猫の糖尿病の症状と原因、治療法について
最終更新日:2024年07月09日
本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。
猫の糖尿病ってどんな病気?
糖尿病は、血液中のブドウ糖を細胞の中に取り込むホルモンであるインスリンが不足する、あるいはインスリンは十分なのに働きが弱いために起こる病気です。
猫が糖尿病を発症すると、十分に食べていても細胞がブドウ糖を取り込めないので、いつも食べ物を欲しがる状態になります。また、エネルギーを作り出すことができないので、体内のたんぱく質や脂質を分解してエネルギーを作ろうとします。
人の糖尿病は下記の4つのタイプがあります。
- 体内のインスリンが不足する1型
- 体内のインスリンは十分だが、働きが悪くなる2型
- そのほかの病気によるもの
- 妊娠糖尿病
猫の場合は、約8割が2型糖尿病と考えられています。
さて、腎臓は血液から作り出した尿中に含まれる糖分をすべてせき止めて、体の外に出ないようにしますが、血液中のブドウ糖が多すぎるとせき止めきれずに、尿中に漏れ出します。このため、糖尿病と呼ばれるのです。
どうして症状が出るの?原因は?
糖尿病では血液の中に大量のブドウ糖があるため、血中の浸透圧が上昇します。そのため、ブドウ糖を薄めて浸透圧を低下させようとし、水をたくさん飲む「多飲」が起こります。また、たくさん水を飲むので、尿量が増える「多尿」になるのです。
猫が多飲多尿になる症状については、獣医師監修による「猫の多飲多尿の原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説」を併せてご覧ください。
また、上述のように、糖尿病になるとブドウ糖からエネルギーを作り出すことができないため「多食」となり、さらに体内のたんぱく質や脂質を分解するため、「体重が減少する」ことがあります。
猫が糖尿病になると、以上のような症状が出ますが、いたって元気です。しかし、糖尿病は続発する病気が怖いのです。
特に恐ろしいのは糖尿病性ケトアシドーシスです。糖尿病性ケトアシドーシスは高度の代謝失調状態で、脂肪が分解された後に生じる「ケトン体」が過剰になり、体のpH(水素イオン指数)が急激に酸性になります(この状態をアシドーシスと呼びます)。そして、アシドーシスと高血糖による脱水で重度な昏睡状態になり、命の危険に陥る場合があるのです。さらに、糖尿病により末梢神経障害が出て、後肢のふらつきが見られる場合があります。
どんな猫が糖尿病にかかりやすいの?
2型糖尿病では、肥満によりインスリンの働きが悪い状態(「インスリン抵抗性」と言います)になります。また、インスリン抵抗性を引き起こす病気としては、甲状腺機能亢進症や(猫では多い病気ではありませんが)副腎皮質機能亢進症が知られています。
また、猫によく見られる慢性膵炎や口内炎になると、炎症によりインスリン抵抗性が起きやすくなります。特に、膵炎はインスリンの分泌を行う膵臓の障害なので、糖尿病の発症に関連があるとの報告があります。
このほか、ステロイドはインスリン抵抗性を引き起こすことが知られ、皮膚炎や口内炎の治療などでステロイドを使用していると糖尿病にかかりやすいと言えるでしょう。
猫の糖尿病の症状とチェック項目
- 水を飲む量が異常に多く、おしっこをたくさんする
- 常にごはんを要求する
- (必ず起きるわけではないが)最近痩せてきた
猫の糖尿病はどうやって診断されるの?
上記のチェック項目にあるような症状が猫に見られる場合、糖尿病の可能性があります。診断には血液検査を実施します。空腹時の血糖値が300mg/dL以上であれば、疑わしいと言えるでしょう。ただし、猫は興奮したり、ストレスを受けていたりすると、急激に血糖値が上昇するため、1回の血液検査の結果のみで糖尿病と診断するには注意が必要です。
そこで、採血時の2週間程度前の血糖値の変動を反映する「糖化アルブミン」という物質の検査を行い、持続的な高血糖と尿検査で尿糖が陽性であれば糖尿病と診断します。また、尿検査ではケトン体が出ていないことも確認し、「糖尿病性ケトアシドーシス」なっていないかにも注目します。
猫の糖尿病の治療にはどんな方法があるの?
インスリンの投与
人の2型糖尿病と異なり、猫ではインスリン投与が必要です。インスリンには複数種類の製剤がありますが、大体1日2回、食餌のときにインスリンの注射をします。
血糖値は食餌によって急激に上昇したり、下降したりと1日の間に変動しますので、治療導入初期や定期的に1日の中で複数回、採血を行い、血糖値の測定を行う必要があります。
一方、適切なインスリンを使用しているにもかかわらず、血糖管理が安定しない場合には、インスリン抵抗性を引き起こす甲状腺機能亢進症や慢性膵炎、慢性腎臓病、慢性口内炎などの病気が潜んでいるかもしれません。そのため、これらの基礎疾患に対する治療も重要です。
食餌療法
さらに、猫の糖尿病の管理で食餌管理はとても重要です。食餌療法の目的は、食後の血糖値、およびインスリン分泌の変動を緩やかにすることと肥満を解消することです。このため、猫では低炭水化物・高たんぱく食が推奨されています。また、さまざまな物ではなく、一定の物を与えることが管理上、望ましいので、各ペットフードメーカーから市販されている猫の糖尿病用フードを与えるといいでしょう。
ただし、内容よりも重要なのは、猫が毎日安定して食べてくれるということです。猫によっては、食べ慣れたフードのほうが安定した血糖管理を得られることもあります。また、減量は重要ですが、急激な体重の減量は避けましょう。
猫の糖尿病は治せるの?
多くの場合、猫の糖尿病は、2型糖尿病です。そのため、インスリンを分泌する能力は十分に残っており、持続的な高血糖のために、膵臓からのインスリン分泌が抑制されているだけの可能性があります。この場合、治療開始後にインスリンの必要な量が徐々に減少し、インスリン製剤が要らなくなることがあります。ただし、膵臓が元に戻らないような障害を受けている場合は、生涯インスリンの投与が必要になることもあります。
猫の糖尿病の治療成功は、合併症の有無、血糖管理の容易さ、猫の性格や飼い主さんの協力の程度などによって大きく変わります。糖尿病でインスリンが要らなくなった場合には、生存期間が延長することが知られています。しかし、慢性腎臓病のような、ほかの病気を持っていると予後が悪い、つまりこれから病気が悪くなる可能性が高いのです。
どうやって予防したらいいの?
肥満の猫では糖尿病を発症しやすいことが知られているため、体重の管理は非常に重要だと考えられます。また、ステロイドの投与は糖尿病の発症と関連があることが知られているため、安易に使用するのはお勧めではありません。
猫の糖尿病に見られる症状の関連記事
猫の内分泌系の病気
猫種別の保険料
当社のペット保険は、猫種による保険料の違いがありません。
また、「ペット保険取扱の猫種分類表」に契約実績のある猫種をまとめていますが、未記載の猫種であっても保険料は同じです。
あ行に属する猫の種類
- アビシニアン
- アメリカンカール
- アメリカンキューダ
- アメリカンショートヘア
- アメリカンボブテイル
- アメリカンポリダクティル
- アメリカンワイヤーヘア
- アメリカンリングテイル
- アラビアンマウ
- アルパインリンクス
- イジアン
- ウラルレックス
- エイジアン
- エキゾチックショートヘア
- エジプシャン・マウ
- オイイーボブ
- オーストラリアンミスト
- オシキャット
- オホサスレス
- オリエンタル
- オリエンタルバイカラー
か行に属する猫の種類
- カラーポイントショートヘア
- カリフォルニアスパングルド
- キプロスアフロディーテ
- キムリック
- キンカロー
- クリッパーキャット
- クリリアンボブテイル
- コーニッシュレックス
- コラット
さ行に属する猫の種類
- サイベリアン
- サバンナ
- サファリ
- ジャパニーズボブテイル
- ジャーマンレックス
- シャム
- シャルトリュー
- シャンティリー
- ジェネッタ
- シンガプーラ
- スキフトイボブテイル
- スクーカム
- スコティッシュフォールド
- スノーシュー
- スフィンクス
- セイシェルワ
- セイロンキャット
- セルカークレックス
- セレンゲティ
- ソコケ
- ソマリ
た行に属する猫の種類
- ターキッシュアンゴラ
- ターキッシュ・バン
- チートー
- チャウシー
- デザートリンクス
- テネシーレックス
- デボンレックス
- トイガー
- ドウェルフ
- ドラゴンリー
- トンキニーズ
- ドンスコイ
な行に属する猫の種類
- ナポレオン
- ネベロング
- ノルウェージャンフォレストキャット
は行に属する猫の種類
- バーマン
- バーミーズ
- バーレイニディルムンキャット
- ハイランドリンクス
- ハバナブラウン
- ハバリ
- バリニーズ
- バンビーノ
- ピーターボールド
- ピクシーボブ
- ヒマラヤン
- フォールデックス
- ブラジリアンショートヘアー
- ブランブル
- ブリティッシュショートヘア
- ブリティッシュロングヘアー
- ペルシャ
- ベンガル
- ボンベイ
ま行に属する猫の種類
や行に属する猫の種類
- ユークレイニアンレフコイ
- ヨークチョコレート
- ヨーロピアンショートヘア
ら行に属する猫の種類
-
記事監修:ペットメディカルサポート株式会社
動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。