猫の口内炎の症状と原因、治療法について

猫の口内炎ってどんな病気?

口内炎とは、口の中の粘膜組織のようなやわらかい部分に起こる炎症です。歯肉(歯ぐき)にも炎症が起こるため、歯肉口内炎と呼ばれ、また、治りにくいため慢性口内炎と呼ばれることもあります。

口の中は外界からの微生物が侵入しやすい場所であるため、正常な口腔環境では口の中の細菌や体の免疫力がこれを防御しています。その防御システムに障害が生じると、口の中に炎症や潰瘍ができてしまうのです。

口内炎は、さまざまな原因から発症しますが、中でもウイルス感染の影響で起こるものは治療が思うようにいかないことが多く、猫に全身麻酔をかけて歯を抜くといった治療が必要になるケースもあります。

猫の口内炎の原因と症状

どうして症状が出るの?原因は?

猫の口内炎は、猫白血病ウイルス感染症や猫免疫不全ウイルス感染症のような免疫が抑えられてしまう病気から二次感染によって発症します。また、腎不全、異物の存在や異物をかんだ影響(猫では電気コードをかんでしまい、感電の影響で口内炎になることが時々あります)、猫ウイルス性鼻気管炎ウイルス、猫カリシウイルスのような上部気道ウイルス感染症、歯根部の膿瘍、重度の歯周病といったものが一般的な原因とされています。

このほか、歯石の付着や歯周病の程度と関連しているという報告もありますが、実際には歯石が付いていなくても口内炎がある猫が多数います。

ウイルス感染の中では、猫カリシウイルスの感染が最も多く、口内炎の猫の50~100%で猫カリシウイルスに感染しているとのデータがあります。しかし、まったくウイルス感染がなくても口内炎になる猫もいます。

以上のことから、猫の口内炎ができる原因はひとつだけではなく、多くの場合、いくつかが組み合わさって発症していると考えられます。

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猫の口内炎の症状とチェック項目

猫の口内炎は、性差や品種による偏りはない

猫の口内炎のできやすさに性別差はありません。また、品種との関係は報告がさまざまで、純血種に多いという報告や品種差はないという報告もあります。発症の年齢は、4ヶ月から17歳と非常に幅広くなっています。平均発症年齢は4歳以上や7歳など諸説あります。

猫の口内炎とフードとの関連

フードとの関連ですが、缶詰のようなウェットタイプのフードを主食にしている猫に口内炎の発症が多いとの報告があります。缶詰を主食にしている猫は、ドライフードを主食にしている猫と比べると歯周病の発症率が高く、その影響で口内炎の発症率も高くなっている可能性があります。

口内炎の症状

猫が口内炎になると、濃くネバネバした唾液や、激しい口臭が出ます。また、痛みによって食欲不振になったり熱が出たり、体重が減少してしまうこともあります。ただし、歯周病や口腔内腫瘍など、口内のほかの異常でも同じような症状が見られるため、症状だけで口内炎と断定することはできません。

上記の症状は、比較的進行してから見られることが多いため、まずは次のような行動やしぐさが出ていないかを確認してください。

  • 最近毛づくろいをしなくなった
  • 口の周りがいつも汚れている
  • 口を拭うため、手首の内側が汚れて濡れている
  • よだれに血が混じっている
  • 食欲はありそうなのに、食べることを躊躇する

猫の口内炎はどうやって診断されるの?

人の口内炎とは、口の中の2箇所以上の粘膜の炎症を指します。猫では明確な診断基準はないため、人の基準に合わせて診断することが多いようです。炎症が起こる場所は、歯肉(歯ぐき)、頬の内側の粘膜、舌、唇などが含まれます。診断は、肉眼上でこの所見を確認します。

また、腎不全のような基礎疾患がある場合は、そちらの治療も必要になるため、状態によっては、各種ウイルス検査、一般血液検査、甲状腺ホルモン測定などを行うこともあります。

猫の口内炎の治療にはどんな方法があるの?

猫の口内炎の治療と予防

猫の口内炎の治療方法

猫の口内炎を治療は、下記のような方法を組み合わせて行います。

  • 歯垢・歯石除去
  • 抗生物質療法
  • ステロイド剤による免疫抑制療法
  • そのほかの薬剤による免疫抑制療法
  • ラクトフェリン投与による抗菌作用と免疫賦活作用を期待した治療
  • 低アレルギー食による治療
  • 炭酸ガスレーザーによる治療
  • デンタルジェルの塗布
  • 非ステロイド性抗炎症剤の投与
  • 抜歯(炎症部の抜歯、全臼歯抜歯、全顎抜歯)

どの方法や組み合わせで効果が出るのかは、個体差が大きいため、いろいろ試しながら効果を判定していくことになります。中でも、抜歯を伴う治療が最も治療効果が高いとされています。

猫の口内炎の治療の流れ

治療の流れの一例を解説します。まず、猫免疫不全ウイルスと猫白血病ウイルスの感染有無にかかわらず、それ以外の基礎疾患がなければ、抗生物質を投与して数日経過を観察します。続いて、全身麻酔をかけてスケーリングを行い、可能な限り口の中をきれいにします。歯周炎がひどい場合は抜歯をします。その後、数日は抗生物質の投与とデンタルジェルの塗布を続けます。ここまでで炎症が軽減されることがあります。

炎症が続くようであれば、ステロイドやラクトフェリンの投与を考慮します。これで落ち着くようであれば、その後は歯磨きのようなデンタルケアで管理していきます。ただし、炎症があると痛むため歯磨きは控えます。

歯石除去後はしばらく内科的な管理を行いますが、再びひどい炎症が起こってしまうようであれば、全臼歯(犬歯より奥に生えている歯)の抜歯を行います。それでも落ち着かなければ、前歯や犬歯も抜歯します。ほとんどの猫で、ここまでの治療をすれば完治、もしくはそれに近い状態にまで改善できますが、処置後どれくらいで落ち着くかは個体差があります。

猫の口内炎は治せるの?

個体差はありますが、治療によって完治することも十分にあります。

どうやって予防したらいいの? 症状を緩和するにはどうしたらいいの?

口内炎になるメカニズムは、まだ完全には解明されていません。しかし、歯垢や歯石にかかわる口の中の細菌、猫カリシウイルス、猫白血病ウイルス、猫免疫不全ウイルスなどのウイルス感染、そして、猫の個体ごとの免疫力の程度などが関連し合って口内炎が発症するかどうか、また、どの程度の炎症が起こるのかが決まると考えられています。

以上のことから、完全に予防することは難しいですが、子猫のころからのケアで発生を少なくしたり、症状の程度を軽くしたりすることは可能です。

例えば、缶詰のウェットフードよりもドライフードを猫に与える、デンタルケアの効果があるおやつを与えるといったものから、歯磨きの習慣を付けるといった日常的なケアがあります。また、ウイルス感染の予防として、室内飼育にする、ワクチン接種をする、不妊手術をしておくのもいいいでしょう。これらのほか、猫の免疫力を高めるために、健康管理や栄養バランスに気を付ける、ストレスがかからないように環境を整えるといったものも挙げられます。

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