のよだれの予防と対策

―猫のよだれを抑えるための予防や、日頃から飼い主が気を付けるべきことがあれば教えてください。

お腹が空いてよだれを垂らしている場合

猫の体重に対するフード量が少ない可能性があるため、確認してみましょう。フードの量に問題がなければ、1日の量は変えず、食事の回数を増やすようにしてください。

緊張や興奮からよだれを垂らしている場合

猫の緊張や興奮の原因を取り除くことが重要です。例えば、キャリーケースに入ることを嫌がって、よだれが出ているのであれば、普段からキャリーケースを部屋に置いて慣らしてあげましょう。

中毒の予防

猫の口が届く場所に、中毒を起こすようなものを置かないことが重要です。観葉植物や花などを室内に飾りたい場合は、猫が中毒を起こさないものを選ぶようにしましょう。

歯周病の予防

猫の歯磨きを毎日することで、ある程度、予防することができます。ただし、いきなり歯ブラシを使おうとせずに、まずは口元を触ることから始め、口の中を手で触れるようになるまで少しずつ慣らしていってください。次に、ガーゼを巻いた指で歯磨きをし、嫌がらずに歯磨きをさせてくれるようになったら、歯ブラシに移行します。歯ブラシは歯に対して45度の角度で行い、やさしく磨くようにしましょう。

口内炎の予防

口内炎を引き起こす一部のウイルス感染症は、ワクチン接種で予防できます。しかし、飼い主さんを経由してウイルスを外から持ち帰ってきてしまうことがあるため、猫を完全室内飼育、かつ単頭飼育であっても定期的にワクチン接種をするようにしましょう。

熱中症の予防

夏場にはエアコンを付ける、猫が常に新鮮な水を飲めるようにしておく、体重管理をして太らせないようにするなどで予防することができます。

腎不全の対処

猫の腎不全を完全に予防することは難しいものの、塩分を控えたり常に新鮮な水を飲めるようにしたりすれば腎臓への負担を減らせます。また、腎不全の初期段階では無症状であることが多いため、猫が7歳を過ぎたら定期的に血液検査や尿検査を受け、早期発見・早期治療を心がけましょう。

まとめ

猫のよだれが増えてきた、様子がおかしいと思っても、猫は口の中や体を触られることを嫌がる場合が多々あります。そのため、このまま様子を見てもいいものか、すぐに動物病院を受診したほうがいいのかの判断に迷う方が多いかもしれません。

しかし、猫のよだれが出る病気には命にかかわる重大なものが多いため、たかがよだれと思わず、判断に迷ったらすぐに動物病院を受診するようにしましょう。

そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

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動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。