猫が太る、肥満になる原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年04月01日

愛猫かわいさに、おやつをついつい与え、食べ過ぎで太らせてしまうことがあるかもしれません。あるいは何らかの病気が原因で、太ることもあります。その病気とは、どんなものでしょうか。また、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。

人間同様、猫にとっても肥満は多くの病気の要因になります。太る原因が、食べ過ぎや運動不足であれば、それらの解消を。そのほか、気になることがあれば、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

猫が太る、肥満になる原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

猫が太る原因とは?

うちの子、太ってきたのかな?

―猫種や性差、体格によって違いがあるかと思いますが、猫の標準体型とはどのようなものでしょうか? また、どの程度になると太り気味と言えるのでしょうか。

猫が太っているかどうかは、単純に体重だけでは判断できません。体が大きい子はその分体重も重くなる傾向があるからです。

猫の体型の判断に用いる指標として「ボディ・コンディション・スコア(BCS)」というものがあります。私たち獣医師もこのBCSを基にその子の体型を判断し、ダイエットをさせたほうがいいのかどうかを判断しています。

ボディ・コンディション・スコア(BCS)

BCSは1~5の5段階に分けられます。

  • BCS1

    肋骨、腰椎、骨盤が外から容易に見える。首が細く、上から見て腰が深くくびれている。横から見て腹部の吊り上がりが顕著。脇腹ひだには脂肪がないか、ひだ自体がない。

  • BCS2

    背骨と肋骨が容易に触る。上から見て腰のくびれは最小。横から見て腹部の吊り上がりはわずか。

  • BCS3

    肋骨は触れるが、見ることはできない。上から見て肋骨の後ろに腰のくびれがわずかに見られる。横から見て腹部の吊り上がり、脇腹にひだがある。

  • BCS4

    肋骨の上に脂肪がわずかに沈着するが、肋骨は容易に触れる。横から見て腹部の吊り上がりはやや丸くなり、脇腹は窪んでいる。脇腹のひだは適量の脂肪で垂れ下がり、歩くと揺れるのに気づく。

  • BCS5

    肋骨や背骨は厚い脂肪におおわれて容易に触れない。横から見て腹部の吊り上がりは丸く、上から見て腰のくびれはほとんど見られない。脇腹のひだが目立ち、歩くと盛んに揺れる。

参照:飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/petfood_guide/pdf/8.pdf

BCS3が標準体型となり、スコアが低いほど痩せすぎで、高いと肥満になります。家でチェックするときにわかりやすいのは肋骨を触ることです。肋骨がやや触れるくらいが標準体型となります。

猫はなぜ太るのか

猫はなぜ太るのか

―猫が太る原因について教えてください。

生き物は食事からカロリーを摂取し、生命活動に伴ってカロリーを消費します。肥満は摂取カロリーが消費カロリーより過度に多くなった場合に起こります。

「うちの子あまり食べないのに太るんです」という話も聞きますが、消費カロリーが何らかの原因で低下した場合はそのような状態になります。また、そのほかにも病気により太ったように見えることもあるので注意が必要です。

猫が太る原因として考えられるものは以下のとおりです。

猫の運動不足

運動不足になると消費カロリーが少なくなり、肥満につながります。

高カロリーな食事によるもの

高カロリーな食事を継続的に与えることで摂取カロリーが増え、太ります。

キャットフードの与えすぎ

パッケージに書いてある規定量を守らず、量を多く与えすぎるとどんなご飯でも太ってしまいます。

おやつの与えすぎ

商品によっては高カロリーなものもあります。少量だけだからといって油断はできません。

猫の去勢・避妊手術

肥満の原因としてよくみられます。通常、生殖に関連する行動や生殖活動ができるよう維持するために非常に多くのカロリーが使われます。

しかし、去勢・避妊手術をすることで、生殖に使用されていたエネルギーが使われなくなり、消費カロリーが低下するため太りやすくなるのです。

また、これらのほかに病気が原因で、猫が太る場合があります。

猫が太る原因として考えられる病気とは?

猫が太る原因として考えられる病気とは?

―猫が太る原因としてどんな病気が考えられますか?

肥満とは少し違うのですが、猫が太ったように見える病気・症状として下記のものが挙げられます。

  • 腹水貯留

    何らかの原因によりお腹に水がたまることでお腹が膨れ、太ったように見えます。

  • 子宮蓄膿症

    子宮の中に膿がたまることで子宮が重度に大きくなると、お腹が膨らみ太ったように見えます。

  • 腫瘍

    お腹の中に大きな腫瘍ができると、お腹が膨らみ太ったように見えます。

猫が太ってきた、こんな症状ならすぐ病院へ

心配のいらない場合

―どの程度の太り具合であれば、様子を見てもいいですか?

  • BCSでいえばBCS4くらい
  • 太ってきた原因に心当たりがある(避妊・去勢をした、おやつをたくさん与えているなど)
  • 数か月単位で徐々に太ってきた

上記の場合は家庭で対処し、猫にダイエットをさせることも可能です。家庭での対処で痩せない場合は、動物病院に相談してください。

受診を強く勧める場合

―受診すべき肥満の見分け方、併発するそのほかの症状を教えてください。

肥満に加えて下記の症状が見られたら、なるべく早めに動物病院を受診しましょう。

水をよく飲む、おしっこの量が多くなる、薄いおしっこが出る

猫も人と同じで、肥満になると糖尿病になるリスクが高くなります。糖尿病になると尿の量が多くなり、体から水分が多く排出されるので喉が渇きます。それを補うかたちで水を飲む量が増える「多飲多尿」の状態がよく見られます。

具体的な指標としては、体重1kgあたりの一日の飲水量が100ml以上の場合が多飲、排尿量が50ml以上の場合が多尿となります。糖尿病に気付かず放置してしまうと、体にケトン体という毒物がたまり命にかかわる状態になることがあるため、特に注意が必要です。

また、子宮蓄膿症の場合も多飲多尿の症状がよく見られるので気を付けましょう。

短期間(数日~1か月)で急に太った(特にお腹が膨らんできた)、食欲・元気がない

緊急性が高い病気が考えられるため、すぐに動物病院を受診しましょう。

肥満は万病のもとです。上記の症状が見られなくても、肥満は肝数値の上昇や関節炎、心臓・呼吸器への負担上昇など、さまざまな病気の悪化因子・原因となりますので注意しましょう。

猫の肥満の対処法

猫の肥満の対処法

―猫が太ってきたら、どう対処すればいいのでしょうか?

食べすぎの場合

  • 与えているフード量や種類を見直す

    今与えているフードがその子の体型・成長段階に合っているのかを確認しましょう。与えすぎなら量を減らしたり、ダイエットフードに変更したりするようにしましょう。

  • おやつを控える

    ドライタイプのキャットフードは、多くの場合、総合栄養食(猫がそのフードと水だけで健康を維持できるもの)であり、過度に量を制限すると栄養不足につながります。

    キャットフード以外におやつを与えている場合は、まずおやつをやめてみましょう。

病気を原因とする場合

  • 水を飲む量を確認する

    器にどれくらいの水が入っていて、一日でどのくらい減るのかを把握しましょう。目盛りが書かれている器を使うとわかりやすいのでおすすめです。

  • トイレをしっかりチェックする

    猫砂が固まる量やペットシーツの濡れる量が多い、尿の色がとても薄いなど感じることがあれば、早めに受診しましょう。

このほかに何か様子がおかしいと感じたら、できるだけすぐに動物病院を受診しましょう。

猫の肥満を予防にするには?

―予防法や飼い主が日ごろから気を付けるべきことを教えてください。

  • 置き餌をしない

    一日の正確な食事量を把握できず、多めに与えてしまっている場合があります。

  • 1回の食事をグラム単位で正確に量る

    猫にとっては数gでも摂取カロリーの過剰につながります。計量カップで量ると正確な量が把握できないので、計量器でしっかりとグラム数を量ってから与えてください。

  • おもちゃで遊ばせる、キャットタワーのような上下運動ができるグッズを増やす

    運動不足で太るのは、人も猫も同じです。特に室内飼いの猫は、運動不足になりがちです。適度におもちゃで遊んであげたり、キャットタワーやステップを設置したりして、体を動かせるようにしましょう。

    ただ太りすぎの場合、急に運動量を増やすと猫の体に負担がかかるため、まず食事管理で減量することをおすすめします。

  • 人の食べ物を与えない、おやつを与えすぎない

    人間が食べるものは、猫にとっては塩分や糖分、カロリーが高すぎるものがほとんどです。有害なものも多いため、人の食べ物は与えないようにしたほうが賢明です。

    おやつは前述のとおり高カロリーのものがあるので、適量を守ってあげましょう。

  • 去勢・避妊後は専用のフードにする

    去勢・避妊後用フードはカロリーが少なめに設定されています。消費カロリーが低下する去勢・避妊後は、そうしたフードへの切り替えも検討してみてください。

まとめ

飼い猫の肥満の原因の多くは、飼い主の管理不足です。いろいろな病気につながる肥満を防ぐには、飼い主が食事・運動管理をするのが一番重要ですので、この記事を参考にして愛猫の健康を守ってあげてください。

そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。