猫のうんちに白い虫が見られたら?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年03月12日

猫のおしりの周りやうんちに白いものが見られたら、寄生虫のおそれがあります。猫が寄生虫に感染すると、下痢や嘔吐(おうと)などの症状が引き起こされます。また、こうした寄生虫は、人にもうつる可能性があるので注意が必要です。

ここでは、寄生虫感染によって見られる猫の症状、予防や対処法などを獣医師さんに伺いました。猫のうんちに虫のようなものが見える、下痢や嘔吐がなかなか治らないなど、気になる症状があれば、すぐに獣医師に相談しましょう。

猫のうんちに白い虫が見られたら?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

猫のうんちに白い虫! 考えられる寄生虫は?

―猫のうんちやおしり周りに何やら白いものが見えます。これは一体何なのでしょうか?

寄生虫が考えられます。うんちの中に肉眼で確認できる寄生虫の中で特に多いものは、次の3種です。

猫回虫

猫回虫は主に猫の小腸に寄生しますが、気管に移行する場合もあります。猫回虫の成虫の大きさは3~10cmほどで、見た目は輪ゴムに似ています。駆虫薬で駆虫すると、猫回虫の成虫の死体が猫のうんちに混ざって見られます。

瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)

瓜実条虫は、猫の小腸に寄生します。全長は15~80cmにもなり、100個以上の節からできています。瓜実条虫は、「受胎片節」という内部に卵を含んだ節を猫の小腸内で切り離し、猫の糞便中に排泄します。

排泄された受胎片節は、猫の糞便上で動き回り、卵を放出します。受胎片節は米粒のような見た目をしていて、伸び縮みしながら動き回っているため、目につきやすく、飼い主さんによく発見されます。

マンソン裂頭条虫

マンソン裂頭条虫は、主に猫の小腸に寄生します。マンソン裂頭条虫も瓜実条虫と同様に、猫の糞便中に排泄された片節が肉眼で確認できます。きしめんのような見た目をしていて、長いものでは1m以上にもなります。

猫はどこで寄生虫に感染するのか?

猫はどこで寄生虫に感染するのか?

猫回虫の寄生

糞便からの感染

糞便中に排泄された猫回虫の卵を、何かの拍子で食べてしまうと感染します。

待機宿主を捕食して感染

ネズミや昆虫は、糞便中に排泄された猫回虫の卵を食べて待機宿主になります。猫は待機宿主となったネズミや昆虫を食べることで、感染します。

母子感染

猫回虫にすでに感染している母猫の母乳を飲むことで、子猫に感染する場合があります。

瓜実条虫の寄生

中間宿主を捕食して感染

ノミやハジラミは、糞便中に排泄された瓜実条虫の卵を食べて中間宿主になります。中間宿主となったノミやハジラミを食べることで、猫も感染します。

マンソン裂頭条虫の寄生

糞便中に排泄されたマンソン裂頭条虫の卵を食べたケンミジンコが、第一中間宿主になります。このケンミジンコをカエルやヘビなどが食べ、第二中間宿主になります。猫は第二中間宿主を食べることで、感染します。

どんな猫が寄生虫に感染しやすいのか?

家の外に出る習慣がある猫が圧倒的に感染しやすいと言えます。外で遊ぶ猫は、寄生虫の卵に汚染されたものを食べたり、待機宿主や中間宿主を食べたりしてしまう確率が高くなるからです。

猫の寄生虫は人にも感染する

猫回虫、瓜実条虫、マンソン裂頭条虫は、いずれも人に感染します。感染経路は、それぞれ以下のとおりです。

猫回虫

猫回虫の卵が何かの拍子に人の口に入ってしまうと、感染する場合があります。

瓜実条虫

瓜実条虫に感染したノミが人の口に入ると、感染するおそれがあります。猫についたノミを指で潰すと、食べ物と一緒に口に入る場合があるため危険です。

マンソン裂頭条虫

カエルやヘビを生で食べたり、ケンミジンコを含む水を飲んだりすると感染します。

猫が寄生虫に感染すると見られる症状

猫が寄生虫に感染すると見られる症状

感染初期は無症状

いずれの寄生虫も、感染初期はほとんどが無症状です。

大量に寄生されると、さまざまな症状が引き起こされる

猫回虫

下痢や嘔吐、削痩(るいそう:やせて著しく細くなった状態)、便秘、腹痛、腹部膨満(ぼうまん)、貧血、口臭などが見られます。猫回虫が気管に移行すると、咳をする場合もあります。

瓜実条虫

下痢や嘔吐、削痩、食欲の異常亢進(こうしん:必要以上に活発になること)、痙攣(けいれん)、てんかんなどが見られます。

マンソン裂頭条虫

下痢や嘔吐、削痩、栄養障害、発育不全などが現れます。

猫が寄生虫に感染しているかも! こんな症状ならすぐ病院へ

猫のうんちの中に寄生虫のようなものを確認したら、動物病院を受診しましょう。肉眼で確認できる場合は、ほぼ寄生虫に感染しています。

猫になかなか治らない下痢や嘔吐、貧血が見られる場合、寄生虫に感染している可能性も考えられます。貧血の見分け方は、歯ぐきや舌の色を確認するといいでしょう。いつもより白っぽかったら貧血を起こしています。いずれも放置すると重症化のおそれがあるため、すぐに獣医師の診察を受けましょう。

また、動物病院を受診するときには、猫のうんちも持参してください。検便によって寄生虫病が診断できる場合があります。その際に持参するうんちはなるべく直近のもの、できれば当日中のものにしてください。

気になる症状のまとめ

  • うんちの中に虫のようなものが見える
  • 下痢や嘔吐が続く
  • 貧血

猫の寄生虫の駆除、治療について

病院での対処法

まずは検便を行います。うんちを持参していれば、スムーズに検査できます。持参していなくても、猫の体内にうんちがたまっていれば、直腸からうんちを採取できます。しかし、猫への負担が大きいので、なるべく持参しましょう。

顕微鏡検査で寄生虫の卵が確認され、寄生虫病と診断されたら、駆虫を行います。猫回虫や瓜実条虫の場合は、たいてい内服薬で駆虫します。マンソン裂頭条虫の場合は、薬用量が多いので注射薬で駆虫します。

寄生虫駆除のスケジュール

一度駆虫薬を投与したら、2週間後にもう一度検便をします。検便で寄生虫卵が見つからなければ治療終了ですが、まだ寄生虫卵が確認できる場合はもう一度投与し、2週間後に再確認します。

猫の寄生虫の予防と対策

猫の寄生虫の予防と対策

定期的な便検査と駆虫薬の投与

外に出る習慣のある猫は特に、定期的な検便をおすすめします。定期的に通院している場合は、ついでにうんちを持参すれば検査できるので、気軽に獣医師に依頼してください。

また、回虫の場合は、定期的な駆虫薬の投与が有効です。ノミダニ予防薬の中には、回虫も一緒に駆除できるものもあるため、試してみるといいでしょう。

瓜実条虫の予防には、ノミの駆除が大切です。月に1回、ノミダニ駆除薬を投与すれば駆除できます。家の中は冬でも暖かいので、一年を通しての投与がおすすめです。

マンソン裂頭条虫の予防には、猫を外に出さないことが大切です。なるべく家の中で飼育し、猫がカエルやヘビを食べてしまう機会をなくしましょう。

回虫の二次感染予防には、猫の便を速やかに片付けること

回虫は猫の糞便により感染が広がります。同居猫に感染が広がらないようにしたり、再感染を防いだりするためには、猫のうんちをなるべく早く片付けましょう。

マンソン裂頭条虫の感染予防には、猫を外に出さないこと

マンソン裂頭条虫の感染予防には、猫を室内で飼育し、猫がカエルやヘビを食べてしまう機会をなくしましょう。

また、猫の室内飼育は、猫回虫や瓜実条虫の予防にも有効です。ほかの猫から猫回虫やノミをうつされる危険性を減らせます。

まとめ

猫のうんちの中から発見されることの多い寄生虫には、猫回虫や瓜実条虫、マンソン裂頭条虫などがあります。いずれの寄生虫も、放置すると重症化する危険があるため、疑わしい場合はすぐに動物病院を受診しましょう。受診の際は、猫のうんちを持参してください。

また、定期的な検便や駆虫薬の投与、猫を外に出さないなどの対策を講じて、寄生虫の感染を予防しましょう。

そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

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