猫の多飲多尿の原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説
最終更新日:2024年09月17日
本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。
猫がやたら水を飲む、おしっこの量が増えたと感じることはありませんか? 猫の多飲多尿になる原因としてどんな病気が考えられるのでしょうか。また、予防や対処法、飼い主さんが心がけたいことなどを獣医師さんに伺ってみました。
猫は、あまり水を飲まない動物ですが、異常なほど水を飲むようなら何かの病気のサインかもしれません。猫の水の飲み方やトイレの回数など変化や異常を感じたら、すぐに獣医師さんに相談しましょう。
猫が多飲多尿となる原因は?
腎臓・ホルモン分泌・血液の異常
―猫が多飲多尿となる原因としてどんなものが考えられますか?
多飲多尿とは、水を飲む量、およびおしっこの量が正常範囲を逸脱して多い状況を指す用語です。
通常、何らかの理由で腎臓での水分の再吸収が不十分なため、おしっこの量が増え、それに伴い水分を補うために水を飲む量も増えます。多飲多尿の原因となる疾患は、大まかに「腎臓の異常」「ホルモン分泌の異常」「血液の異常」に分類できます。また、ストレスによって一過性に飲水量が増え、その結果として尿量が増える場合もあります。
猫の多飲多尿を引き起こす病気とは?
最も多く見られるのは慢性腎不全
―猫の多飲多尿を引き起こす病気として、どんなものがありますか?
猫で多飲多尿となる病気は、急性・慢性の腎不全、腎盂腎炎、尿崩症などの腎臓の病気、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)、副腎皮質機能低下症(アジソン病)、甲状腺機能亢進症などのホルモンの異常の病気、糖尿病、高カルシウム血症などの血液の異常を示す病気などが考えられます。
そのほかでは、肝硬変や肝炎などの肝臓の病気、子宮蓄膿症といった感染性の病気でも多飲多尿となる場合があります。これらの中で最もよく見られるのは高齢猫の慢性腎不全です。
- 猫の腎臓の病気については、「猫の疾患 泌尿器系の病気」をご覧ください
- 猫のホルモン・内分泌系の病気については、「猫の疾患 内分泌系の病気」をご覧ください
- 猫の血液の病気については、「猫の疾患 血液・リンパ系の病気」をご覧ください
多飲多尿は体の異常のサイン
―猫にどんな症状が見られたら、受診すべきですか?
多飲多尿は何らかの体の異常のサインです。多飲多尿になると、腎臓での水分の再吸収が不十分になるために臭いのあまりしない、色の薄い尿が出ます。
1日だけ飲水量や尿量が多いと感じられ、普段と同じように元気で食欲もある場合は様子を見てもいいかもしれません。しかし、何日も連続して多飲多尿が疑われる場合は、病院に連れて行って獣医師さんに相談することをお勧めします。
特に、元気や食欲がない、体重減少や嘔吐などほかの症状が認められる場合には、脱水症状や尿毒症などの命にかかわる重篤な病気に進行している可能性がありますので獣医師さんに至急相談してください。
猫の多飲多尿の判断基準
―1日どのくらいの量の水を飲む、おしっこの量があると多飲多尿を疑うのでしょうか? 病院に連れて行く目安を教えてください。
正常な飲水量は体重1kg当たり40ml
猫は乾燥地帯原産の動物なので元来あまり水を飲みません。与えている食事内容(ドライフートがウェットタイプのフードか)にもよりますが、1日(24時間)で体重1kg当たり40mlほどまでが正常な飲水量です。
正常な尿量は体重1kg当たり20から40ml
尿量は1日(24時間)で体重1kg当たり20から40mlほどまでが正常な範囲です。
猫の飲水量と尿量の測り方
―家庭では、どうやって飲水量や尿量を測ればいいですか?
家庭で飲水量を測る場合は、まず一定量の水を与えてある程度時間が経ったところで残っている水の量を測れば、減った水の量を飲水量として計算できます。
何度か繰り返して1日(24時間)当たりの飲水量を計測してください。1日の計測ではどうしても計測誤差があるので3日間ほど測ってみてください。
家庭で猫の尿量を測るのは少し難しいですが、猫のトイレに吸水性のペットシートを使っている場合は、新しいものに変えてから24時間後に重さを測ってみてください。増加した重さでおおよその尿量が計算できます。
多飲多尿になりやすい猫種、猫の特徴とは?
―多飲多尿になりやすい猫種はありますか?
多発性腎嚢胞症と呼ばれる遺伝性の腎臓の病気では、アメリカン・ショートヘア、スコティッシュ・フォールド、ヒマラヤン、ペルシャが好発品種として知られています。多発性腎嚢胞症は、進行すると腎臓の機能が失われていき、腎不全に進行することで多飲多尿を示す場合があります。
猫の多発性腎嚢胞症の原因や症状、治療・予防法については、「猫の疾患 多発性腎嚢胞症」を併せてご覧ください。
―年齢、性差、避妊・去勢で傾向はありますか?
猫は乾燥地帯原産の動物なので腎臓で水分を再吸収する能力が高く、濃縮された尿をします。その結果、加齢に伴って腎臓に負担がかかりやすく慢性腎不全になることが非常に多い動物です。また、甲状腺機能亢進症も加齢とともに増加してきます。
性差、避妊・去勢によっての傾向はあまりありません。
猫の多飲多尿の治療と家庭での対処法
―動物病院では、猫の多飲多尿をどのように治療するのですか?
脱水状態の場合
多尿によって水分の吸収量が十分でなく、脱水状態になっている場合は、点滴や皮下補液によって脱水状態の解消を行います。
腎臓の異常が原因の場合
多飲多尿の原因が腎臓にある場合は、尿毒症(腎臓での毒素をろ過する能力が衰え血中に毒素が回ってしまう病気)や貧血、高血圧へと進行する場合があるので、降圧剤や造血ホルモンの投与や食事療法を行います。
ホルモンの異常が原因の場合
ホルモン分泌の異常によるものの場合は、ホルモン剤を投与し、また、ホルモンの異常分泌が腫瘍によるものの場合は、外科的な手術を行うことがあります。
そのほかの場合も多飲多尿になっている原因疾患の治療を行います。
―受診に際し、記録や用意したほうがいいことはありますか?
飲み水やおしっこの量を家庭で計測した場合は、大まかな量でもいいので忘れずに伝えてください。
ほかに何か気になる症状がある場合は、受診時に獣医師さんに伝えてください。診断の手助けになる場合があります。
腎臓に負担のかからない食餌療法を
―治療中の食事や環境は、どのようにしたらいいですか?
特に腎臓不全に伴う多飲多尿の場合は、食事療法によって腎臓への負担を減らす必要があります。食事中に含まれているタンパク質やリンは腎臓に負担をかけてしまうため、食事療法でタンパク質やリンの少ない食事に変えることが腎臓の管理において重要です。
しかし、猫によっては食事が変わると餌を食べなくなる場合があるので、吸着剤(食事に含まれている毒素を吸着する薬)を与えることも効果的です。
獣医師さんから食事療法を指示されている場合は、ほかの餌をなるべく与えないようにしましょう。特に、人間が食べるものは、猫の腎臓に悪影響を与えるものが多いので与えないようにしてください。
また、水分を十分に摂取できる環境を整えてあげることも脱水症状や尿毒症への進行を防ぐために重要です。水を飲める場所を増やし、常に新鮮な水を飲めるようにしてあげてください。
猫の多飲多尿の予防と対策
早期発見で腎臓の機能低下を防止
―日ごろから気を付けたいこと、予防法について教えてください。
猫の多飲多尿の原因となる疾患で、最もよく見られるのは加齢に伴う慢性腎不全です。腎臓の機能の低下は、症状が出るころにはかなり進行していることがあるので早期診断が重要です。
また、一度失われた腎臓の機能は回復することはありません。早期診断は腎臓の機能低下の進行を防ぐことにも役立ちます。
腎臓の検査は、尿検査と血液検査で行うことができます。飼っている猫が高齢になってきたら、年に一度検査を受け、腎臓の機能を確認しておくことが腎不全の早期発見のためには重要です。
また、トイレを掃除する時に、普段と違って臭いが薄いといった異常を感じることがありますので気を付けてみてください。
まとめ
猫の多飲多尿の原因となる疾患は、重篤な症状へと進行するものが多く、体の異常を見つけるための重要なサインです。
特に、猫は体の異常を気付かれないように隠すのが上手で、何か症状があっても飼い主が気付くのは難しいかもしれません。また、猫は腎臓に不調を抱えやすい動物ですので、その点でも注意してください。
普段よりも水を飲む量やおしっこの量が多いかなと感じたら、飼っている猫が健康に長生きできるよう、獣医師さんに気軽に相談してください。
そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。
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猫種別の保険料
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あ行に属する猫の種類
- アビシニアン
- アメリカンカール
- アメリカンキューダ
- アメリカンショートヘア
- アメリカンボブテイル
- アメリカンポリダクティル
- アメリカンワイヤーヘア
- アメリカンリングテイル
- アラビアンマウ
- アルパインリンクス
- イジアン
- ウラルレックス
- エイジアン
- エキゾチックショートヘア
- エジプシャン・マウ
- オイイーボブ
- オーストラリアンミスト
- オシキャット
- オホサスレス
- オリエンタル
- オリエンタルバイカラー
か行に属する猫の種類
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- クリリアンボブテイル
- コーニッシュレックス
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- ソコケ
- ソマリ
た行に属する猫の種類
- ターキッシュアンゴラ
- ターキッシュ・バン
- チートー
- チャウシー
- デザートリンクス
- テネシーレックス
- デボンレックス
- トイガー
- ドウェルフ
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- トンキニーズ
- ドンスコイ
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ら行に属する猫の種類
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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社
動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。