猫の軟便の原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年02月22日

猫のうんちは、健康状態を知るうえで大切なものです。猫が軟便を出したら、その原因は一過性の場合もあれば、何らかの病気によるものかもしれません。ここでは、病院に連れて行くべき猫の症状や対処法などを獣医師さんに伺いました。

言葉を発することができない猫の健康状態を身近で把握できるのは、飼い主さんです。猫のうんちの状態を毎日チェックし、体調の変化に気付いてあげましょう。

猫の軟便の原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

猫の軟便の原因や病気とは?

軟便とは?

―猫のうんちは健康状態を知るバロメーター言われますが、猫の軟便について教えてください。

うんちの形状は、うんちの水分量によって決まります。軟便とは、正常のうんちと比べて水分量が多めで、やわらかいうんちです。さらに水分量が多くなり、形をとどめない状態を下痢と呼びます。

―猫のうんちがやわらかい、軟便の原因として、どんなものが考えられますか? また、通常のうんちに「最後だけ軟便」の場合についても教えてください。

水分の取りすぎ

水の飲みすぎや、水分量の多いご飯の食べすぎが原因で、うんちの水分量が増えると、軟便になります。

食べすぎ

一度に多くのものを食べすぎると、消化不良を起こして軟便になる可能性があります。また、便の最後だけ軟便になる「末端軟便」になる場合もあります。

フードが合わない

合わないフードを食べて消化不良を起こすと、軟便になる場合があります。また、フードの中の成分にアレルギー反応を起こして、軟便になる場合があります。

ストレス

人間と同じく、猫もストレスによって軟便になる場合があります。詳しい仕組みは解明されていませんが、ストレスホルモンにより腸の運動が乱れるためと言われています。

よくあるストレスの例としては、住環境の変化や、普段会わない人や猫との接触が挙げられます。

猫の軟便の原因や病気とは?

感染症

猫が軟便になる原因には、さまざまな感染症もあります。

寄生虫性の感染症では、猫回虫症や瓜実条虫症(うりざねじょうちゅうしょう)、ジアルジア症などが原因で軟便になります。猫回虫症はほかの猫のうんちから感染する場合が多く、瓜実条虫症はノミを食べて感染します。

ウイルス感染症では、猫腸コロナウイルス(FECV)による猫腸コロナウイルス感染症が原因で、軟便や軽度の下痢症状が現れます。

細菌性感染症では、サルモネラ症やカンピロバクター症、クロストリジウム症が軟便を引き起こす場合があります。

内臓疾患

小腸や大腸などの消化器系疾患や肝臓・胆道系の疾患、膵臓(すいぞう)の疾患などでも軟便を引き起こす場合があります。

消化器系の疾患としては、急性腸炎や食餌(しょくじ)反応性腸症、蛋白漏出性腸症(たんぱくろうしゅつせいちょうしょう)、リンパ腫などが考えられます。

肝臓・胆道系の疾患としては肝炎、膵臓の疾患としては膵炎などがそれぞれ考えられます。

薬の副作用

薬の副作用で軟便になる場合があります。抗生剤の投与が原因で腸内細菌のバランスが乱れ、軟便が引き起こされるケースもよく見られます。

猫の軟便で、こんな症状ならすぐ病院へ

猫の軟便で、こんな症状ならすぐ病院へ

心配のいらない猫の軟便

―私たち人間もお腹の冷えや消化不良で軟便になりますが、原因がよくわからない猫の場合は心配です。

一過性で猫がいつもどおり元気ならば、たいてい問題ありません。数日間様子を見ても遅くはないでしょう。

受診を強く勧める猫の軟便の症状

―軟便が何日間くらい続くようなら、動物病院を受診したほうがいいのでしょうか。軟便のほかに気になる症状について教えてください。

軟便が続く場合、病気の可能性を疑いましょう。目安としては、5日間続いたら動物病院の受診をおすすめします。猫の食欲や元気がないと急を要する場合がありますので、5日間を待たず、すぐに動物病院を受診しましょう。子猫の長期的な軟便は脱水症状の原因になるため、特に注意が必要です。また、老猫の場合、軟便が腫瘍(しゅよう)のサインである可能性があります。この場合もなるべく早く獣医師の診察を受けましょう。

猫の軟便の対処法

―猫が軟便をしたら、どう対処すればいいのでしょうか?

ご家庭で様子を見る場合

猫の軟便が何日続いているのか、カレンダーに記録を残しておきましょう。うんちを写真に撮っておくと、後日、動物病院を受診する際に診断がスムーズに進む場合があります。

病院での受診・治療が必要な場合

―軟便の症状から猫に大きな病気が疑われる場合、受診の際、どんな用意をすればいいですか?

動物病院を受診する際には、なるべく新鮮のうんちを持参してください。寄生虫を始めとする軟便の原因が特定できる場合があり、診断に役立ちます。また、いつから症状が現れ、一日に何回くらいうんちをするのかをメモしておくと問診がスムーズに進みます。

―動物病院では、どんな治療を行うのですか?

治療内容は軟便の原因や症状によって異なります。

一時的な場合の対処

水分の取りすぎや食べすぎ、ストレスなど、一時的な要因による場合は、整腸剤の内服によって治療します。脱水があれば、必要に応じて点滴も行います。

フードが合わない場合やアレルギーが疑われる場合は、療法食を使うことがあります。腸内細菌のバランスを整えるフードやアレルギーの原因物質を除去したフードなど、愛猫の状態に応じた適切な療法食を処方してもらえるでしょう。

感染症の対処

感染症の場合は、駆虫薬や抗生物質などによる治療を行います。少なくとも1週間から2週間程度の内服が必要になるでしょう。

高齢で内臓疾患が疑われる場合の対処

高齢で内臓の疾患が疑わしい猫には、血液検査やレントゲン撮影、エコー検査を念のために行う場合があります。病院によっては検査入院になります。

薬の副作用の場合の対処

薬の副作用による軟便が疑われる場合は、休薬や薬の変更が行われるでしょう。

―治療中に、特に気を付けなければならないことはありますか?

治療中は、猫のうんちの様子をよく観察してください。治療開始からうんちの性状がどのように変化していったのかをメモしておいて、次回の診察の時に獣医師に伝えましょう。また、猫の元気や食欲にも注目してください。新しい薬を飲み始めたり、今までと違ったフードを与え始めたりすると、体調を崩してしまう猫も少なからずいます。

猫の軟便の予防

猫の軟便の対処法と予防

―猫の軟便に対する予防法や、飼い主が日ごろから気を付けたいことがあれば教えてください。

猫は人間の食べ物を食べると、軟便になる場合があります。猫には猫用のご飯以外は与えないほうがいいでしょう。特に、牛乳を飲むとお腹を壊す猫は多いので、極力与えないでください。

ストレスを与えない環境作りも大切です。猫は敏感な生き物で、わずかな環境の変化にも影響されます。よその人が家に遊びに来てなでられたり、いじりまわされたりすると体調を崩す場合が多いので、他人との過度な接触はなるべく避けましょう。

また、できる限り外に出さずに室内で飼育しましょう。外は感染症の原因となる寄生虫やウイルス、細菌などがたくさんいます。外に出ている猫は、かなりの確率でそれらの病原体を保有しているため、接触すると伝染するリスクがあります。

まとめ

軟便は水分の量が多い軟らかめのうんちのことです。猫の軟便の原因はさまざまで、食べ物やストレス、感染症、服用している薬などが考えられます。猫に元気・食欲があれば、一時的な症状の可能性が高く、様子を見ても問題ないでしょう。ただし、症状が長く続き、元気や食欲がない場合はすぐに動物病院を受診してください

動物病院を受診する際は、新鮮なうんちを持参して検査してもらいましょう。検査したうえで原因に合わせた治療を行います。軟便の予防には、食べ物に気を付けることやストレスを与えないこと、猫を外に出さないことなどが大切です。

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そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

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